表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰と花、届かない場所で  作者: LEON
第二章 父の影【潜入】
6/29

父という存在

検索結果が表示されるまでの数秒間、俺は画面を睨みつけたまま、息をするのも忘れていた。


出てきたのは、黒田組の組織図をまとめた古い個人サイトだった。更新は何年も止まっているようだが、幹部連中の通り名や序列が、簡単な相関図で示されている。


その中の一人の名前に、目が止まった。


黒田蒼一郎くろだ そういちろう 現組長』


現組長。つまり、今この組織のトップに立っている男。


震える指でその名前をタップすると、古い記事へのリンクが出てきた。二十年近く前、地元の経済紙に載った、当時の「若頭候補」を取り上げる小さな記事だった。


粗い画質の白黒写真に、まだ若い男が写っている。


――俺は、その顔から目が離せなかった。


似ている。


自分でも認めたくなかった。だが、鏡の中で何度も見てきた自分の目元と、写真の中の男の目元が、あまりにも重なって見えた。


「……嘘だろ」


声が震えた。震えを抑えようとするほど、指先が冷たくなっていく。


記事の日付を確認する。母が失踪したとされる時期と、ほとんど重なっていた。


偶然。そう思おうとした。だが、あの掲示板の書き込みが、頭の中で何度も反響する。


『黒田の上の方に、女に手え出して揉めてた奴いたって噂』

『上の人間が動いて、丸く収めたって話だろ』


「上の人間」というのが、幹部の誰かではなく――組長そのものだったとしたら。



その夜、俺は一睡もできなかった。


天井を見つめながら、頭の中でずっと同じ言葉がぐるぐると回っていた。


――俺の父親は、母を殺した組織のトップにいる。


いや、正確には分からない。手を下したのが誰かは、まだ何も確定していない。だが、母を「もみ消した」側の人間である以上、少なくとも無関係ではないはずだ。


怒りよりも先に、奇妙な虚しさが込み上げてきた。


親がわからないまま育った十六年間。ずっと、自分がどこから来たのか分からないことに、苛立ちながらも、どこかで諦めてもいた。


それが今、突然「答え」を突きつけられている。しかも、最悪の形で。


「――ふざけんなよ」


誰に向けるでもない言葉が、暗い部屋に虚しく響いた。


拳を握りしめると、ここ数日で何度も食い込ませてきた爪の痕が、また同じ場所に刻まれる。


決めた。


この手で、決着をつける。母を奪ったその男に、直接。


窓の外はもう、白み始めていた。眠れないまま迎える朝は、これで何度目だろうか。だが今日の朝は、これまでとは何かが決定的に違って見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ