↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
99/106

99. アルマ宮編(44) 宮殿

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

アルマ宮の総司令官副官執務室で、アニスは机に向かい、ヴィレンスから報告を受けていた。


「ニアオーリはまだ生きているか?」


「生きています」


「おかしくなってないだろうな?」


「少なくとも、不穏な行動の報告はありません」


「まあ、昨日の今日だからな」


アニスは小さく息をつき、机の上の書類に目を落とした。


昨日の祝賀会でアニスが読み上げた、ソルト伯爵の功績を称える挨拶の原稿だった。


「それにしても、ソルト卿も東部統監でありながら大それたことをしたものだ。陛下に対する背信だ。この埋め合わせは必ずしてもらう」


アニスは顔を上げ、正面を睨んだ。


「本物のカシュー・ソルトはどこに行ったかわかったか?」


「手を尽くしていますが、まだわかりません。ここ最近ではなく、どうやら数年前から入れ替わっていたようです。手がかりが錯綜しています」


「絶対に探し出せ」


「はっ」


ヴィレンスが短く答えた。


アニスは書類を机に置いた。


「ミリスとペルラ様は?」


「アルマ宮を出たあと、ソルト伯爵邸に立ち寄り、その後、先ほどカウプテ邸に入りました」


「そうか。ペルラ様は落ちた男を気にしていたから、ミリスに救出を頼んだはずだ。もしミリスが来たら、こっそり入れてやれ。好きに連れて行かせろ」


「はっ」


アニスは椅子の背にもたれ、少し考えた。


「しかし、突然聞いて、ミリスも困っているだろうな。カウプテ様は落下機構を知っているんだろうか?」


「わかりません」


「アルマンディンの王族しか知らなかったと聞いたことがあるが……。カウプテ様が知らなかったら、ミリスが助けに来ることはないだろうな」


アニスはしばらく黙っていた。


ヴィレンスが口を開いた。


「ミリスが今日中に来なかった場合はどうしますか? 何かこちらで手を打ちますか?」


「……明日までミリスを待つ。ミリスでなくてもいい。誰かを待つ」


「明日も来なかった場合は?」


アニスは立ち上がって、窓を開けた。


アルマ宮の建物と庭園がよく見えた。


「……いずれにしても、駐留軍が自ら地下牢の扉を開けることはない」


風が吹き込んで、重いカーテンが少し揺れた。


「はっ。承知しました」


アニスは昨日の原稿を小さく破くと、楽しそうに撒いた。


「アルマ宮には落とし穴も地下牢もない。あるのは、美しい宮殿だけだ」


風が渦巻き、二人の上と窓の外に紙吹雪が舞った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。