58. アルマ宮編④ 活躍
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
騒ぎが収まると、フェンネルとリナールは二階へ戻った。
リナールがミリスたちの部屋の前で声をかける。
「ミリス様。終わりましたよ〜」
しばらくして、机を動かす音がした。
ミリスが扉を開けた。
その後ろからペルラが少しだけ顔をのぞかせた。
「いやあ、フェンネル大活躍でした。フェンネルがサッと三人倒して、守ってくれましたよ」
「いや、そんな……」
フェンネルはリナールの後ろで、屈強な体を少し縮こめた。
ミリスは笑った。
「フェンネル、ありがとう。よくやった」
「はい」
フェンネルは小さな声で言うと、頷いた。
強張っていた表情が、ほんの少し緩んだ。
ペルラは、ミリスの後ろからフェンネルを見ていた。
◇
リナールが椅子を戻しながら言った。
「こういう時のために、パセリ家の旗でも借りてくればよかったっすね。目立つところに立てとけば、賊も来なかったかも」
「リナール、ムーンストーン王立軍の誇りは……?」
「ないっす!」
堂々と答えるリナールを見て、ミリスはため息をついた。
「思ったんですけど、次にこういうことがあったら、俺が後ろでペルラ様を守るんで、ミリス様はフェンネルと前っていうのはどうです?」
「なんでだ? 絶対ダメ」
ミリスは即答した。
「えっ」
「僕はペルラのそばにいる」
「いや、なんでって……戦力バランス的にですよ。ミリス様の方が俺より強いですよね?」
「そんなことないよ」
ミリスはにこやかに答えた。
「え? 普段の訓練の時――」
「そんなことはないんだ」
「え? グレン様も、ミリス様の方が俺より――」
「リナール、いつも感謝している」
ミリスは笑顔のまま、リナールに詰め寄った。
「まさか侯爵家の跡継ぎに、お前の護衛をさせるつもりじゃないよな?」
ミリスの影がリナールに落ちた。
「ひいいい!」
リナールは後退りした。
ペルラがミリスの腕にそっと触れた。
「やだ、ミリス様ったら。リナール様が困ってますわ」
ペルラが笑った。
「冗談だよ。ペルラの隣にいたくてさ」
ミリスはペルラの方を向いて微笑んだ。
「ミリス様……」
ペルラは少し頬を赤らめて、ミリスを見つめた。
「……冗談? 冗談っていう目じゃなかったっすよ?」
リナールはフェンネルを振り返った。
「なっ、フェンネル?」
フェンネルは目をそらした。




