36. バサルク王国編(16) 約束
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
ペルラの発言を受けて、緊急の会議が開かれた。
会議を終えて王太子執務室に戻ると、オーニチェは椅子に座り、背もたれに体を預けた。
「たくさん話したら、喉が渇いたな」
ピレイの笑顔が引きつる。
「オーニチェ様……先ほどペルラ様と何か約束なさっていましたよね?」
オーニチェは目をそらした。
「それは……あれだ、言葉の綾みたいなものだ」
今、王宮の物を飲み食いしない方がよいことは、オーニチェもわかっている。
しかし、喉は渇く。
「一国の王太子たるもの、言葉に責任を持っていただきませんと」
ピレイはオーニチェの前に、書類の束をドンと置いた。
オーニチェは横の机を見た。
水差しがある。
「その、朝から何杯も飲んでる、そこの水差しはいいんじゃないか?」
ピレイも水差しを見た。
オーニチェはすぐに杯へ、なみなみと水を注いだ。
「……少しだけ、少しだけにしてくださいよ! 念のため」
ゴクゴクゴクッ!
オーニチェは一気に飲んだ。
「ん? なんか言ったか?」
「……何でもありません」
ピレイは水差しを王太子から遠ざけた。
◇
王宮では厨房への出入りが確認され、配膳に関わる者たちも足止めされた。
新しく王太子のもとへ運ばれてくる食事や飲み物は、すべて止められた。
当然、昼食も来なかった。
昼を過ぎた頃、オーニチェは書類から顔を上げた。
「ピレイ」
「はい」
「腹が減った」
グウウウ〜。
オーニチェのお腹が鳴った。
「昼食を食べていませんからね」
「厨房の確認はいつ終わるのだろうか?」
「どうですかねえ」
オーニチェは部屋を見回した。
その視線が、隅に置かれた籠で止まった。
籠には、ピレイが家から持ってくる弁当が入っている。
当然、王宮の厨房は通っていないし、配膳係も触っていない。
「何だか、あの籠からおいしそうな香りがする」
「……気のせいでしょう」
グウウウ〜。
オーニチェのお腹が再び鳴った。
ピレイはため息をつくと、籠を持ってきて、オーニチェの前に置いた。
「すまないな。いいのか?」
オーニチェはピレイの返事を聞くより先に食べ始めた。




