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灰と花、届かない場所で  作者: LEON
第五章 崩壊
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「最後の夜」

その夜、ゆずはいつになく穏やかだった。


「――今日は、星がよく見えるね」


縁側に並んで座り、彼女は静かにそう言った。北海道の澄んだ夜空に、数え切れないほどの星が瞬いている。


「――ああ」


短く答えると、ゆずは俺の肩に、そっと頭を預けてきた。


「ねえ、咲亞」


「何だよ」


「もし、全部やり直せるとしたら、また私のこと、好きになってくれる?」


唐突な問いに、少し戸惑いながらも、俺は迷わず頷いた。


「何度でも」


「――そっか」


ゆずは小さく笑って、それ以上は何も言わなかった。ただ、その笑顔が、これまで見てきたどの表情よりも、穏やかで、そしてどこか儚く見えた。


その夜、二人で過ごした時間は、言葉にできないほど大切なものだった。


これまでのことも、これからのことも、何も話さなかった。ただ、お互いの存在だけを、確かめ合うように、静かな夜を過ごした。


「――ありがとう、咲亞」


腕の中で、ゆずがぽつりと呟いた。


「何の礼だよ」


「全部。お節介ばっかり焼いて、うざいって思われても仕方なかったのに。ちゃんと、私自身を見てくれたこと」


その言葉に、俺は何も返せなかった。ただ、彼女の温もりを、いつまでも忘れないようにと、胸に刻み込んでいた。


窓の外、星明かりが、静かに部屋の中まで差し込んでいた。


その光の中で眠りに落ちる彼女の横顔を、俺は長い間、見つめ続けていた。

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