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俺は孤高のVTuber?  〜俺が男という秘密は死んでも守る〜  作者: こっこ
VTuber企業に勤めてそろそろ一年ですが、まだ他のVTuberとコラボしたことがないそうです。
2/14

第1話 コラボはしたくないが、皆の気持ちは裏切りたくないようです。

20xx年3月20日。この日はとある1人のVTuberにとって大きな転機が訪れた日である。


「まっちゃさん、ゆきちゃんさん、ふじさん、参加ありがとう!また是非遊びにきてね〜」


そう言うのは配信中の明野来海、そう燈哉の女の人らしい声だった。燈哉の女の人らしい声は普段の男の人らしい声とは全く違い、綺麗で聞き取りやすい声だった。


現在人気のFPSゲームをリスナーの人たちと一緒にプレイするという配信をしている最中の燈哉は雑談をしながら楽しくゲームをしていた。


するとその時、突然1人のVTuberがその配信に入り込んできた。


「こんちは〜」


「え、法ちゃん!こんにちは!」


その名も法々(ほうぼう)ミハネ。来海と同じVmove's所属のVTuberの1人だ。ちなみに来海とはデビューが近くいため、来海のことを結構気にかけている。


少し青みを帯びた黒のショートの髪に、エメラルドのような透き通った綺麗な緑の瞳。そして来海の服とは対照的な真っ黒の海外の学生服のようなローブと頭に教授のような上が四角で平たい黒の帽子を被っていた。


Vmove's所属のVTuberにはそれぞれ設定があり、ミハネは

Vmove'sが危機に陥ったときに皆を守る、最強の法律家を自称している女という設定だ。


ちなみに来海は、ノーベル賞を取ろうとした結果イグノーベル賞※を10回受賞したVmove'sでNo.1の研究者という設定だ。


※人々を笑わせて考えさせるものに与えられる賞。ノーベル賞のパロディであり、類似科学的な研究や、皮肉の対象としても贈られる。


何故に気にかけているかというと、来海は配信で他のVTuberとコラボすることがほとんどないからである。


企業であるがゆえの大きな強みを何故使わない来海に対し、ミハネは来海が他のVTuberとコミュニケーションが上手くとれてないのではないかと心配しているのだ。


だが、来海がほとんどコラボしない真の理由はもちろん他のVTuberに自分が野治燈哉というただの男であることを悟られるリスクを少しでも下げるためであった。


「勝手に入っちゃってごめんね〜。今日は来海ちゃんに伝えたいことがあって入ってきたんだ!」


「え、伝えたいこと?」


突然入ってきてからの突然の意味深な発言に来海の配信を見ている1万人以上のリスナーたちのコメントは大盛り上がりだ。


その一方全く身に覚えのない来海は首を傾げる。


というふりをアバターにさせている中身の燈哉にはこれが何のことを指しているのかを一瞬で理解した。


明日の俺のデビュー1周年記念日のことかな。そういえば具体的に何をやるか全く伝えられてないんだよな・・・


そんなことを考えているうちにミハネからその内容がすぐ明かされた。


「なんと明日、来海ちゃんのデビュー1周年を記念して、来海ちゃんのお誕生日会を明日の午後7時から配信しまーす!」


「ええっ!初耳なんだけど!」


来海はそう驚くと同時に、コメント欄もさらに盛り上がり始めた。


「さらになんとーーーっ!」


さらになんと!?


ミハネのその発言に燈哉は嫌な予感がしたが、それでも配信を盛り下げないためにもアバターの来海に「おぉぉぉーーーっ!」とテンポを合わせて言う。


「遂に来海ちゃんが先輩たちとコラボしまーすっ!」


ドヤっとした表情のミハネに対し、嫌な予感が的中した来海は愕然とする。


数秒の沈黙が訪れた後来海は本来嬉しがらないといけないはずなのに思わず、


「えぇぇーー!?」と叫んでしまった。


おいおい嘘だろ?わざわざコラボは避けてきたのに・・・


しかしここで断ったり、嫌な反応をしていると折角この案を企画し、先輩たちと予定を合わせたりしたミハネの苦労を全て踏みにじるどころか、コラボが好きじゃないと有名の来海に無理矢理コラボをさせようと強要した悪者と言われてしまう可能性だってある。


そう、だから俺は空気を読んだ。


「いや、黙っててごめんね、来海ちゃん」


来海の反応を見たミハネが少し申し訳なさそうに言った。だが、そこですかさず来海は言った。


「いや、実は前々から先輩たちともコラボしたかったんだけど、デビューした時は先輩の配信を台無しにしなくないって気持ちが強くて怖かったの。でも、いつか変わりたいと思ってたから、私、これを機に変わるよ!」


その時、コメント欄がかつてないほどの大きな盛り上がりを見せた。



先輩たちと仲良くなってね来海ちゃん!


遂に正式なコラボするのか!楽しめよ!


皆いい人たちだから大丈夫だよ。だから安心して!



大量の温かいコメントが配信に飛び交う。どうやら来海がコラボしないことを心配していたのはミハネだけではなく、リスナーの皆も同じだったようだ。


俺の本心でもないその言葉に皆そうなに暖かく接してくれるのか。だったら、俺は絶対にその気持ちに応える!


燈哉は罪悪感を抱えながらもリスナーの期待に応えるためにコラボ配信に全力で望むことを深く決意した。


そしてその後、ミハネが緊急参戦したFPS配信はいつもより賑やかに続いた後にそのまま幕を閉じていった。




配信が終わった後、燈哉はミハネの中身の人から謝罪と明日の配信の内容についての電話かかってきた。


燈哉は謝罪を受け入れつつ明日の詳しい情報について聞いた。


時間は丁度昼の12時からで、場所は本社にある撮影場所で行うらしい。機材は全部用意されてるということなので特に持ってくるものは無しというわけだ。


遠隔から参加というわけではなく直接会う必要があるので、この見た目では100%男だとバレてしまう。


「遂にコイツを使う日が来たか」


とあるアパートの暗い部屋の中で、人影が何やら女ものの服を両手で持って鏡の前に立っていた。


「よし、今日の配信全力で乗り切ったら、次の日には絶対美味いもの食べに行く!」


鏡の前でそう自分に言い聞かせた人影は静かに明日の配信に向けて支度するのであった。

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