20. 誕生日
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
青い空の下、赤いハイビスカスが潮風に揺れていた。
ミリスとペルラは、並んで街を歩いていた。
「ミリス様、お誕生日おめでとうございます」
ペルラは笑顔でミリスを見上げた。
「ありがとう」
「太陽もミリス様を祝福していますね」
「そうかな?」
ミリスは笑った。
第三港湾は今日もよく晴れていた。
二人が向かっているのは、第三港湾の劇場だった。
演目は『白雪姫』。
ナズナによると、ペルラが何日も考えて紆余曲折の末、選んでくれた舞台だ。
劇場の中は、大勢の客で賑わっていた。
子連れが多いかと思ったが、大人の客も多かった。
二人は並んで席に座った。
やがて照明が落ち、舞台が始まる。
ペルラは舞台に見入っていた。
ミリスは舞台とペルラを交互に見ていた。
やがて物語は終わり、大きな拍手が劇場を満たした。
◇
家に帰ると、ペルラは居間のテーブルへミリスを案内した。
「ミリス様、どうぞ座ってください」
ペルラはにっこり笑って、椅子を引いた。
「僕、座ってていいの?」
ミリスは腰を下ろした。
「そうです。ちょっと待っていてくださいね」
ペルラは嬉しそうに台所へ消えた。
しばらくして、大きな皿を両手で持って戻ってきた。
皿には、こんがり焼けたアップルパイが載っていた。
「白雪姫を見たら、りんごが食べたくなると思って焼いておいたんです!」
ミリスはアップルパイを見た。
それから、先ほど見た劇を思い出した。
――毒りんごがのどに詰まる話だったけど……まあ、いいか。
「ありがとう。おいしそうだね」
ペルラは微笑むと、パイを取り分けた。
ミリスはアップルパイを食べた。
ペルラが緊張した表情でミリスをじっと見ていた。
「うん、おいしい」
「よかった」
ペルラはホッとしたようだった。
「ペルラが作ったの?」
「はい。ナズナと一緒に作りました。私はりんごを洗ったり、卵を割ったりしました」
ペルラは自分のパイを食べ始めた。
「そうなんだ」
ミリスも少しホッとしながら、次の一口を口に運んだ。
◇
食べ終わった頃、ペルラが小さい声で言った。
「あの……」
「どうしたの?」
「もう一つ、あるんです」
ペルラは小さな包みを持ってきた。
「お誕生日のプレゼントです」
「ありがとう。開けてもいい?」
「はい」
ミリスは包みを開いた。
白いハンカチの隅に、赤い糸で、手形のような模様と歪な丸が刺繍されていた。
「最近、近所でハイビスカスがきれいに咲いているでしょう? それと、今日見る白雪姫のりんごにしたんです」
「なるほど……」
「何をプレゼントにしたらいいか考え過ぎて、よく分からなくなってしまって」
ペルラは少しシュンとしていた。
「結局、刺繍入りのハンカチにしてしまいました。普通ですみません」
「普通が一番だよ」
ペルラが顔を上げた。
ミリスはにっこり笑って、ペルラを見た。
「それに、ペルラが僕のために刺繍してくれたんでしょう?」
「はい」
「すごく嬉しい。ありがとう」
ペルラの顔が再び輝いた。
「よかった……」
「大切にするね」
ミリスはハンカチを丁寧に上着のポケットにしまった。




