第五章動物園の夢
「裕太、起きなさい。起きなさい」
母の声が聞こえてきた。
裕太は、目を開けてゆっくりと起き上がった。
起きると、母が自分の目の前に立っていた。
母は、三十代くらいの年齢のような顔立ちになっていた。
髪型も白髪から黒髪になっており、顔の深いシワもなくなっていた。
裕太の顔も小学生の時の顔立ちになっていた。体型も小学生の標準体型になっていた。
「え?御袋若くなっているね?」
裕太が目を見開いて驚いた様子で首を傾げて聞いた。
「何を言っているの?今日は動物園に行く日でしょ。忘れたの?」
母がくすりと笑って首を傾げて聞いた。
「え?でも…?何で?」
裕太は、困惑していた。
あれ?自分は、交通事故で死んでチータに転生していたのに何故?人間に戻ったのは、いいけどなぜ小学生の時の自分に戻ってしまったのだろうか…。
裕太は、何がどうなっているのか分からず戸惑ってしまった。
「さあ、起きましょう」
母に起こされて、裕太は、ベッドから起きて、階段を降りて、リビングに向かった。
リビングに入ると、テーブルの上には、白ご飯と卵焼きと味噌汁と焼き鮭が置かれていた。
裕太は、久しぶりのまともな食事に嬉しくなって、かっつくように食べ始めた。
ほかほかの白ご飯と卵焼きと焼き鮭と味噌汁の香ばしい香りが朝食としての相性が抜群だった。
チータとして生きていた時は、獣の匂いが混じる生肉しか食べていなかったのであまりの嬉しさに涙が溢れてしまった。
「どうした?何で泣いている?」
父が微笑んで少し心配そうに聞いた。
父も白髪から黒髪に戻っていた。
顔の深いシワも綺麗になくなっていた。
「いや、あまりに美味しくて…」
裕太は、白ご飯を咀嚼しながら嬉しそうに言った。
白ご飯を完食すると、勢いよく味噌汁を飲み込んだ。
熱い味噌汁を勢いよく飲み込んでしまい舌が火傷してしまった。
慌てて、水を飲んで舌を冷やした。
そして、舌を大きく出して冷やそうとした。
「大丈夫?」
母が心配そうに聞いた。
「うん。大丈夫だよ」
裕太は、笑顔で頷いた。
「そう、それは良かったわ。お母さんの作ったご飯美味しい?」
母が微笑んで嬉しそうに聞いた。
「うん!美味しい!」
裕太は、大声できっぱりと言った。
「それは良かったわ…」
母は、笑顔で頷いた。
「裕太は、元気が良いから嬉しいよ。我が家のたった一人の自慢の息子だからな。頼むぞ」
父が裕太の肩を叩いて励ますように言った。
「うん。そうだな。動物園行こうね」
裕太が大きく頷いて言った。
裕太は、父と母と一緒に車で動物園に向かった。
動物園に着くと、裕太は、嬉しそうに中に入って行った。
「こら、待ちなさい」
母が慌てて追いかけた。
その様子を父は、微笑ましそうに見ていた。
園内は、小さい子供を連れた家族がいて、賑わっていた。
裕太は、シマウマやキリンや象やサイを見たりしていた。蛇やワニやペンギンも見たりした。
そして、ライオンも見た。
猿も見た。
「ハハハハハ!間抜けだ!」
猿の甲高い鳴き声を上げる姿に裕太は、クスクスと腹を抱えて笑っていた。
「こら、笑ってはいけないわ。お猿さんに失礼でしょ」
母が苦笑いして言った。
父も裕太が笑う姿に吊られて笑っていた。
「裕太、チータ見ないか?」
父が聞いた。
「見る。見る。どこにいるの?」
裕太が首を傾げて聞いた。
「あっちだよ」
裕太は、父と共にチータのいるエリアへと向かった。
チータがいる所に向かった。
チータは、動物園の売店の目の前にいた。
「うわ!かっこいい!」
裕太は、二重の檻に囲まれた地面の上で歩くチータを見ていた。
チータは、色鮮やかな黒い斑点の毛並みと細長い手足で柵の端から端まで歩いていた。
母は、裕太がチータを見ている様子を微笑ましそうに見ていた。
父は、売店でカレーを買っていた。
「裕太、カレー買ったぞ」
父が売店の前の白いパラソルが付いた白い丸いプラッスチックのテーブルにカレーを三つ置いて白い椅子に座って手招きして呼んでいた。
「いただきます!」
裕太は、手を合わせて元気の良い声で言って、カレーライスを頬張った。
「裕太は、美味しそうに食べるわね」
母は、裕太が食べる姿を微笑ましそうに見て言った。
「うん。このカレーライス美味しいね」
裕太は、嬉しそうに言った。
「裕太は、チータ好きか?」
父が真顔で聞いた。
「チータ?うーん。好きと言うよりカッコイイかな」
裕太が少し考えて言った。
「カッコイイね。チータみたいに早く走れたらどこに行きたい?」
父が興味そうに聞いた。
「…うーん。どこだろう?地球一周するとか…」
裕太がにやりと笑って言った。
「ハハハハハハ!そりゃ良いな!」
父が裕太の頭を撫でて言った。
裕太は、笑顔で頷いた。
そこで目が覚めた。
裕太は、チータの姿で洞穴の中で横たわっていた。
何だ…。夢か…。
裕太は、夢だと分かると、少し落ち込んでしまい現実に戻された事が分かると、起き上がった。
また獲物を探そうと思った。
しかし、歩いた時に肩の部分が激しく痛んだ。
またイボイノシシに牙で突かれた傷は治っていなかった。
走れない…。しかも歩く事も出来ない…。
どうすれば良い…?
裕太は、激しく動揺してしまった。
もう、ここで飢えて死ぬのか…。
動けない…チータ何て終わりだ…。
ちくしょう…。
裕太は、絶望した様子で地面に倒れ込んだ。
“キャゥゥ…ン”
裕太は、悲しい鳴き声を上げて体を丸めてうずくまった。
御袋…、親父…会いたいよ…。
裕太は、ふと寂しそうに呟いた。
助けて…誰か助けてくれ…。
裕太は、声を震わせて懇願するように心の中で呟いた。




