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全5話) 2. プリクラと最後の夜



お通夜の帰りに新宿で、

タキガワくんの恋愛話を聞いた。

その時、私も思い出したことがあった。


スパイダーマンを

一緒に見に行ったときのこと。

待ち合わせ場所に行くと、

彼はクルマで来ていた。


助手席に乗ってみると 

バックミラーにふたりで撮った

プリクラが何枚か貼ってあった。


彼女? ときくと


元カノ。 といった。


別れちゃったの? どうして?


彼は元カノの話はあまりしなかった。 

したくないようだった。


別れちゃったんだったら 

これ、はがさなくていいの?


こんなのいつまでも貼ってあったら

よけいに辛くならないの?


と聞いた。


別に・・・。


私は、まだ悲しいのかと思って


自分ではがせないなら

私が、はがしてあげようか?


と、彼に聞いてみた。 


彼はそのうちはがすと思うし 

はがすときは自分ではがすから

そのままでいい。


といった。


その時、私は 

もしも彼女が帰って来てくれたら 

変わらずにいたよ。


と伝えたいのかな? と思った。


私はカナちゃんとあかりちゃんに


元カノのことを待ってるみたいだった。


と、その時のことを話した。







ある夜遅く

久しぶりにタキガワくんからメールが来た。 


今、飲んだ帰りで電車に乗ってる。って


私はもう寝るところだったから

彼が電車で寝過ごさないように 

ベッドの中でくつろぎながら 

メールに付き合っていた。


どこで飲んでたの? とか

だれと一緒だったの? とか

あしたお休みなの? とか


乗り換えのあと終電がないかも。って


そしたらタクシーだね。って返した


カラオケいかない?


無理。 もう、寝るところだから。


大崎と品川だったらどっちが近い?


品川だけどもう電車無いし

ほんとに無理だよ。


メールをいくつかやりとりしていたら

電話が鳴った。


出てみると 


品川着いたんだけど~。って 

何分で来れる?って


まったく、困った人だった。 


何で電車、降りたのよ~。 

だいたい、方角が違うでしょう? 


まさか、本気だったとは

おしゃべりに

付き合ってるつもりだったのに。


私は、もう眠りたくて


ビジネスホテルとかマンガ喫茶とか

ひとりでゆっくり

泊まったらいいじゃないの。


と言ったら


そうだけど・・そういうのはちょっと・・。


さみしそうな声になってしまった。


カラオケ行こうよ。


と、小さな声で、また同じことを言う。



もう じゃあ わかった。


と言ってしまった。


私はあきれながらも着替えて 

夜遅く出かけた。


深夜にタクシーに乗ることになったのは 

私のほうだった。


タクシーのなかで私は考えていた。


こんな真夜中に呼び出して 

いったい・・・? 

忘れていた疑問を思い出してしまうと

ほんと困るんだけど~。



待ち合わせ場所にいた彼は 

とても嬉しそうに 


ごめんね。 といった。


ごめんね。じゃないわよ~。 


いつものメンバーで飲んでたんでしょう?

どこで飲んでたの?新宿?  

反対方向じゃないの。 

何で、品川にいるのよ。

こんな時間に呼び出して。 

もう寝るところだったのに。


と彼を責めた。


責めてる間、彼は可笑しそうに笑っていて おなかをおさえていた。


もう、どうして電車を降りたのよ。

そのまま乗ってれば帰れたでしょう?


大崎止まりだったから・・・。


と言い訳をしたけど 


そもそも反対側に乗ってるじゃないの~。


私はまだ彼のことを責めていた。


彼は、おなかをおさえて 

耐えられない。というほど笑いながら


わかった。 わかった。 

もう いい? 

早く行こう。

と言った。


ちょっと~。 私の話聞いてた?


聞いてた 聞いてた。


と 全然聞いてないように答えた。


もう・・聞いてないよ・・。まったく・・。


私はあきれて、あきらめて、

それから、ふたりでカラオケに行った。



本当に久しぶりだったから 


いくつになったの? と聞いた。


27 いや 8 。と

答えた。


少し、大人になったかな?と思った。


せっかく久しぶりに会ったのに 

たいした話もしないで

ただ歌って 


歌いつづけて朝になった。 


彼はその夜 

途中から無口になってしまった。




ふたりで駅に戻った。

この朝も、無口だった。


疲れているとは思ったけど 

真夜中に呼び出しておいて 

無口って・・・。


私も無口になってしまった。


先に電車が来た彼をホームで見送った。


走り出した電車の中から 

何かを言いたそうに私を見つめてた。


見えなくなるまでまっすぐ見つめてた。


その時の目を今でもよく覚えている。




この時が彼に会った最後だった。


そう思い出すと、なんだか悔やまれて


ちゃんと、話を聞いてあげればよかった。


何を話そうとしていたの?


(つづく)

【5話の完結まで、あと3話】

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