もえの秘密
有給をとっていた長澤が、出雲のお土産を手に戻って来た。
(もえも、出雲に行ってたっけ)
家に戻った夢結は、長澤が出雲に行っていたことを話す。
「すごい偶然だよね。」
「偶然じゃないよ。あのさ、今度、美桜が彼氏連れてくるじゃん?長澤さんに来てもらおうよ。」
もえが唐突に提案する。
「長澤は関係ないじゃない。」
「女所帯に男入れるのどうかなって。それに、長澤さんに男の目で、美桜の彼氏を見極めて欲しい。」
「長澤は、人を見極められるタイプじゃないよ。それに、何でもはっきり言うから、雰囲気壊しそうだからダメ。」
長澤は入社時の新入社員歓迎会で、酔い潰れ、マンションの鍵を無くし、仕方なくウチに泊めたことがあった。
その時にもえに会っているが、5年も前のことだ。
しかし、美桜が颯太を連れてくる1時間前に長澤が来た。
「どうして?」
「美桜ちゃんの彼氏を見極めないとね。」
キッチンにいるもえが言う。
「私が声を掛けた。」
「連絡先、知ってるの?」
「そう言うこと、偶然じゃないって言ったじゃん。」
夢結は、ハッとする。
同じ出雲に行っていたことをもえが『偶然じゃない』と言っていたが、長澤ともえが共に旅行に行くとは、思いもよらぬことで、夢結は、その言葉を流していた。
「付き合ってるってこと?」
「偶然じゃないって言った時、言おうと思ったけど、夢結が流すから、言うタイミングを失ってた。付き合うようになったのは最近。それまでは、お茶する程度。」
「オレは、結構前から口説いてたんだけどね。」
長澤は言う。
「私は、長澤さんみたいな人なら、夢結が、変われると思って、2人が付き合えばって、最初は思ったんだけど、ダメだった。」
それが、2人が連絡を取り合うようになったきっかけと夢結は思った。
「長澤をそういう目で見たこと一度もないよ。」
「人間性が、違いすぎるからね。」
長澤も言う。
「そっか、長澤ともえ、人間的に近いよね。驚いたけど、なんか納得いく。」
自分がある2人はとてもお似合いだと夢結は思う。
もえは、微笑む。
「私も美桜も、もう大丈夫だよ。夢結には、自分のことだけ考えて、焦らず、いろんなことにチャレンジして、好きなことを見つけて、好きなことをして生きて欲しい。」
もえは、今日を姉の使命からの本当の解放の日にしたかったかもしれない。
「私を心配して、長澤と連絡取ってたんでしょ?姉としては、もえにはもっと頼られたり、甘えられたりしてみたかったな。」
「充分、甘えてたよ。夢結がいてくれたから、自分らしく生きて来れた。」




