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42. バサルク王国編(22) 星の蔦

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

フェンネルが眠っている部屋の隣では、ピレイと守備兵たちが待機していた。


やがて、扉が開いた。


守備兵が二人、部屋に入ってくる。


一人が、両手に銀色の何かを持っていた。


「ピレイ様。外してきました」


フェンネルの左腕を覆っていた、星の蔦だった。


細い銀線が複雑に絡み合い、そこに小さな青い宝石がいくつか埋め込まれている。


しかし、銀線はところどころ不自然に曲がっていた。


守備兵が申し訳なさそうに言った。


「外し方がわからなくて、少し壊してしまいました」


「構わない。どうせ、これから壊すだけだ」


ピレイは星の蔦を見た。


「外すまでは冷たかったんですが、無理に外したら、ほのかに温かくなってきました」


ピレイが眉をひそめた。


「それは大丈夫なのか?

いつまでも手に持ってないで、早く置け」


「はい」


部屋の中央には、大きな陶器の鉢が用意されていた。


守備兵は、星の蔦をその中へ置いた。


守備兵の一人が尋ねた。


「星の蔦は有名ですが、一体どういう機械なのでしょう?」


「詳しいことは、私も知らない」


ピレイは腕を組んだ。


「だが、ムーンストーンでも軍人しか身につけていない装備だ。武器と考えて差し支えないだろう」


「武器……」


守備兵たちは、改めて星の蔦を見た。


灯火を受けて、銀線と青い石がきらきらと輝いている。


武器というより、精巧な装身具のように見える。


ピレイは言った。


「破壊方法の言い伝えを、アルマンディン人から聞いたことがある。戦争当時の方法だ。今の星の蔦にも通じるかはわからない」


ピレイは別の守備兵を見た。


「持ってきたか?」


「はい」


守備兵が容器を持ち上げた。


中に入っているのは、黒に近い濃い紫色の液体だった。


バサルクの海上油田で産出する、紫原油だった。


ピレイが鉢を指した。


「かけろ」


守備兵が慎重に容器を傾けた。


紫色の液体が、星の蔦の上へ流れ落ちる。


やがて、銀線の一部が、ゆっくりと黒ずみ始めた。


「おお……」


皆が息を呑む。


黒ずみは次第に広がっていく。


細い銀線が形を失い、崩れるように液体の中へ沈みながら溶けていった。


「もう少しかけろ」


守備兵がさらに紫原油を注いだ。


黒ずんだ銀色の膜が表面に張り、それがゆっくり裂けていく。


下から、奇妙な色が現れた。


絵の具のようなサーモンピンクとエメラルドグリーンが、マーブル模様になっていた。


近くの守備兵が顔をしかめた。


「少し臭いますね」


「混ぜてみろ」


守備兵は長い箸を取り、鉢の中をそっとかき混ぜた。


液体は徐々にまとまり、ぷるぷるとした柔らかい塊となった。


ピンクと緑が複雑に入り混じっている。


時折、小さな泡が浮かんでは表面でプチッとはじけた。


「……全く別物になったじゃないか」


守備兵たちは驚いた。


ピレイは鉢の中を見下ろした。


「言い伝え通りだったな」


星の蔦は原形を失い、異様な姿に変わり果てていた。


その表面に浮かぶ青い宝石だけが、かつてフェンネルの星の蔦であった名残だった。

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