59. アルマ宮編⑤ アニス
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
使節団の一行は、予定通りアルマ宮へ到着した。
アルマ宮に入ると、まず使節団長のミリスだけが副官執務室へ通された。
部屋には総司令官の副官であるアニス・アデュラリアが座っていた。
その後ろに総司令官護衛隊のヴィレンスが立っていた。
ミリスは、バサルク王国での交渉結果を順に報告した。
一通り聞き終えると、アニスは手元の書類を閉じた。
「ご苦労様」
「いえ……」
アニスはニヤリと笑った。
「……色々あったな?」
「ええ……」
「君に任せてよかったよ。何とかうまく形になったんじゃないか?」
「ありがとうございます」
ミリスは微笑んで、頭を下げた。
アニスは椅子の背にもたれた。
「公にしないと言っても、人の口に戸は立てられない」
ミリスは黙ってアニスを見た。
「今にアルマンディン全土に噂が広がるだろう。本当か嘘かわからない話がな!」
アニスは楽しそうに笑った。
「ま、予想外のことは起きるものだ」
アニスは椅子の背から身を起こすと、机の上で手を組んだ。
ミリスは軽く頷いた。
アニスは少し間を置いた。
「……私もフェンネルがこんなことをするとは、驚いて言葉が出ないよ。そうだよな? ヴィレンス」
アニスはヴィレンスを振り返った。
「はっ」
ヴィレンスは、いつも通りの無表情で、短く答えた。
ミリスにも、アニスの言いたいことはわかった。
この件は、フェンネルが独断で起こしたこととして扱うのだ。
たとえフェンネルが誰かの指示を受けていたとしても、それは表には出さない。
「どうせ広まるなら、駐留軍に都合がいい話であってほしいよな? ヴィレンス」
「はっ」
再び、ヴィレンスは短く答えた。
アニスは満足そうに微笑んだ。
「ミリス、ありがとう。また頼む」
「また……?」
思わず聞き返すと、アニスは淡々と言った。
「君はもうしばらくアルマンディンにいるんだろう?」
「……はい……」
「では、後ほど総司令官執務室で会おう。呼ばれるまで控え室で待っていてくれ」
アニスは立ち上がり、敬礼した。
「はっ」
ミリスも姿勢を正し、敬礼を返した。




