94. アルマ宮編(39) 人影
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
「ペルラ様、起きられますか?」
ランに手を借りて、ペルラはゆっくりと体を起こした。
「ええ。ありがとう」
差し出された水を飲むと、ぼんやりしていた頭も少しすっきりした。
「ご気分はいかがですか?」
「もう大丈夫よ」
ペルラが笑うと、ランはほっとしたように息をついた。
「少ししましたら、夕食か、お風呂になさいますか?」
「そうね……」
あまりおなかは空いていなかった。
ペルラは窓の方を見た。
「少し、外の空気を吸いたいわ」
ペルラはランに支えられながらベッドを降り、窓際まで歩いた。
ランが窓を開けた。
冷たい夜風が頬に触れる。
「ああ……気持ちいい」
アルマ宮の建物が、暗闇の中に大きく広がっていた。
ペルラのいる階と、そのすぐ下には、まだ明るい窓がいくつも並んでいる。
けれど、さらに下の階はほとんどの明かりが消え、夜の闇に沈んでいた。
ペルラは何気なく、斜め下の窓へ目をやった。
明るい窓の中に、人影が見えた。
――あれ?
ペルラは目を凝らした。
距離があるので、顔まではよく見えない。
けれど、その姿を見た瞬間、胸が高鳴った。
「ミリス様ー!」
思わず声を上げ、大きく手を振った。
窓の向こうの人影が動きを止めた。
こちらを見上げたように見えた。
そして、その人も手を振った。
ペルラは一生懸命振り返した。
「ペルラ様! あまり身を乗り出しては落ちてしまいます」
ランが慌ててペルラの体を支えた。
「あっ……」
ペルラは我に返り、窓枠をつかんだ。
もう一度、向かいの窓を見る。
やはり遠くて、顔ははっきり見えない。
――別人だったかしら。
でも、呼んだら応えてくれたもの。
きっとミリス様だ。
そう思うと、胸の奥が締め付けられた。
ミリス様が、今、このアルマ宮にいる。
――会いたい。




