13. アルマンディン編⑤ 準備
※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。
夕方、第三港湾の家で、ペルラは居間のテーブルに広げた地図を眺めていた。
「アルマまで、二日ですか?」
向かいに座ったミリスが頷く。
「うん。カウプテ様たちと一緒に行くことになったんだ」
カウプテ・パセリは北部方面司令官兼北部統監であり、ミリスたちの上官にあたる。
「皆さんと一緒なんですね」
「その方が安全だからね」
ミリスはそう言って、手元の予定表に目を落とした。
本来なら、各自でアルマへ向かうことになっていた。
ミリスは、ペルラを連れていくこともあり、三日ほどかけて余裕を持って移動する予定を立てていた。
だが、集団行動に方針が変わった。
そのきっかけは、コンミフォラ侯爵の負傷だ。
コンミフォラ侯爵は、アルマから第三港湾へ戻る途中、襲撃を受けた。
第三港湾の駐留軍幹部には、その事実が伝えられている。
しかし、今のところ一般には伏せられていた。
ペルラにも話すことはできない。
「そうだ。イグニス様から伝言があったんだ」
ペルラがうれしそうに顔を上げた。
「イグニス様から?」
「第三港湾までは戻ってきたそうなんだけど、このままアルマンディンを発つって」
「そうなの?」
ペルラの顔が曇った。
「アルマ宮の改修工事が、思っていたより長引いて、うちの家に寄る時間がなくなったって」
ミリスは、イグニスから聞いた通りの伝言を続けた。
「ごめんね、またムーンストーン王都で会えるのを楽しみにしている、って」
「そうなのね。
広いアルマ宮の工事は、すごく大変だったでしょうね。
残念だけど、仕方ないわ」
ペルラはため息をついた。
「うん。また王都で会えるよ」
ミリスはペルラの肩を優しく抱いた。
ペルラはミリスを見て微笑んだ。
「それで……アルマまではずっと馬車ですか?」
「そうだね」
「どこで泊まるのかしら?」
「進み具合次第だろうね」
「宿は当日決めるのですか?」
「大人数だからテントになるって」
ペルラの顔がぱっと明るくなった。
「みんなでテント? 楽しみですね!」
ミリスは少し黙った。
「馬車とテントで、体が少しつらいかもしれないよ」
「そうでしょうか?」
駐留軍の人間にとって、アルマまでは二日で行ける距離だった。
だが、それは長距離移動に慣れた軍人たちの基準だ。
ミリスは以前からナズナにも相談していた。
二日間悪路で馬車に揺られ続ければ、ペルラはお尻や背中を痛めるだろう。疲れれば食欲も落ちる。
そのため、荷物には毛布とクッションを多めに入れ、果物も持っていくことにしていた。
「でも、ちょっと楽しそうですね」
ペルラは笑った。
ミリスは、地図の道を指でなぞるペルラを見つめた。
もう行くことは決まっているのだから、ペルラをあまり怖がらせてもしょうがない。
それよりも楽しみにしていてくれる方がいい。




