「囚われて」
一週間後、再びあの黒い車が現れた。
今度は、明確な目的を持っていた。
「――今度は、お前に用がある」
家に押し入ってきた男たちの言葉に、嫌な予感が確信に変わった。
「――ゆずには手を出すな!」
叫びながら応戦するが、既に消耗しきった体では、以前のような動きはできなかった。
数人がかりで組み伏せられ、後ろ手に縛り上げられる。
「――咲亞!」
ゆずの悲鳴が聞こえたが、今度は彼女に手を出す様子はなかった。ただ、俺だけを引きずるように連れ出そうとしている。
「――お前らの組長を殺した落とし前、じっくりつけてもらうからな」
耳元でそう囁かれ、頭に袋を被せられた。視界を奪われたまま、車に押し込まれる。
「――咲亞ッ! 咲亞ぁッ!」
遠ざかっていくゆずの叫び声を、俺はただ、聞いていることしかできなかった。
連れて行かれた先は、山奥の廃屋だった。
手足を縛られ、薄暗い部屋に転がされたまま、何日が経ったのか、正確には分からなかった。時折与えられる水と、殴られる痛みだけが、時間の感覚を教えてくれた。
「――お前をどう料理してやるか、今、上の方で相談中でな」
見張りの男が、退屈しのぎのようにそう言った。
「もう、殺されても構わねえよ」
半ば本気でそう答えると、男は面白そうに笑った。
「そう簡単に殺しゃしねえよ。お前には、まだ利用価値があるからな」
その言葉の意味を、深く考える気力もなかった。ただ、一人残してきたゆずのことだけが、頭から離れなかった。
無事でいるだろうか。あの後、一人でどうしているのだろうか。
答えの出ない問いを繰り返しながら、俺はただ、冷たい床の上で、時間が過ぎるのを待ち続けるしかなかった。




