落下判定ってどう計算してるのかな?
レイ一行は吸血城の入口ホールを進んでいた。
赤い絨毯にデカすぎるシャンデリアそして、壁には肖像画。しかも全員、目がやたらリアルだ。
「うわぁ〜、絶対夜中動くタイプの絵じゃーん」
レイが嬉しそうに見る。
「准尉、そういうこと言うと本当に動きそうなんでやめてください」
白瀬が89式を握り直した。
ギィィ……
後ろで勝手に扉が閉まる。
「うわっ!?」
一同が振り返る。完全に閉じ込めらられた。
「はい出ましたー。洋館あるある、自動ロックだねー、これ絶対どっかで鍵集めるタイプだわ」
「ゲーム感覚やめてくださいよ……」
だが次の瞬間だった。
カツン。
カツン。
上の階からヒールの音。
「……え?」
一同が見上げるのは二階の渡り廊下。そこに女が立っていた。真っ白な肌に真っ赤なドレスにゲームに出てくるような美人。そして口元だけ、血みたいに赤い。
「あっ絶対吸血鬼だ」
「ようこそ、人の子達」
「うわ喋った」
「准尉、失礼ですって!」
すると女は手すりへ腰掛ける。
「珍しいですねぇ。ここまで辿り着く人間なんて」
「まあ私達、自衛隊なんでー」
「じえーたい?」
「軍人みたいなもん!」
女はクスクス笑う。だがその瞬間だった。
グニャ。
「……あ?」
女の首が横に百八十度曲がった。しかもそのまま笑っている。
「うわキッモ!?」
さらにドロリと女の口から牙が伸びた。
目が真っ赤に染まる。
「人間の血……久しぶり……♡」
「うわ完全にボス前イベントじゃん!!」
レイだけテンションが上がる。
「准尉なんで嬉しそうなんですか!?」
すると吸血鬼女が消えた。
「……え?」
次の瞬間。ドンッ!!
「ぐはっ!?」
堂前が吹き飛ぶ。いつの間にか吸血鬼が背後にいたようだ
「速ッッ!?」
レイが叫ぶ。まるで映画みたいなスピード。いや映画より速い。吸血鬼が再び消える。次は白瀬の横。
「うおっ!?」
爪が89式を弾き飛ばした。
「人間って脆いのねぇ♡」
「いや強すぎるだろ!!」
ダダダダダダッ!!
東雲達が一斉射撃。だが吸血鬼は壁や天井を跳ね回り、全部避ける。
「完全に高機動型ボスだこれ!!」
レイが笑いながら89式を構える。すると吸血鬼が天井へ張り付いた。逆さまに髪をぶら下げながら笑っている。
「さぁ♡ 誰から食べようかしら♡」
その瞬間。レイがニヤッと笑った。
「……あっ」
「?」
「アンタ今、“天井に張り付いた”わね?」
吸血鬼が首を傾げる。
「それがどうかしたの?」
レイは89式を肩へ回した。
「いやぁ、思い出したのよ」
ニヤニヤしている。完全に裏技を思いついた顔だった。
「昔やったゲームでさぁ、“落下判定バグ”ってあったの」
「……?」
吸血鬼は理解していない。だが部下達だけは察した。
「准尉その顔やめてください」
「絶対ロクでもないこと考えてますよね」
「ゲームってね」
レイは吸血鬼を指差す。
「空中にいる時間が長いほど、落下ダメージが増える時あるのよ」
「何を言って――」
その瞬間吸血鬼が動いた。天井から飛び降りる。
狙いはレイ。真っ逆さまに突っ込んでくる。
「死ねぇ♡」
レイは逃げず、むしろ笑った。
「来た来た!」
そして吸血鬼が途中のシャンデリアへ着地しようとした瞬間。
バゴォン!!
レイの89式が火を吹き、鎖が千切れる。
「え?」
吸血鬼の足場だったシャンデリアが落下。吸血鬼の身体が空中でズレた。だが吸血鬼は即座に次の壁へ飛ぶ。
「甘――」
ドガァン!!
今度は堂前が壁を鉈で破壊。老朽化していた装飾ごと崩れ落ちる。
「は?」
吸血鬼の着地点がまた消える。空中。また空中。
まだ地面へ着けない。
「准尉!まさか!」
「そういうこと!!」
レイが爆笑する。
「この世界ゲームなら、“落下中扱い”継続できるんじゃないかって思って!!」
「そんなアホな――」
吸血鬼が壁へ飛びつこうとする。だが
ダダダダダダッ!!
東雲達の射撃により、着地寸前の壁が砕け散る。
「うそでしょ!?」
吸血鬼の顔が初めて焦った。
(着地できない!)
ずっと空中。
「ほらほらほら!!」
「どんどん滞空時間伸びてる!!」
「何言ってるのよアンタァァァ!?」
吸血鬼が叫ぶ。
その間にも堂前が柱を破壊、久我が機関銃で天井を崩し、氷室が窓枠を撃ち抜き、吸血鬼が触れそうな場所全部を壊していく。
「落ちろ落ちろ落ちろ!!」
「ゲームならそろそろ即死圏入ってる!!」
「意味が分からない!!」
吸血鬼は高速で空中を跳ね続け、ついに足場が尽きた。
「ッ――」
重力により真下へ落ちる。。
ドゴォォォォォンッ!!!
吸血鬼が地面へ激突した。
一瞬城全体が揺れ、床が陥没。赤い絨毯が吹き飛ぶ。
そして中央には。上半身と下半身が変な方向へ折れ曲がった吸血鬼が転がっていた。
「…………」
白瀬が震え声で言う。
「……死んだ?」
レイが近づく。吸血鬼はピクピク痙攣していた。
「う、そ……そんな……」
レイはしゃがみ込み、ニヤァっと笑う。
「いやぁ〜」
吸血鬼の額を指で小突く。
「“落下ダメージ”って怖いわねぇ?」




