3. 第三港湾編③ タルト
夕方、ミリスが帰ってきた。
「ただいま」
「おかえりなさい」
ペルラがドアを開ける。
ミリスは手に箱を持っていた。
「フルーツタルト買ってきたよ」
「えっ! ありがとうございます。私、フルーツタルト大好きです!」
「知ってる」
ミリスは笑った。
「今日ね、職場の人に、おいしいケーキ屋さん聞いたんだ。そこで買ってきたんだけど、よかったら今度食べに行こうね」
「はい」
◇
夕食の後、ペルラとミリスは食卓でフルーツタルトを食べていた。
「このタルト、とってもおいしいです」
「よかった」
頬張るペルラを見て、ミリスが微笑んだ。
「ペルラはいっぱい食べないとね」
「頑張ります。
でも、ここにはおいしいものがたくさんありそうですから、きっとすぐに体も戻りますわ」
「そうだね」
ミリスは頷いた。
「そういえば、ミリス様のお好きなものって何ですか?」
ペルラは二切れ目のタルトに手を伸ばし、ふと首を傾げた。
「私ったら……自分の話ばっかりで……」
ペルラは急に恥ずかしくなった。
なぜ今まで聞いていなかったのだろう。
以前、ムーンストーン王都で初めて会った頃に聞いたような気もするが、覚えていない。
「僕の好きなものね……」
ミリスはペルラを真剣な目で見つめた。
そして、なぜか急に笑い出した。
「ミリス様?」
「ごめん、ごめん」
――ここで「ペルラ」なんて言ったら、きっと警戒される。慎重にいかないと。
ミリスは何事もなかったように紅茶を一口飲んだ。
「読書とお菓子かな」
その瞬間、ペルラは以前にもその言葉を聞いたことを思い出した。
バサルク王国からアルマンディン領へ来る船でも話はしたが、ペルラは軽い船酔いが続き、あまり会話に集中できなかった。
こうして二人でゆっくり向き合って話すのは、ペルラが王立学校に入学する前が最後だったので、ずいぶん久しぶりだった。
「私と一緒ですね」
ペルラは微笑んだ。
これから、ゆっくり思い出していけばいい。
知らないことは、これから話せばいい。
「そうだね」
ミリスも微笑んで、もう一口紅茶を飲んだ。




