26. バサルク王国編⑥ 調査
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
翌日から、使節団は救荒種の調査を始めた。
最初に案内されたのは、バサルク王家が管理する種子庫だった。
乾燥した室内には棚が並び、大小さまざまな袋や木箱が、種類ごとに収められている。
「ここに保管しているものは、自由に確認してもらって構わない」
オーニチェはミリスに言った。
「ありがとうございます。調査にご協力いただき、感謝いたします」
ミリスが頭を下げると、オーニチェは軽く頷いた。
「私は執務がある。あとはピレイに任せる。必要なものがあれば、彼に言ってくれ」
「承知しました」
オーニチェが去ると、ピレイが使節団を種子庫の奥へ案内した。
保存されている種は多かったが、使節団が探している救荒種に該当するものはなかった。
数日後には穀物庫と、農業関係の記録を保管する部屋も調べた。
バサルク側は、求められた資料を次々と出してきた。
ただし、古い記録は旧アルマンディン大陸王国の様式で書かれていた。
軍政部から同行した会計官が、一冊の帳簿を開いたまま眉を寄せた。
「これは……何の項目ですか?」
ピレイが覗き込む。
「アルマンディン式ですね。今のムーンストーンの会計とは、分け方が少し違います」
「数字は読めるんですが、何の出入りなのかがわからないんです」
「昔の帳簿に詳しい者を呼びましょう」
ピレイは近くにいた文官へ声をかけた。
調査は、その後も続いた。
種子の受け入れ記録。
古い保存品の一覧。
穀物の出納帳。
王家が管理する農業施設の記録。
ミリスは机の上に積まれた帳簿を見た。
「……ありませんね」
軍政部の会計官も頷いた。
「少なくとも、確認した範囲にはありません」
バサルク側は協力的だったが、救荒種とその記録だけが見つからない。
ミリスはため息をついた。




