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灰と花、届かない場所で  作者: LEON
第一章 捨てられた場所で
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「犯人」

図書室で見つけたあの団体名が、頭から離れなかった。


放課後、俺は繁華街の外れにある古びたネットカフェに寄って、あの名前を検索窓に打ち込んだ。


――黒田組。


出てきた記事は、思ったより多かった。地元では名の知れた広域指定暴力団。傘下には解体業、金融業、飲食店の看板を掲げた組織がいくつもぶら下がっている。


母の失踪当時の記事に載っていた団体名と、現在も存在するこの組織が、同じものかどうかは分からない。だが、確かめずにはいられなかった。



答えは、思ったより早く手に入った。


「――お前、まだその事件のこと調べてんのか」


声をかけてきたのは、同じ中学出身で、今は半グレ紛いの連中とつるんでいる先輩だった。喧嘩の場では何度か顔を合わせたことがある。


「知ってんのか」


「噂くらいはな。お前んとこの、行方不明だった女の話だろ」


先輩は煙草に火をつけながら、面倒くさそうに続けた。


「ありゃ、黒田の下の連中がやったって話だぜ。当時揉め事があったとかで。真相は闇の中だけどな」


「――誰が」


「知らねえよ、そこまでは。噂だっつってんだろ」


それだけ言うと、先輩はさっさと歩いて行ってしまった。



家に帰る道すがら、頭の中は真っ白だった。


噂だ。確証なんて、どこにもない。だが、図書室で見つけた古い記事の団体名と、先輩の口から出た組織名が、綺麗に重なってしまった。


母を殺したのは、黒田組。


拳を握りしめると、爪が手のひらに食い込んで、鈍い痛みが走った。だがその痛みすら、今の俺には心地よかった。


十六年間、俺には何もなかった。親も、居場所も、帰る場所すら曖昧だった。


だが今、初めて「憎むべき相手」が姿を現した。


「――ぶっ殺してやる」


誰に言うでもなく、俺は呟いた。声は思ったより低く、そして冷たく響いた。


その夜、俺は生まれて初めて、明確な目的を持って眠りについた。


復讐。


たったそれだけの言葉が、それまで空っぽだった俺の中に、初めて何かを注ぎ込んでいくのが分かった。

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