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女自衛官が異世界裏技攻略!!  作者: 小説書こう


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2/12

始まりの村

「……はっ!」


飛び起きると同時に、レイは自分の身体をくまなく触り始めた。


「はあ!よかったー!体に鉄片が刺さったのは夢だったんだー」


大きく息を吐き出し、張り詰めていた心がすっと軽くなる。だが、安堵したのも束の間、周囲の異様な光景に気がついた。


「…あれ、ここ…どこ?」


見慣れた空母の天井や無機質な壁はどこにもない。そこは、青々とした藁が敷き詰められた、見知らぬ素朴な部屋だった。呆然としていると、聞き覚えのある声が室内に飛び込んでくる。


「准尉!よかったです!目を覚ましてくださって!」


入ってきたのは、レイの部下である5人の隊員たちだった。見知った顔にホッとしたものの、彼女たちもレイ自身も、身にまとっている自衛隊の隊服はどれもボロボロに裂けていた。


「みんな!よかった、生きてたんだね。ところでここはどこなの?」


「記憶がないのですか?私たちはここの村の方達に海岸で保護されて、治療されたんですよ」


レイは藁の擦れる音をさせながら、ゆっくりと身を起こした。

頭が重く、身体中がきしむように痛む。だが、不思議とお腹に金属片の痕跡はなく、服が大きく裂けているだけだった。


「……生きてる」


その呟きに、部下たちは張り詰めていた糸が切れたように顔を見合わせた。


「本当に良かったです、准尉」


最年少の隊員が、今にも泣き出しそうな顔で訴えかける。


「いやいや、泣くほど!?ていうか私どれくらい寝てたの?」


「丸一日ほどです」


「うわ長いね。てか私のゲーム機どこだろ」


いつもの調子を取り戻そうと立ち上がろうとした瞬間、レイは激痛に顔をしかめた。


「痛っ……」

無理しないでください。傷、かなり酷かったんですから」


「え?」


慌てて腹部に手を当てる。そこには確かに、衣服が酷く切り裂かれた生々しい痕跡が残っていた。


(……夢じゃなかったんだ)


空母の転覆、迫り来る巨大な津波、冷たい海、そして意識が遠のく感覚。

鮮明に蘇る記憶に、胃の奥が冷たくなる。それと同時に、この部屋に漂う木と土の匂い、電気の通っていない独特の空気感が、ここが尋常な場所ではないことを物語っていた。


「ここ、日本じゃないよね?」


誰も答えられなかった。ただ一人の部下が、沈黙を破るように口を開く。


「村長が説明してくださるそうです。歩けますか?」


「……歩くしかないか」


レイは壁に手をつき、気合で立ち上がった。

一歩外へ踏み出すと、目の前には信じられない光景が広がっていた。

木と石で組まれた簡素な家々。干された魚の匂い。共同の井戸。そして何より、手作りの槍を手にして周囲を警戒する人々――。


「なにここ……RPGじゃん?」


思わず口をついて出た言葉に、隣の部下がひそひそと同意する。


「実は私も同じこと思ってました」


「だよねぇ!?」


ボロボロの隊服を着た異質な一行に、村人たちは不審と好奇の混ざった視線を投げかけてくる。その視線を浴びながら、レイたちは村の中央にある、ひときわ大きな建物へと案内された。

薄暗い室内には獣の毛皮が敷かれ、その奥に一本の古びた杖を携えた老人が腰掛けていた。長い白髭に、深く刻まれた顔の皺。それはどこからどう見ても、物語に登場する“村の長老”そのものだった。

老人はゆっくりと瞼を持ち上げる。


「……おお。目覚めおったか、おぬし」


「ど、どうも……?」

完全にゲームのNPCのような口調に、レイは引きつった笑みを浮かべるしかなかった。老人は杖で床を軽く叩き、厳かに告げる。


「まずは命が助かったこと、幸運に思うがよいぞい」


「助けてくれたの、おじいさん達なんですか?」


「うむ。浜辺に打ち上げられておった。血塗れでのう。もう駄目かと思ったわい」


レイは自分の引き裂かれた隊服に目を落とす。


「……ですよね」


「腹には鉄の破片が深く刺さっておったからの。普通なら助からん傷じゃ」


その言葉に部下たちも表情を強張らせるが、老人は事も無げに言葉を続けた。


「じゃが、回復薬を使った」


「……回復薬?」


耳を疑う単語にレイが聞き返すと、老人は棚から一本の小瓶を取り出した。そこには、現実の物質とは思えない緑色の怪しい液体が揺れている。


「これじゃ。“中級回復薬”じゃな」


「いや待って」


レイの顔から冗談が消え、完全な真顔になった。


「ちゅうきゅう……何?」


「中級治癒薬じゃ」


「いやゲームじゃん!!」


部下たちが困惑に包まれる中、ゲーマーであるレイの脳内は、にわかに歓喜と興奮で満たされていく。


「普通にポーションじゃないですかそれ!」


「ぽーしょん?」


「ふふ、いえなんでも」


不思議そうに首を傾げる老人をよそに、レイは内心で快哉を叫んでいた。


「これをかけたら傷が塞がったんじゃ。貴重な品ゆえ、あまり使いたくはなかったのじゃがな」


「いやいやいや、傷が塞がる液体ってやっぱりそういうことじゃないですか」


「薬じゃ」


「あは、雑!」


しかし、どれほど現実離れしていようとも、自分の傷が完治しているという事実が何よりの証拠だった。

老人は表情を引き締め、静かに語り始める。


「ここはおぬしらの知る世界とは違う。この島は“グネシー島”と呼ばれておる。六つの区域に分かれておってな」


老人が杖の先で床に滑らかな地図を描いていく。


「中央が、この居住区じゃ。わしらが住む、安全な場所よ。じゃが、それ以外は危険地帯」


「危険地帯?」


「この島は手を開いたような形になってての。小指部分は“樹海領域”じゃ。樹木生い茂る場所でな、人間が変化した“樹人”がおる。奴らは森へ入った者を養分に変えようとしてくるゆえ、近づいてはならんぞい。……もっとも、樹人は火に弱い。松脂を塗った松明を持てば、多少は近寄ってこんがな。この島から出たいのであれば、ここからいくべきじゃな」


いかにも恐ろしげな設定に、レイは数秒の沈黙の後、部下たちを振り返った。


「ねぇ、私まだ寝てる?」


「私もそう思いたいです、准尉」


現実逃避を試みる二人の前で、老人は冷徹な事実を突きつける。


「村の外へ軽い気持ちで出れば死ぬぞい」


「そんな危険な場所なのに、なんでここは平気なんです?」


「中央区には結界が張られておるからじゃ。昔の大賢者様が作ったと言われておる」


「わあもう完全にゲームじゃん!」


レイの胸の昂ぶりは最高潮に達していた。

空母の転覆、謎の漂着、そして目の前にある回復薬、魔物、結界の存在――。

どう考えても現実とは思えない、まるで自分が大好きな裏技攻略の世界に放り込まれたかのようなファンタジーが、今、幕を開けようとしていた。

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