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嫌われて自分を生きる  作者: こたつむ


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承認欲求と都合の良い人間

「夢結は承認欲求が強くて都合の良い人間になってない?」

と、もえが言ったことがあった。

仕事を頑張って、誰も褒めてくれなければ虚しいだろうが、自分が承認欲求が強いと夢結は思わない。

いいねが欲しくて、インスタにのめり込むようなこともない。

「結局、職場で誰かのために何かしても、その時の言葉だけで終わるでしょ?

してあげたのにって思って虚しくなるならしないほうがいい。

虚しく思うとしたら、ほんとは見返りを求めてるってことじゃない?」

虚しい思いを感じることがあるのは、自身が気づいていないだけで、いい人と思われたくて、いい人を演じているということだろうかと夢結は自問自答する。

「会社に姉御風吹かしてる先輩がいるんだけど、いつもちょっといいお菓子をみんなに配るわけ。

みんな『ありがとう』って言ってるけど、もらうばかりじゃいけないから、自分もお菓子を配らなきゃいけない状況になって迷惑してるわけよ。

それで、何も返さない私なんて悪者扱い。

勝手に菓子を配ってるだけじゃん?

お返しを求めるなら、配るなってこと。

その人、自分の昼ごはんはカップ麺とか安い菓子パンを食べてるの。

自分の昼ごはん代はケチって人に配るお菓子は、そこそこ値の張るもの、『私いいものたくさん知ってるの。』みたいな感じで配って、見栄を張って、見てて虚しくなるんだよね。

まずは自分じゃない?

それで承認欲求満たされてんのかなぁ。

会社の人って、嫌なことがあったら、グチ聞いて欲しいとか、自分を助けて欲しいとか、味方が欲しいだけじゃん。

そんなところで、何してんだって感じ。

要するに自分にとって都合のいい人が欲しいだけ、人のために何かするのは承認欲求を満たしたいだけ。

会社の人間関係って、その程度なのに、何を求めてるんだか。」

極論である。極論であるが、夢結にも心当たりはある。

親しくしていた後輩が退社してからも慕ってくることはない。

グチなど気持ちを共有してもらう必要が無くなったからだろう。

もえの、夢結の良心への攻撃は続く。

「私が犯罪に巻き込まれたとして、友達が助けてくれるとは思わないし、友達も迷惑かけられたくなくて、距離を置くと思うんだよね。

反対にヤバい状況を誰かに押し付けられるとしたら、自分を攻撃してくるような人より、無害なお人好しを選ぶよ。」

周りに警戒されるような人が、何かに巻き込まれることは少ない。

都合の良い人間は、とことん利用される。

後輩からミスを相談され、自分の確認不足と自分から上司に謝罪することもあった。

自分の代わりに、謝罪してくれると思っての相談だったのだろうか。

そんな意識が介在していたと考える人間にはなりたくないと夢結は思う。

しかし、人のために何かをすることが、まわりにとって、感謝ではなく、当たり前になっていることを、夢結自身感じている。

備品の補充など、気がつけばこまめにしているが、備品が切れると当たり前のよう夢結に声がかかるようになった。

それは、中堅になっても変わらない。

新人の頃は、気づいた人がやればいいと考えていたが、気づいてもやらない人の方が多く、多忙な時に庶務に備品を取りに行くことは、自分ばかりと面倒くさくなっている。

誰にも感謝されない作業、誰か感謝の言葉をかけてくれたらと思うのは、見返りを求めているということなのだろうか。

みんながやりたくない雑務、業務量の重い仕事、夢結なら快く引き受けてくれると思われているとしたら、ただの都合の良い人間と思われているのかもしれないと、もえの指摘に夢結も思わずにいられない。

いつも、まわりが困っているときは、自分がなんとかしないといけないという義務感に襲われ、断ることはできない。

手いっぱいで仕事を頼まれて断った時は、罪悪感に襲われる。

しかし、人の頼み事を引き受けた時に、その人ができない状況ではなかったこと、ただ遊びに行きたいだけであったこともあった。

夢結は、人に仕事をお願いすることはない。

人を頼ることができない性分である。

頼みにくい存在、人を頼れる人間だったらどんなに楽だろうかと夢結は思う。

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