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103/106

103. 【閑話】報酬

※主な登場人物は、作品あらすじ欄にまとめています。

翌日。


バサルク国王は、無事にアルマの整体師に診てもらうことができた。


オーニチェとバサルク国王は、もう数日アルマに滞在するという。


カウプテも初回の付き添いを終え、ミリスとペルラもようやく第三港湾へ出発することになった。


屋敷を使用人たちが行き交い、馬車に荷物を積んでいた。


出発を前に、ペルラはオーニチェに頭を下げた。


「昨日はオーニチェ様にも、ずいぶん助けていただいたと聞きました。どうもありがとうございました」


「ああ、大したことではないよ。ニアオーリが怪我もしていなくてよかった」


オーニチェは軽く笑った。


「ミリスが一番頑張ったよ。ペルラが昼寝している間にな?」


「……私が言い出したのに、本当にすみません」


ペルラがしゅんとうつむく。


「気にするな。冗談だ。休めたのなら、よかった」


オーニチェはそう言ってから、ミリスを見た。


「まあ、私も少しは働いたよな? ミリス」


「はい、もちろん。大変助かりました」


ミリスが答えると、オーニチェは満足そうに頷いた。


「では、報酬をもらおうかな?」


「報酬……ですか?」


ペルラの表情が少し不安そうになった。


「まさか一国の王太子をつかまえて、タダ働きはさせないよな?」


オーニチェはペルラの耳元を指さした。


「その青いオパールの耳飾りをもらおうか?」


「これですか?」


ペルラは意外そうに言うと、耳飾りを外した。


アルマ宮にいる間、来賓用の銀線の指輪の代わりにつけていたものだ。


「どうぞ。ジュニパー様からの頂き物ですが」


オーニチェの手のひらに載せた。


「そうそう、これ」


オーニチェは耳飾りを一度、軽く宙へ放り上げた。


青いオパールが日の光を受けて煌めく。


落ちてきたところを片手で受け止めた。


「バサルクの海の色のようできれいだ」


そう言って、しばらく眺めた。


「もらっていいか?」


「はい、どうぞ。もうアルマ宮は出たので」


オーニチェはその場で、自分の耳につけた。


それから顔を少し傾けて、ペルラを見る。


「どうだ? 似合うか?」


「ええ、とっても」


ペルラはにっこり笑った。


「そうか」


オーニチェは満足そうに笑うと、優しくペルラを見つめた。


「では、第三港湾まで気をつけて帰れ」


「はい、ありがとうございます。オーニチェ様、お元気で」


「ああ。ペルラも元気で」


◇


ペルラは先に馬車へ向かった。


ミリスもそろそろ外へ出ようとしたところで、後ろから声をかけられた。


「ミリス」


振り返ると、オーニチェが立っていた。


先ほどペルラからもらった青いオパールの耳飾りが、耳元で光っている。


オーニチェは周囲に人がいないのを確認すると、少し声を落とした。


「どうだ? お前は、どうせこれを見たくないだろう?」


オーニチェは耳飾りを指さして、ニヤリと笑った。


――見たくないと言えば見たくないが、ペルラの耳飾りがオーニチェの手に渡るのも複雑な気持ちだ。


「……銀線がついていますが、いいのですか?」


「まあ、それはどうとでもなるだろう」


オーニチェは涼しい顔で言った。


ミリスはふいにバサルク王国での出来事を思い出した。


――フェンネルの星の蔦を破壊したのは、やはりバサルク王宮の人間だったんだろうな……。


「そんなことより、言いたいことがある」


オーニチェの表情が変わった。


――出た! 王子の『言いたいこと』!


ミリスは嫌な予感がした。


「昨日話を聞いて思ったが、ペルラだけアルマ宮に一ヶ月足止めされたってことだよな?」


「はい」


「アルマンディンは滅茶苦茶だ」


オーニチェはじっとミリスを見た。


「お前、二年でアルマンディン駐留軍をやめて、ペルラを本国に連れて帰る約束、忘れてないだろうな?」


――鋭い。鋭過ぎる。


「……あの、もちろんです。努力しております」


「努力だか何だか知らんが、バサルクから見てるからな」


オーニチェは小さく息を吐くと、腕を組んだ。


その時、廊下の向こうから、大きな声が響いた。


「ミリス、どこだー? 出発するぞ!」


足音が近づいてきた。


「あ、ここにいたのか!」


カウプテが現れた。


「もうペルラ様は馬車に乗っているぞ」


「すみません。今行きます」


ミリスが答えた。


カウプテはオーニチェを見た。


「オーニチェ、どうした? 怖い顔をして」


「別れを惜しんでいたのです。カウプテ様ほど怖い顔ではありません」


「ははは! そうか」


カウプテは笑った。


「すっかり仲良くなったところ残念だが、そろそろ行かないとな」


オーニチェは穏やかな笑みを浮かべた。


「そうですね。カウプテ様もミリスも道中気をつけて」


三人は玄関へ向かった。

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