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嫌われて自分を生きる  作者: こたつむ


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19/19

自分がない

夢結は、周りに距離を置かれてから、定時で仕事を終えられるようになった。

いつもなら、

「仕事が終わらない。」

と言う声が聞こえれば、声を掛け、仕事を手伝ったり、引き受けたりしていたが、今はしない。

声をかければ、徐々に、前のような関係を持てるかもしれないが、また人に関わり、その責任を負うことが怖くなった。

それでもたまに、早く帰りたい者から、仕事を振ろうとされるが、

「ごめんね。用事があって」

と、断っている。

しかし、助けて欲しいと思っている声を無視するのも辛い。

用事があると嘘をつくことにも心が痛む。

何か、始めてみようかなと思うものの、やりたいことがない。

今まで、趣味もなく、芸能人にハマったこともなかった。

いつもは時間があるときは、家で普段は行き届かない家事を行なっていた。

映画も、じっと座って見る時間があれば、家のことをしたいと思い、映画館に行くこともなかった。

自分のための時間を過ごしたことがない。

定時に家に帰れるようになっても、もえが夜ご飯の手伝いもさせてくれないため、夜の時間を持て余す。


「せっかく早く帰れるんなら、寄り道したら?」

もえが、時間を持て余し、スマホで占いを見ている夢結に声を掛ける。

「寄り道とか、時間がもったいないって思っちゃうんだよね。」

「家のことしなくていいんだから。」

「それは、わかってるんだけど。」

「時間があったら、やってみたいってことなかったの?」

「何か始めてみようかなって思うんだけど、興味を持てることすらないんだよね。」

「重症だね。自分のやりたいこともないなんて。」

夢結は改めて、自分は人のためにしか生きられない、自分がない人間だと思い知る。


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