45. バサルク王国編(25) 夕食
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ペルラとオーニチェが夕食を終える頃には、雨はだいぶ弱くなっていた。
二人は向かい合って、お茶を飲んでいた。
食卓には、小さな焼き菓子が何種類か並んでいる。
ペルラは一つつまんで、嬉しそうに笑った。
「おいしい!」
「口に合ってよかった」
オーニチェも一つ取った。
「ディアバス様は、お菓子を作るのが上手でした。昔から、いろいろ作ってもらったんです」
ディアバスはオーニチェの弟だが、長い間ムーンストーン王都のベトーラ伯爵家で暮らし、ペルラと兄弟のように育った。
「そうか」
オーニチェは微笑んだ。
「ディアバスは料理が得意らしいな。バサルクにいる間に、もっと作ってもらえばよかったかな?」
ペルラがオーニチェと婚約してバサルク王宮に滞在していた頃、ディアバスも王宮で過ごしていた。
しかし、十数年ぶりの一時帰国で忙しく、のんびり料理をする余裕はなかった。
「オーニチェ様は、食べる専門ですか?」
「まあ、そうだな」
ペルラは楽しそうに笑った。
「ミリス様も甘い物が好きなんですけど、食べる係です。オーニチェ様と一緒ですね」
「そ、そうだな……」
オーニチェはお茶を一口飲んだ。
ペルラはもう一つ焼き菓子を取ろうとして、ふと手を止めた。
「ミリス様も、夕食を食べているでしょうか?」
「ん?」
「フェンネル様とお話しするのが忙しくて、食べていなかったらどうしましょう?」
ペルラの顔が心配そうに曇った。
オーニチェは優しく答えた。
「……まあ、それはないだろう」
フェンネルは今頃、香煙で眠っているはずだ。
「でも……」
ペルラは菓子をいくつか小皿に乗せた。
そして、そのまま小皿を持ち、立ち上がりかけた。
「私、心配です。このお菓子をミリス様に届けてきていいですか? このお菓子、おいしいですし! ちょっと様子を見てきます」
「ペルラ、待ちなさい」
オーニチェがすぐに止めた。
「はい?」
「ちょっと落ち着いて。まず座りなさい」
ペルラは素直に椅子へ戻った。
「ミリスを心配する気持ちはわかった。だが、ペルラがミリスの部屋まで行く必要はない。ミリスにこちらへ来てもらえばいい」
オーニチェは穏やかに微笑んだ。
「こちらの部屋の方が警備も多いし、広いしな」
ペルラは部屋を見回した。
「それもそうですね!」
オーニチェは近くに控えていた侍女を呼んだ。
「ミリスをここへ呼んでくれ。ペルラが会いたがっていると伝えてくれればいい」
「かしこまりました」
侍女が部屋を出ていった。
「私は仕事が残っているので、そろそろ戻る」
オーニチェは席を立った。
「これからまたお仕事ですか?」
「ああ、少しだけな。
ペルラも、あまり遅くならないうちに休むように」
「はい」
ペルラは笑った。
「おやすみなさい、オーニチェ様」
「おやすみ、ペルラ」
オーニチェは部屋を出ていった。




