表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰と花、届かない場所で  作者: LEON
第一章 捨てられた場所で
5/29

「決意」

ゆずからのメッセージを、俺はもう三日も無視していた。


『大丈夫?』

『心配してるよ』

『話したいことがあるなら聞くから』


律儀に既読すらつけず、画面を伏せる。あいつを巻き込むわけにはいかない。これから俺がやろうとしていることに、あいつの居場所はない。


「――神田くん」


放課後の廊下で呼び止められて、無視できずに足を止めた。振り返ると、ゆずが思い詰めた顔で立っていた。


「何、避けてんの」


「別に避けてねえよ」


「嘘。目、全然合わせないじゃん」


図星だった。だが、認めるわけにはいかない。


「お前には関係ない話だ」


「関係ないって、何が」


「――全部だよ」


思ったより冷たい声が出た。ゆずの表情が、一瞬強張るのが分かった。


「……前に、お兄ちゃんの話、したよね。私、神田くんのこと放っておけないって」


「聞き飽きたよ、その話」


「それでも言う。何か抱えてるなら、一人で抱え込まないでほしい」


真っ直ぐな目だった。いつもと変わらない、まっすぐすぎる目。


だからこそ、突き放さなければならなかった。


「――お前に理解できる話じゃねえんだよ」


言ってから、しまったと思った。だがもう遅い。ゆずの顔から、みるみる表情が抜け落ちていくのが見えた。


「……そう。分かった」


それだけ言って、ゆずは背を向けた。追いかける資格なんて、俺にはなかった。



その夜、俺は再びあのネットカフェに籠っていた。


黒田組。何度検索しても、表に出てくる情報は限られている。組織図、幹部の名前、過去の抗争記録――どれも古く、断片的なものばかりだった。


苛立ちながらページをスクロールしていると、古い掲示板の書き込みに目が止まった。地元民が愚痴混じりに残した、十数年前の投稿。


『黒田の上の方に、女に手え出して揉めてた奴いたって噂、まだ覚えてる奴いる?』

『あー、あったな。相手の女、消えたとかなんとか』

『上の人間が動いて、丸く収めたって話だろ、それ』


心臓が、跳ねた。


震える手でスクロールを止め、俺はその書き込みを、何度も何度も読み返した。


――上の人間が、動いた。


偶然か。それとも。


「上」というのが、どのあたりを指すのかは分からない。幹部の誰かなのか、もっと別の何かなのか。だが、確かめずにはいられなかった。


画面の光に照らされた自分の顔が、ガラスに薄く映り込んでいる。その顔が、誰かに似ている気がして、俺は初めて、心の底から怖くなった。


もしこの噂が本当なら――俺が憎むべき相手は、思っていたよりずっと、近くにいる。


震える指で、俺は「黒田組 幹部 名前」という文字を、検索窓に打ち込んだ。


画面が切り替わるまでの、たった数秒が、やけに長く感じられた。


第5話まで読んでいただき、ありがとうございました。

ここまでで、物語の第一章は一区切りとなります。


ここまでは毎日投稿でお届けしてきましたが、

第6話以降は不定期更新となります。ご了承ください。


咲亞が辿り着いた「憎むべき相手」の正体は、次話で明らかになります。

気長にお付き合いいただけたら嬉しいです。

もしよろしければ、ブックマーク・評価をいただけると、更新の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ