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「三社合同・V夏祭り、開催決定!?」

『【三社合同発表】V-ARENA夏祭り、開催決定!!』


V-1以来となる三社共同イベントの告知は、その日のうちに業界を席巻した。


概要はこうである。V-ARENAに巨大な祭り会場を建設し、**三日間**にわたって開催。そして目玉は、二つ。


一つ——**抽選で選ばれたファンが、ゲストアバターとして会場に入場できる**。VTuberと同じ仮想空間を歩き、屋台で遊び、言葉を交わし、ハイタッチまでできる。完全同期技術の一般開放は、業界史上初。つまりこれは、「**VTuberに"会える"、史上初の祭り**」なのである。


二つ——**毎晩の「夏祭りライブ」**。昼のふれあいの部が終わった後、夜はステージでの配信ライブを三夜連続で開催。そして最終日の夜は、グランドフィナーレの**歌唱ライブ+打ち上げ花火**。三社の垣根なく、総勢四十名超のVTuberが入り乱れる、夏最大の祭典——。


『VTuberに会える!? 嘘だろ!?』『抽選倍率えぐいことになるぞ』『毎晩ライブとか体力もつのか』『フィナーレの歌唱ライブ、誰が歌うんだ?』


応募は初日で百万件を突破し、当選枠——**各日二千名**——の倍率は、話題性だけで社会現象になった。


そして、その裏側で。


「——というわけで、会場素材の制作班に、きみを推薦しておいた」


「聞いてないんですが!?」


V-ARENAの工房で、琴音はしれっと言った。作業台には、夏祭り会場の設計図が、どんと広げられている。


「提灯、屋台、櫓、花火の演出素材。物量が地獄。猫の手も借りたい。——きみの手は、猫より使える」


「褒められてる……のか?」


「最上級。さ、始めるよ」


 ◇


制作合宿(通い)は、思いのほか楽しかった。


琴音の設計に沿って、燈哉が素材を量産する。提灯の質感、屋台の暖簾、水面に映る櫓の灯り——サムネ作りで鍛えた手が、面白いように会場を埋めていく。


「……はやい。それに、ムラがない。量産の鬼」


「琴音さんの下絵がいいんですよ」


「ん。それはそう」


「肯定するんだ」


数日目の夜。花火の演出データを組んでいた燈哉の手元を、琴音がじっと覗き込んだ。


「……ねえ。その花火の広がり方、どうやったの」


「え? ああ、放射のパターンを手で置くと不自然だったので、こう……角度と速度に、ばらつきの規則を作って」


「それ、**式で置いてる**よね。いま」


「————」


しまった、と思った時には遅かった。画面には、燈哉が感覚で書き散らした、粗削りな数式もどきが並んでいた。


「やったことない、って言ってたけど。……きみ、やっぱり**書けるでしょ**、プログラム」


「……か、書けません。これはその、算数の延長というか」


「ふうん。算数の延長、ねえ」


琴音はゴーグルの奥で、にんまりと笑った。追及は、そこで止まった。止まったが——


「ま、いいや。**逃げ道は塞いだから、いつでも観念して**」


「怖いんですよ、工房のルール!!」


 ◇


一方その頃、各社の出し物決めも進んでいた。


フルパの定例会は、さながら作戦会議である。


「spoVは射的屋台だって! 瑠奈ちゃん、出るの?」


「ん。しゃてき、たんとう。……けいひん、ぜんぶ、うちぬく」


「店側が撃ち抜いてどうするの!?」


「Vmove'sはね、四期で屋台一つと、五期で一つ。あと和風トリオが縁日の総合プロデュース! あの三人、去年の和フェスのノウハウあるから」


「くるみ割り同盟でも、何か出したいですね。姉さん」


「いいね。世界征服っぽい屋台……くじ引きとか?」


「それ、**ファン交流ブース**にしましょう。当選した団員(視聴者)が、幹部と直接くじを引ける。……一番隠したいものは、一番堂々と出す。結社の鉄則です」


「その鉄則、ほんと万能だな!?」


会議は賑やかに転がっていく。誰もが、夏の祭りを楽しみにしていた。


 ◇


そして数日後——出演表が、公開された。


『V-ARENA夏祭り 最終日・グランドフィナーレ歌唱ライブ 出演者一覧』


九帝から、楓、京、サツキ。spoVから、スカーレット、リリカ。各社の歌姫が並ぶ、豪華絢爛の名簿。その最後に——


『**明野来海**』


「「「——来海(ちゃん)(さん)が、フィナーレ!?」」」


フルパの通話が、どよめいた。当の本人が、一番どよめいていた。


「き、聞いてない聞いてない聞いてない!! 何で俺がその並びに!?」


その夜、楓から一通だけメッセージが届いた。


『月見の宴で、お前さんの歌は測った。**足りとる**。——あとは度胸じゃ』


(八百万の頂点に「足りてる」って言われたら……もう、逃げられないだろ)


夏最大の舞台への切符は、こうして、否応なしに手の中に落ちてきたのである。

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