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女自衛官が異世界裏技攻略!!  作者: 小説書こう


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7/12

ボス登場

 レイ一行は、“樹海領域”の奥へと進んでいた。


 スマホは圏外。

 GPSも死んでいる。

 地図すらない。


 頼れるのは方角感覚と経験だけ。


 まさに手探りの探索だった。


 頭上では、異様なほど巨大な枝葉が空を覆っている。昼間のはずなのに森の中は薄暗く、湿った土と腐葉土の臭いが鼻についた。


 時折、茂みが揺れる。


 見たこともない獣が飛び出してくることもあった。


 身体中牙だらけの狼。


 猿のように枝を飛び回る異形。


 巨大昆虫。


 だが――相手が悪かった。


 89式の銃声が森に響く。


 獣の頭部が弾け飛び、堂前の鉈が骨ごと肉を叩き割る。


 久我の機関銃が火を吹けば、木々ごと敵が薙ぎ倒された。この場にいるのは、全員が海上自衛隊の精鋭だった。異世界の生物程度では止められない。


 そしてしばらく進んだ時だった。


「あれっ」


 先頭を歩いていたレイが立ち止まる。


「この先、妙に開けてな〜い?」


 全員が顔を上げた。


 確かに木々が不自然に途切れている。

まるで“何か”のために用意された空間みたいに。

レイの口角が吊り上がった。


「……この先、絶対中ボス戦だわ」


「ゲーム感覚で言わないでくださいよ……」


 白瀬が嫌そうに呟く。だがレイはもう止まらない。


「イベント部屋の匂いしかしない!」


「准尉! 待ってくださいって!」


 制止を無視し、レイはずけずけと開けた空間へ踏み込んでいく。


 その瞬間だった。


 ドス!

                   ドス!

      ドス!

                    ドス!

 重い足音が、四方八方から響き始める。


 木々の隙間から現れたのは――人型。


 だが人ではない。


 全身を樹皮に覆われ、腕は枝のように捻じ曲がり、目の部分だけがぼうっと赤く光っている。


 樹人


 一体や二体ではない


 十、二十、三十


 数え切れない。森そのものが動き出したみたいだった。


「うわっ……!」


 白瀬があとずさる、気づけば、一行は完全に囲まれていた。樹人たちはギチギチと木を軋ませながら距離を詰めてくる。


「ま、まずいですよ准尉! 一旦引きましょう!」


「うん!」


 レイは即答した。


「私も後から行くから逃げてなさい!」


「えっ?」


「ほらほら! 出口塞がれる前に!」


 東雲が即座に判断する。


「撤退するぞ!」


 89式が火を吹いた。


 樹人の頭部が吹き飛ぶ。堂前が鉈で道を切り開き、久我の機関銃が木片を撒き散らす。一行は強引に包囲網を突破し、森の出口方面へ走り去っていった。


 そして。


 広場に残ったのはレイ一人。


 静寂


 無数の赤い目が、一斉に彼女を見つめる


 だがレイはようやく自由になったみたいに、にんまり笑った。


「よぉーし」


 89式を背中へ回し、代わりにマティーチェとナイフを抜き放つ。


「裏技攻略、開始よー!!」


 次の瞬間。


 レイが突っ込んだ。


 樹人の腕を潜り抜け、マティーチェを横薙ぎに振るう


 バキィン!!


 樹皮ごと胴体が裂け飛ぶ。


 返す刃で別個体の首を切断。


 ナイフを眼窩へ突き込み、そのまま蹴り飛ばす。


「実は村長が“森の中に樹人特攻の武器がある”とか言ってたけどさぁ!」


 レイは笑っていた完全に戦闘を楽しんでいる。


「そういう攻略法聞くと逆に“なしで突破できるか”試したくなるのよねぇ!!」


 樹人の拳が飛ぶ。


 しゃがんで回避。


 足を払って転倒させ、その頭部へマティーチェを叩き込む。


 木片が飛び散る、だが樹人は簡単には死なない、砕けた身体が、蔦を伸ばし再生していく


「うわっ再生持ち!? ますますゲームじゃん!」


 レイはむしろ嬉しそうだった。


 戦いながら、彼女は樹人の破片を回収していく。


 腕


 樹皮


 蔦


 “素材”として


 そして。


 樹人の群れを突っ切った先で、レイは足を止めた。


「……おぉ」


 そこにあったのは、巨大な扉、蔦に覆われながらも、どう見ても現代的な金属製だった。


 この世界とは異質


 まるで研究施設の入口


 しかも中央には、ゲームでよく見る“封鎖中”みたいな赤いランプまで点灯している。


「なるほどねぇ」


 レイはニヤリと笑う。


「この場の敵全滅で開くタイプのドアか」


 ガコン、と背後で地響きがした。


 振り返る。


 そこにいたのは――巨人。


 通常個体の二、三倍はある巨大樹人だった。


 全身が幹のように太く、赤い光が胸部で脈打っている。


「わお」


 レイはむしろ目を輝かせた。


「急にボス感出してくるじゃないの❤︎」


 彼女は懐から、先ほど回収した樹人の破片を取り出す。


「じゃ、こっちも裏技使おっか」


 破片を握り潰す。


模倣術(コピー)!」


 淡い光。次の瞬間、レイの身体が樹人へ変わる、だが。


 ズドォッ!!


 巨大樹人の腕が、変身直後のレイの腹を貫いた。


「ぐっ――!」


 だが。


 レイは笑った。


「だよねぇ。目の前で変身したらバレるわよねぇ!」


 腹を貫かれたまま、彼女は逆に突進し、巨大樹人の胴体へ組み付く。


「っしゃぁ!!」


 腰を落とし、全身の筋肉を爆発させる。


「フロント・スープレックス!!」


 轟音、巨大樹人の身体が宙を舞う。

そして――頭から地面へ叩きつけられ、地面が陥没し、巨体が痙攣した。


 レイは腹に刺さった腕を引き抜き、後退する。

だが樹人化していた身体が高速再生を始めていた。


「コピー便利ぃ〜!!」


 変身を解除し、人間の姿へ戻る。

そして彼女は、マティーチェで蔦を叩き切り始めた。


「開かないなら物理で開ければいいのよ!」


 バチン!!


 最後の蔦が裂け、扉がゆっくり開いた。


 中は――真っ白だった。


 壁


 床


 天井


 全て白いタイル


 無機質な照明


 配管


 まるでバイオハザードの研究施設。


「うわぁ……急に文明レベル跳ね上がった」


レイは目を輝かせながら進む。

やがて辿り着いたのは、巨大なホールだった。

見上げても天井が見えない。壁一面を蔦が覆い尽くしている。


「ワックワクだわ……」


 壁側には輸送用らしき移動ボード。


 レイが乗った瞬間、それは自動で動き始めた。


 ギュイイイイ……


 蔦をかき分けながら、ホール内周を縦に進んでいく。


 下は闇。


 上も闇。


 どこまでも暗い。


 レイはニヤニヤが止まらない。


「絶対来るわね」


 ビュオォォン!!上空から、“それ”が降りてきた。


 巨大


 あまりにも巨大


 植物の塊のような肉塊


 脈動する心臓みたいにドクンドクンと鼓動している。


 無数の赤い光点が身体中に浮かび上がっていた。


「あっ、アンタがボスね」


 レイは89式を構える。


「見るからに赤い点が弱点っぽいけど……」


 視線を細める。そして笑った。


「どう見ても、“そこ”狙われるの考えてないでしょ」


 狙ったのは、本体を吊っている根。支えている部分。つまり――足場。


 89式が火を吹く


 ダダダダダダッ!!


 5.56ミリ弾が根を引き裂き、怪物が絶叫した。


 心臓植物から無数の触手が襲いかかる。


 だがレイは移動ボードの上を駆け、飛び、滑り込みながら回避する。


「遅い遅い!!」


 再び連射。


 根が千切れ始める


 巨体が大きく傾いた。


「落ちな!!」


 最後の一発。


 ズガァン!!


 支えを失った怪物が、ゆっくりと崩れ落ちる。


 そして――


 遥か下の闇へ落下する


 数秒後、底の見えない下層から、凄まじい衝突音が響く。


 静寂


 レイは硝煙の残る89式を肩に担いだ。


「……うん、このあっさり感」


 満足げに笑う。


「やっぱボス戦は、ギミック無視の裏技攻略が最高よね!」







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