美桜の恋の始まり
美桜が、おしゃれをせずに出かけた。
「デートらしいよ。」
もえが呟く。
デート前はファッションショーが始まるのが定番であるが、なぜ、コンビニに行くような感じで出かけたのか?
「これ。」
もえが見せたのは、小松菜の根っこをコップに差し、葉が青々と伸びた写真である。
「アイコンをこの写真にしたらって提案してみたの。だったら、うまくいったみたい。」
野菜くずを再生させる地味さは、堅実な男に来るものがあるかもしれない。
もえは、美桜から、大学内で優良物件とされる男の話をいくつか聞く。
その中で、もえが選んだのは、佐久間颯太である。
颯太は地元で複数の事業を営み、地元の中心地の土地を所有する不動産王と言われるような家の息子だ。
飲み会などに参加することはなく、浮かれた大学生に興味がない堅実な青年ということで、もえが狙いを定めた。
颯太がジェンダー研究会に所属していることを知り、美桜に、その研究会に入るよう促した。
そして、美桜は早めに教室に入る。
ジェンダーに関する本を読み、他の颯太狙いの女とは違うことを認識させる。
しばらくすると、颯太が美桜を認識し、熱心に本を読む美桜に話しかけるようになった。
「何を読んでいるの?」
「私はまだ、ジェンダー初心者だから、上野先生や嶋田先生の中でも大衆的な本から始めています。」
「面白い?」
「まだ、行き過ぎかな?と感じる部分があります。姉に言わせると、そこまで書かないと日本におけるジェンダー意識は変わらないからだと言われました。」
「それは、目からウロコだな。僕も、この2人の発言は過激と感じている部分はあったけど、敢えて過激に訴えていると考えると面白いね。」
美桜は、もえの意見を受け止める颯太の言葉が嬉しかった。
「なぜ、この研究会に?」
「私は、両親が亡くなってから、姉妹3人で暮らしています。長女が、姉だからといろんな責任を負わされていることに疑問を感じていていました。生まれた順番とか、男だからとか女だからとかなければ、姉も姉らしく自由に生きれるんじゃないかと思って、姉の意識も解放させてあげたくて、ジェンダーを学んでみたいと思いました。」
もえの受け売りである。
「1人の人間としてってこと大事だよね。」
美桜の瞳は輝く。




