「企画会議2」
「——では、第二回・秘密を守る会、改め『企画会議』を始めます」
本社の小会議室。ホワイトボードの前に立つ綾芽と、テーブルを挟んで向かい合う遥と静。美咲に約束した「三人コラボ企画」を、本当に作らねばならなくなった三人である。
「まず、差し入れをどうぞ。兄さ……姉さんの好きな、鮭おにぎりです。握ってきました」
「わ、私は限定のプリン買ってきた! 三時間並ぶやつ!」
テーブルに、不格好だが妙に旨そうなおにぎりと、宝石のようなプリンが並んだ。
「あ、ありがとう。二人とも」
「「どっちから食べる?」」
「会議を始めます!!」
◇
企画案の検討は、難航した。主に、内容以外の理由で。
「私の案は『視聴者参加型・怪談配信』です。姉さんの絶叫、また聞きたい人は多いかと」
「却下で!! なんで身内から archive に残る事故を狙いに来るの!?」
「じゃ、じゃあ私の案。『三人の秘密、当ててみまショー』——視聴者さんに、私たち三人の共通点を推理してもらう企画で……」
「「それが一番危ない!!」」
「た、たしかに!!」
(この二人、たまに攻めの姿勢が命知らずすぎるんだよな……)
議論は脱線を重ね——脱線のたびに、二人の椅子が少しずつ綾芽のほうへ詰まってくるのが議事録に残らない攻防である。ホワイトボードに書き込む綾芽の右隣の席を巡っては、休憩のたびに音のない椅子取りゲームが発生した。
「ね、燈哉。この方向性、どっちがいいと思う?」
「兄さんは、どちらの案が好きですか」
「両方の良いところを合わせよう!!」
(挟み撃ちの質問には中立! 中立あるのみ!!)
そんな戦場と化した会議の末、企画は意外な形でまとまった。
「——つまり、こういうこと? 私たち三人が『秘密結社の幹部』っていう設定で」
「はい。団員(視聴者)から『世界征服のためのくだらない作戦』をマルマロで募集して、幹部会議で真剣に審査する大喜利企画。名付けて——」
静がホワイトボードに、極太マジックで書き殴った。
『**秘密結社・くるみ割り同盟**』
「うちらの秘密の繋がりを、逆に配信ネタにしちゃうんだ……」
「一番隠したいものは、一番堂々と出す。……ヤンキーの鉄則です」
「その鉄則はじめて聞いたけど、企画としては天才だと思う」
(実際、上手い。「三人はなんか秘密っぽくてズルい」という視聴者の感情ごと、エンタメに変換できる。……この子、企画の才能あるな)
「あとは配信用の衣装と背景素材ですね。結社っぽいマントとか、怪しい紋章とか」
「それは俺が作るよ。アバターに着せるデジタル素材だから、サムネ作りの延長だ。三日あれば形になる」
「「じゃあ土曜、資料集めに行きましょう(行こう)」」
「……ん? いや、デジタル素材の制作に、買い物は関係なくない?」
「「**実物を見ないとイメージが湧かない(です)**」」
「息ぴったりだな!?」
理屈は、どう考えても破綻していた。マントの質感などネットの資料画像で十分足りるし、何なら本人が一番よく知っている。——だが、二対一である。
「マントの翻り方は実物を見るべきです。取材です」
「か、仮面の安っぽさも、実物のチープさを知らないと再現できないし!」
(……絶対、ただ出かけたいだけだろ、この二人)
((ただ出かけたいだけです(だもん)))
「日程は——今週の土曜でどう?」
その瞬間、二人の少女のスマホが、同時に音を立てた。予定確認の速度は、光の速さだった。
「「空いてる(ます)」」
(……そんなに買い出しって楽しみなものかな。まあ、賑やかで悪くないけどさ)
好意の圧を浴びながら、本人だけが「仲のいい同僚との外出」だと信じて疑わない。——この男、こういうところである。
何かが起きるのが、この物語である。




