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慕われる人間
「お前、浮いてるらしいな。」
ぶしつけに、夢結に声をかけてきたのは同期の長澤である。
何も言い返さず目を伏せる夢結に長澤は続ける。
「どうせ、人にミスかなんか押し付けられたんだろ?相変わらず要領悪いよな。相手にハメられたんなら、やり返せばいいじゃん。」
夢結にそんなことはできない。夢結は何も言い返さず黙ったままでいた。
「やり返せないなら、移動願い出せば?逃げればいいじゃん。」
そう言うと、長澤は立ち去った。
長澤は、後輩の面倒見が良いわけではないが、誰にも左右されず、言いたいことがあれば、なんでもハッキリ言うが裏のない性格。
できない人間にグチグチと小言を並べることもしない。
いつも、活気に満ちていて、落ち込む様子を見せたことがない。
長澤がいるだけで、周りが明るくなる。
自分のある人間だ。
(アイツは、後輩に尊敬されてるんだろうな。)
長澤の後ろ姿を見ながら夢結は思う。
(私のようになりたいと思う人はいないだろうな。)




