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灰と花、届かない場所で  作者: LEON
第三章 対峙
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「隠蔽」

静まり返った部屋の中、最初に動いたのは、意外にも普段は軽口ばかりの若い衆の一人だった。


「――お、おい、しっかりしろ!」


その声で、時が動き出す。だが、その場にいた誰もが顔面蒼白で、指示を出せる者などいなかった。組長を、殺した。しかもその場にいたのは、全員こちら側の人間だけだ。


「――俺に、電話させてくれ」


血の気の引いた顔で、俺はそれだけを絞り出した。


亮を呼び出すと、彼は電話越しに、落ち着いた声で応じた。


「――やったのか」


「……はい」


短い沈黙のあと、亮は静かに言った。


「分かった。今から言う通りにしろ。誰にも聞かれるな」


深夜、亮の指示のもと、俺たちは事の隠蔽に動いた。


「現場はそのまま残すな。全員の指紋、痕跡、徹底的に消せ。それと――」


亮は電話越しに、淡々と続けた。


「遺体は、組長が懇意にしてた解体業者の伝手を使って処理しろ。奴らなら、面倒事の処理には慣れてる」


「そんな伝手、俺たちにあるんですか」


「俺が繋いでやる。心配すんな」


亮の指示は的確で、迷いがなかった。パニックになりかけていた俺たちにとって、それがどれほど心強かったか分からない。


「幸い、あの場にいたのは組長本人と、うちの人間だけだ。組の連中には、こう伝えろ。『組長は視察の後、少人数で飲み直すと言って、供の者も先に帰らせた。その後の足取りは分からない』。事実、随行の連中は現に先に帰ってる。話の筋としちゃ、無理はねえ」


「――それで、通るんですか」


「通す。多少強引でも、筋さえ通ってりゃ、向こうも簡単には崩せねえ。あとは、お前らが余計なことを喋らないことだけだ」


亮の指示通りに、俺たちは動いた。現場の痕跡を消し、口裏を合わせ、震える手を押さえながら、何事もなかったかのように振る舞い続けた。


「――大丈夫だ。俺が全部、うまく収める」


電話越しのその一言に、俺たちは救われた気持ちになった。


数日間、表向きは何事もなく時間が過ぎていった。組長が視察後に姿を消したという話は、組織内でも「揉め事に巻き込まれたのでは」という噂で処理されているらしかった。


「――うまくいってる。少なくとも今のところは」


亮からの連絡に、俺は少しだけ、息をつくことができた。


このまま、何事もなく収まってくれればいい。そう願わずにはいられなかった。

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