83. アルマ宮編(28) 手紙
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
アルマンディン、アルマ宮。
その上層階の総司令官副官執務室で、アニスは届いたばかりの手紙の封を切った。
アニスはムーンストーン王宮とのやり取りに、特別な速達を使っていた。
少し離れたところには、ヴィレンスが立っている。
「来た来た」
アニスは封筒から手紙を取り出した。
「ヘーゼル侯爵家が、現在の状況について王家への抗議を検討しているそうだ。
検討ね、検討」
手紙を読みながら、楽しそうに笑った。
「陛下から、ペルラ様を早くミリスの元へ帰すように、とのお言葉もいただけた」
アニスは手紙をヴィレンスに渡した。
そして立ち上がると、勢いよく窓を開けた。
心地よい風が、執務室へ流れ込んできた。
アニスは深呼吸した。
「最近、アルマも安全だしな!」
アニスは満面の笑みで振り返った。
「なあ、ヴィレンス?」
「…………」
ヴィレンスは手紙を読み終わると、机の上に無言で置いた。
アニスは机へ戻ると、手紙にもう一度目を通した。
「ミリスにも、迎えに来るよう連絡しないとな」
少し考えてから、小さく笑った。
「まあ、あいつは連絡したら即来そうだからな。こっちの準備が全部終わってからにするか」
アニスは上機嫌で手紙を畳んだ。
「迎えに来たのに帰せません、じゃ面倒だしな」
椅子から立ち上がる。
「よし! そうと決まったら、総司令官殿下のところへすぐ伺わないとな」
扉へ向かいながら、後ろを振り返った。
「行くぞ、ヴィレンス」
ヴィレンスは窓を閉めた。
二人は副官執務室を出た。
アニスは足早に廊下を進んでいったが、不意に立ち止まって、後ろを振り返った。
「なんか、お前、歩くの遅くないか?
近衛最強の名が泣くぞ?」
ヴィレンスが静かに答えた。
「……今は総司令官護衛隊所属です」
アニスは声を上げて笑った。
二人はそのまま、総司令官執務室へ向かって歩いていった。




