第六章優しいヒヒ
目が覚めて、起き上がると、太陽の明かりが薄暗い洞穴は照らしていた。
すると、自分の目の前に息絶えた三匹の野鼠や様々な種類の昆虫が置かれていた。
誰だろう?
裕太は、ふと首を傾げて疑問に思った。
しかし、目の前にある食べ物に今の空腹を満たすには、食べるしかない。
裕太は、昆虫と野鼠を噛り付いた。
昆虫は、ネバネバとしてあまり美味しくはなかったが生きる為に咀嚼して飲み込んだ。
野鼠もトムソンガゼルやインパラと違い腹を満たす事は出来ないがある程度は空腹を抑える事が出来た。
食べ終えると、目の前に一頭のヒヒがいた。
ヒヒは、こちらをじっと見ていた。
裕太は、ヒヒの存在に気が付くと、慌てて一歩後ろへと下がった。
しかし、逃げる事は出来ない。
肩に傷を負っているこの状況では逃げ出す事が出来ない。
ヒヒは、静かに裕太の周りを回った。
そして、裕太が傷を負っている肩を舐め始めた。
裕太は、ヒヒに敵意がない事に安堵した。
ヒヒは、裕太の傷を舐めると、背を向けてどこかへと走って行った。
そして、数分後また戻って来た。
野鼠や昆虫を手に持って、裕太の前に置いた。
そうなのか。ヒヒが持って来てくれたのか…。優しいヒヒだな…。
裕太は、そう思うと、勢いよくヒヒが持って来た昆虫と野鼠を食べ始めた。
ヒヒは、嬉しそうな様子で裕太が食べる様子を見ていた。
裕太が食べ終えると、ヒヒは、体を摺り寄せた。
良かった…。ずっと一人だと思っていた。
でも、誰かがいると安堵していた。
このヒヒは、何ででも自分の事を気に掛けているのだろうか…。
一体なぜ…、チータを助けたいと思ったのだろうか…。
そんな事はどうでも良い…。今は、このチータに力を借りるしかない…。
そうだ…。生きて行く為には、誰かに頼らないと…。
そう思うと、裕太は、ヒヒの顔を舐めた。
ヒヒも裕太の顔を舐めた。
次第にヒヒに舐められた肩の傷も癒えてきていた。




