↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/101

7. ムーンストーン王都編③ 休日

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

アルマンディン領、第三港湾。


休日の朝、ペルラが目を覚ました時には、いつもよりだいぶ遅い時間になっていた。


窓の外では、鮮やかなブーゲンビリアの花が風に揺れていた。


階下へ降りると、ミリスはすでに起きていた。


二人は朝食を食べてから、以前ミリスがフルーツタルトを買ってきた店へ行ってみることにした。


第三港湾の通りは、休日で人が多かった。


店の前まで行くと、入口には行列ができていた。


ペルラは立ち止まった。


「いっぱいですね」


「そうだね」


ミリスも少し残念そうに店内を覗いた。


空いている席は一つもなさそうだった。


「今度にしましょう」


二人はそのまま近くの公園へ向かった。


公園の中央には大きな噴水があった。


しばらく二人で噴水を眺めた後、また少し歩く。


ペルラはだんだん疲れてきたので座ろうとしたが、公園のベンチは埋まっていた。


ミリスは辺りを見回した。


「……今日はどこも混んでるな」


「休日ですものね」


少し先に、小さな飲み物の店が見えた。


「あそこに入ってみますか」


二人は店へ入った。


店のメニューは、店主のおすすめのミックススムージー一種類だけだという。


二人はそれを頼んだ。


しばらくして出てきたグラスを見て、ペルラは静かに言った。


「茶色い……」


ミリスもグラスをじっと見る。


「……何が入ってるんだろうね」


「果物……ですよね?」


「そのはずだけど」


少々泡だった茶色いドロドロの液体を、ミリスは勇気を出して一口飲んだ。


「あっ!」


ミリスが声を出すと、ペルラが心配そうにミリスを見た。


「ミリス様?」


「おいしい。おいしいよ!」


ミリスが笑った。


「本当ですか?」


ペルラも飲んだ。


「……おいしい」


二人は顔を見合わせ、笑った。


◇


夜は、ミリスが予約していたレストランへ行った。


窓の向こうには第三港湾の夜景が広がっていた。


港に並ぶ灯りが海面に映り、遠くには船の明かりも見える。


「すてきですね」


ペルラが窓の外を眺めていると、ミリスが小さな箱を取り出した。


「ペルラ」


「はい」


ペルラはミリスを見た。


「これ、よかったら」


ペルラは箱を受け取った。


中には、小さな銀の耳飾りが入っていた。

片耳用の飾りだ。


赤銅色の宝石が一粒ついている。ミリスの髪と瞳の色だ。


「わあ、きれい!」


ペルラは耳飾りをうれしそうに少し眺めると、耳につけた。


「ありがとうございます」


「気に入った?」


「はい。とっても」


ペルラが笑うと、ミリスもほっとしたように笑った。


「実は、僕のもあるんだ」


ミリスはもう一つ、小さな箱を取り出した。


こちらも同じ銀の意匠だったが、ついている宝石は濃い紫色だった。

ペルラの瞳の色である。


「色違いですか?」


「うん」


ミリスも耳飾りをつけると、ペルラを見た。


ペルラの顔元で耳飾りがきらきら光っていた。


婚約が決まってから、ムーンストーンを発つまでの短い間に、ミリスが急いで用意したものだった。


◇


その日の夜。


ペルラがいる二階から物音がしなくなってしばらくしてから、ミリスは静かにベッドから起き上がった。


クローゼットの奥には、まだ荷解きの終わっていない木箱が二つほど残っていた。


昼間、ナズナに言われたことを思い出す。


――あれ、どうしますか?


ミリスは月明かりの中で、木箱を開けた。


小さな箱が入っていた。


上等な布を解くと、中から一つの茶碗が出てきた。


側面には、金色のバサルク王家の紋章が入っている。


「あった。これか」


ナズナはバサルク王国に親戚がいるため、王家の紋章を知っていた。


ペルラがつい最近まで、バサルク王太子と婚約していたことも知っていた。


それでミリスに確認したのだ。


ミリスはしばらく黙って眺めた。


――なんのために、これをペルラに渡したんだろう。


バサルクを忘れないでほしい、という意味だろうか。


だが、王太子との婚約を解消したばかりなのだ。


忘れようとして、簡単に忘れられるような出来事でもないだろう。


これはペルラの物だ。


勝手に処分する気はなかった。


しかし、ペルラが見たい物なのか見たくない物なのかもわからない。


それに、正直なところ、今はあまり見せたくなかった。


かといって、自分の部屋にしまい込むのも違う。


ミリスは茶碗を丁寧に布で包み直し、箱へ戻した。さらに木箱に入れる。


台所へ向かうと、食器棚を開けた。


ミリスは脚立を持ってくると、食器棚の一番上の段の奥の方へ、木箱を押し込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。