「発見」
ヘッドライトが、家の前で止まった。
「――来る」
短くそれだけ言って、ゆずの手を引き、裏口へと向かう。だが、扉を開けた瞬間、既に数人の男たちが、そこに立ち塞がっていた。
「――逃げ場はねえよ」
嘲るような声。振り返ると、玄関からも別の男たちが雪崩れ込んでくる。前も後ろも、既に塞がれていた。
「――ゆず、俺の後ろに」
彼女を庇いながら、俺は最初に踏み込んできた男の顎を打ち抜いた。だが、これまでとは何かが違った。
倒れた男を踏み越えて、次の男が、さらにその後ろから次の男が、途切れることなく押し寄せてくる。数を数える余裕すらなかった。
「――くそッ」
一人、また一人と沈めていく。だが、狭い家の中、四方から迫る人数に、次第に体力を削られていく。
「――咲亞ッ!」
背後でゆずの悲鳴が上がった。振り返ろうとした瞬間、複数の腕が、俺の四肢を一斉に押さえ込んだ。
「――離せ、離しやがれ……ッ!」
もがいても、数の重みには敵わなかった。腕を捩じ上げられ、床に押し倒される。視界の端で、別の男たちがゆずを取り囲むのが見えた。
「――やめろ! やめてくれ!」
叫んでも、誰も聞いてはいなかった。
これまでの追跡では、何度も切り抜けてきた。一対一の間合いで負けたことはなかった。
だが今、俺を押さえ込んでいるのは、そういう「戦い方」で対処できる相手ではなかった。ただ純粋な、圧倒的な数と、それを動かす何者かの意志だった。
「――ゆず!」
もう一度叫んだ声は、押さえつけられた床に、虚しく吸い込まれていくだけだった。




