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70. アルマ宮編(16)ダンス

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

夕方、仕事を終えたジュニパーが戻り、ペルラは一緒に夕食を取っていた。


話が途切れたところで、ペルラは口を開いた。


「あの……」


「うん?」


「あの、私、いつ第三港湾に帰れるんでしょうか……?」


ジュニパーがペルラを見る。


「ミリス様にお手紙を出しても返事がありませんし、ランさんに訊いても、よくわからなくて……」


ランは、今ペルラの身の回りの世話をしている侍女だった。


ジュニパーは少し考えた。


「なるほど……」


そして、後ろに控えていたヴィレンスを見た。


「ヴィレンス。どうしてペルラは第三港湾に戻れないんだっけ?」


その隣に立っていたタロウは、思わずジュニパーを見た。


――何だ、この質問は?


アルマに戒厳令を出したのは、総司令官のジュニパー様だ。


「はっ。アルマに戒厳令が出ているためです」


ヴィレンスは無表情で答えた。


「そっか」


ジュニパーはペルラへ向き直った。


「ペルラ、戒厳令がまだ出てるみたい……」


――いやいやいや。戒厳令を出しているのは、ジュニパー様だよな?


タロウは混乱した。


「そうなんですね……」


ペルラはうつむいた。


「帰りたいよね」


ジュニパーは静かに言った。


「はい……」


「ペルラの通行許可が出るか、聞けたら聞いてみるね」


タロウはさらに混乱した。


――誰に聞くんだ? 通行許可の最終的な判断をするのは、総司令官だぞ?


ペルラが顔を上げた。


「えっ、聞いてくださるんですか?」


「うん、だってペルラのためだもの」


ペルラの顔が輝いた。


「ありがとうございます!

ジュニパー様は本当にお優しいですね!」


ジュニパーは微笑んだ。


ペルラは安心した表情で、グラスに口をつけた。


「今日は昼間、何してたの?」


ジュニパーが尋ねた。


「お借りした本を読んでいました」


「何読んだの?」


「『百時間の孤独』です」


「ああ、三世代にわたってダンスの相手が見つからない話?」


「はい。とてもおもしろかったです」


「ダンスと言えば、僕、実は先生以外とは、あんまり踊ったことないんだよね」


「そうなんですね」


確かに、ジュニパーはムーンストーン王都にいた頃、ほとんど舞踏会に出ていなかった。


「僕、誰かと踊ってみたいな」


ジュニパーはペルラを見た。


「えっ?」


ペルラは戸惑った。


「それは……私ではない方が……」


ペルラは、侍女のラン、続けて護衛の二人を見たが、三人とも目を合わさず微笑を浮かべていた。


「あの……」


ジュニパーが少し首を傾げた。


「ペルラは僕と踊りたくない?」


「えっ?! いえ、そんな、踊りたくないなんてことはなくて……」


「じゃあ、僕と踊ってくれる?」


「でも、私、ダンスが下手で……ジュニパー様の足を踏んでしまいます」


ペルラは困った表情を浮かべた。


「うん、知ってる」


ジュニパーは小さく笑った。


「どこかでご覧になったんですか?」


「前に自分で言ってたよ?」


「やだ……」


ペルラは頬に手を当てた。


「大丈夫。一緒に練習しよう」


「でも……」


「僕、ペルラと踊りたい。ダメ?」


「ダメというわけではないのですが……」


ジュニパーは肩を落とした。


「こんなに申し込んでも断られちゃうなんて……」


ため息をついた。


「こ、断ってないです!」


ペルラは慌てた。


「お、踊りましょう?」


ペルラは不安そうにジュニパーの顔を覗き込んだ。


ジュニパーが顔を上げた。


「そう? いいの?」


「はいっ」


ペルラは元気いっぱい答えた。


「じゃあ、僕と踊りたいって言って?」


「踊りたいです!」


「名前を呼んで」


ペルラは思わず笑った。


「名前ですか? いつも言ってるのに……」


「お願い。ペルラの声で何度も聞きたいんだよ」


ジュニパーは優しく微笑んだ。


「そうですか? なんか緊張します……」


ペルラはソワソワと手を動かした。


「僕はペルラと踊りたい。ペルラは?」


ジュニパーはペルラの目を見つめた。


「私も……ジュニパー様と踊りたいです……」


ペルラの声が段々小さくなった。


「照れてる?」


「だって……何だか恥ずかしくて……」


「あはは! かわいいね、ペルラは」


ジュニパーは嬉しそうに笑うと、グラスに手を伸ばした。

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