61. アルマ宮編⑦ ヴィレンスの部屋
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
昼食を終えると、フェンネルはヴィレンスの部屋へ向かった。
上階へ続く階段を上がると、廊下の入口には警備兵が立っていた。
フェンネルは軽く敬礼し、その前を通る。
この階には、総司令官や副官をはじめとする上級将校の部屋が並んでいた。
廊下の奥、ジュニパー総司令官の執務室の前には、タロウとジロウが立哨している。
二人はフェンネルに気づいた。
そして、ほとんど同時に妙な顔をした。
「……っ」
フェンネルは思わず吹き出した。
――立哨中は隣の顔なんて見えないはずなのに、なんで二人ともやることが変顔なんだ。
フェンネルは両手で顔を覆った。
そのまま二、三秒、じっと立っていた。
やがて手を下ろすと、表情を引き締めた。
ヴィレンスの部屋の前に立ち、扉をノックする。
「フェンネルです」
「入れ」
中からヴィレンスの声がした。
フェンネルは扉に手をかけた。
しかし、開かない。
「あ」
小さく声が出た。
上級将校の部屋は、登録された星の蔦でなければ開かない。
フェンネルは今、来賓用の指輪を着けていた。
「すみません。星の蔦がなくて、扉を開けられません」
少しして、扉が内側から開いた。
「そうだったな。入れ」
「はっ。失礼します」
フェンネルは部屋に入った。
ヴィレンスはフェンネルを見ると、すぐに口を開いた。
「話は聞いた。今の今だ。処分はまだ決まっていない」
フェンネルは黙って続きを待った。
「私は、お前がムーンストーン本国の地方方面軍に移れるよう、かけあおうと思う」
ヴィレンスの声が穏やかだった。
特別研修中は時に鬼気迫る口調であったのに。
「私にできることは、そこまでだ」
「はっ」
「アルマ宮に部屋を準備した。追って知らせがあるまで、その部屋で過ごせ」
「はっ」
フェンネルが敬礼した。
ヴィレンスも敬礼を返した。
近衛出身らしい、美しい身のこなしだった。
タイトル変更を検討中です。
変更した場合もしばらく旧タイトルを併記します。




