気を使わせる人間
もえは小さな時からあまり感情を表に出さず、何を考えているかわからない。
両親は、言いたいことも言えないのではないかと心配し、もえを気遣っていた。
誰かと深く付き合うこともなく、学校の行き帰りも1人、休みに友達と出かけることもない。
だからといって、イジメを受けたことはない。
人に関わらない分、揉め事に巻き込まれることも、友達関係での悩みもなく、自分の世界を生きている。
それを寂しいと思わないのが、もえの強みだ。
夢結は、長女に生まれたせいか、困っている人がいれば放って置けないし、力になろうとする。
誰かのために何かをするのは見返りを求めてではない。
しかし、先輩社員に嫌な思いをさせられている後輩の相談に何度も乗り、後輩が辛い思いをしている状況を見かけたら間に入るようにもしていたが、少し嫌な思いをさせられていた先輩社員に何かをしてもらったからと、嫌な思いをさせている側の人間にお礼をする様を見て、いつも力になっている私にはなぜないのか?受け入れらない自分がいる。
急な仕事で手が回らないと漏らす同僚の仕事を手伝うつもりが、同僚は定時に上がり、自分が全部引き受けることになってしまったが、その同僚が合コンに行っていたこともあった。
周りに気を使う人間は、何かと雑用を頼まれ、人間関係のトラブルに巻き込まれることも多い。
怒らせたら面倒くさいと思われているような人間は、雑用を頼まれることもなく、周りが勝手に気を遣ってくれ、煩わしい思いをしなくてすんでいる。
もえは、あまり感情を出さない分、扱いづらいまでは行かなくとも頼み事をしづらいタイプの人間だろう。
仕事はいつも定時に上がっている様子から、自分の仕事だけを淡々とこなしていることが伺える。
「頑張れば仕事が増えるだけだから」
と、もえが以前言っていた。
周りに期待されない程度にそこそこの仕事を行う。
急な仕事をもえに振る人間はいないのか、振らせない雰囲気を醸し出しているのか、普通であれば、協調性を持つよう指導が入るものだが、指導されないのは、気を遣わせる側の人間だからだろうか。
職場で中堅となった夢結は、職場で仕事や人間関係が円滑に回るよう常に気を使い、急な仕事や雑用にも応えていた。
人間関係の悩みは尽きない。




