86. アルマ宮編(31) 返事
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
第三港湾のミリスの元へ、二通の知らせが届いた。
一通は、ムーンストーン王都にいる父、ヘーゼル侯爵からだった。
ミリスは静かな家で手紙を開いた。
王宮の御前会議に呼び出され、ペルラのことを聞いたという。
自分が父へ送った手紙が届くより先に、アルマ宮からムーンストーン王宮へ知らせが届いていたらしい。
――遅かったか……。
ミリスはため息をついた。
父上はどれほど驚いただろう。
申し訳ない。
さらに読み進める。
ヘーゼル侯爵家が、ペルラの件について王家への抗議を検討していることになったらしい。
――大事になってしまった……。
ミリスはいったん手紙を机に置いた。
しかし、落ち込むのも違う気がした。
――そもそも、発端は僕ではないし……!
駐留軍の制服に身を包んだ美貌の王子が、脳裏をよぎった。
手紙には、ペルラの兄のベルデに説明と謝罪に伺ったことも淡々と書かれていた。
ミリスは、読んでいるだけなのに緊張した。
――婚約破棄にならなくてよかった……。
ミリスは大きく息を吐いた。
――ありがとうございます、父上。
見慣れたヘーゼル侯爵家の印章が、無性に懐かしかった。
もう一通は、アニスからだった。
指定の日にペルラを迎えに来るように、と書かれていた。
「……迎え?」
ミリスは思わず手紙を持ち直した。
もう一度、最初から読む。
間違いない。
ペルラを迎えに行ける。
ミリスは言葉にならない声で叫んだ。
◇
ミリスは、以前から相談していた北部統監カウプテに、アニスの手紙を報告した。
そこで、迎えに指定された日が、アルマ宮で行われる勲章授与式の翌日だとわかった。
カウプテは、その勲章授与式の祝賀会に出席する予定だった。
そこで二人は相談し、ミリスがカウプテの同伴者として祝賀会に出席することにした。
そうすれば、一緒にアルマへ向かうことができる。




