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45話 あらたな家族

このような拙い物語を読んでもらえて、

とてもうれしく思っています。


可能な限り続けていきたいので、

心許す限りお付き合いいただけると良いなと思っております。

今回の、ビッグラビット惨殺事件は、ワイルドコックの仕業だろう。

爪に血痕が残っていたし、ほぼほぼ間違いないと思う


ワイルドコックな何のために、ビッグラビットと戦ったのだろうか。

争う理由が考えられないが、魔物にも何かしらの都合があるのだろうか。

縄張り争いだろうか。

それなら戦う理由になるんだろうか。


ワイルドコックを連れて帰る役は兄さんか俺にしようと伝えたのだが、アイリスがどうしても引っ張って帰りたかったらしい。

頑なに譲らなかった。

しかしアイリスは本当に気分が良いのだろう、鼻歌すら歌っている。

心配しながら森を歩く俺達は気が気じゃないというのに。


けれど、ワイルドコックはとても大人しく、アイリスの後を、一切抵抗すること無く、しっかりとした足取りで着いて歩いている。

その様子は威風堂々といった感じで、誇りを持っているようだった。

しかし、他人から見たら犬の散歩みたいで面白い。

にやにやして見ていると、アイリスに怒られるからそちらの方をあまり見ないように歩いている。


俺達はようやく村へ着いた。

緊張からか、いつもより歩いている時間が長く感じられた。


「疲れたー」

「何もなかったから良かったが、本当に大丈夫なのか?」


今の所、暴れる様子は見受けられないから大丈夫だと思うんだが、穏やかな状況じゃないのは変わらない。

いつ状況が変わってしまうのか心配だ。


とりあえずだ、今回の報告のために、肉屋のおっちゃんと話さなくてはならない。

俺達は村の中央にある、肉屋に向かうことにした。

だが、村の中央を歩くという事は、村人にこの状況を見られるという事でもある。

何も起こらなければ良いのだが。


やはりというか、当たり前というか、道中、村の人に出会うたびにぎょっとされた。


危ないから今すぐ絞めるべきだとか、ギルドへ報告するべきだとか。

その度に俺達は弁解するはめになった。

理解してもらうのに、とても苦労したのだ。

当の本人は涼しい顔でその様子を見ているだけだった。

俺達はその様子にため息をつく。


「お前ら、なんだそいつは!」


例に漏れず、おっちゃんにもとても驚かれ、慌ててワイルドコックを締めようとしだした。

アイリスはワイルドコックの前に立ちはだかり、無言の抵抗を行う。

さすがのおっちゃんも、その状況で無理やりワイルドコックを手に掛けることは出来なかったようだ。


「嬢ちゃんはどうしちまったんだ?」

「えーっと……ワイルドコックに懐かれてしまって、アイリスもそれを良しとしておりまして、僕らもどうにか諦めてもらえないか頑張ったんですけどね」


おっちゃんはとても困った様子で、腕を組みながら怪訝そうな顔をしていた。


「大丈夫。悪いワイルドコックじゃないですよ。多分……」

「大丈夫って言ったってよぉ、危ねぇじゃねぇか。俺がやっちまってもいいんだがな」


俺はどこかの軟体生物かよ。


しかし、俺もそう思う。

でも、アイリスがそれを許してくれないのだ。


「この通り紐に繋ぐんで、帰ったら鉄の鎖に変えておきますんで」

「うーん」

「いざとなったら、僕らが処理するんで、大目に見て貰えないでしょうか。街での依頼でも何体かワイルドコックをやっつけて来たんで、何かあったら問題なく処分出来ます」


アイリスの冷たい視線を隣から感じる。

睨まないでおくれ、俺は必死におっちゃんと交渉しなくてはならないんだ。

君のために頑張っているんだぞ。

アイリスの無言の圧を無視して、おっちゃんとの交渉を進める。


「アイリスの言う事だったら、間違いなく聴くんで」

「なんでそんな事が出来るんだ?」


訝しげに目を細め、アイリスを見つめる。

そんな中、アイリスはどこ吹く風といった様子で、涼しい顔をしている。

なんで俺はこんなに頑張っているんだ。

もう、首をきゅっと締めて、処分してしまいたい。


「アイリス、さっきの命令をして」

「わかった、おすわり」


アイリスの命令で、ワイルドコックはすっと地面に座る。


「おお、こりゃすげぇな」

「でしょう」


どこか得意げに、したり顔でアイリスの足元で鎮座しているワイルドコック。

俺はそれに少しばかりイラッとする。

こいつ、今すぐ絞めたろうか。


「レイモスの街でも似たような事をしていたような? なんで大丈夫だと思いますよ。ギルド長へも話は通っているみたいで?」


面倒くさくなってきた。

ここは強硬手段に出てしまおう。

ギルド長へは後で話をつけておこう。


あーいやだいやだ。

俺が怒られるハメになるんだ。

淡々と諭されるように怒られんだろうな。


そういう怒られ方は精神的に殺られる。

感情的に怒鳴るようなタイプの人は、聞いているふりをして、相手の熱が冷めるのを待つだけで済むのだが、ギルド長の様な理性と知性で攻めてくるタイプはタチが悪い。

逃げるのが難しい。

ずっとネチネチ責められるのだろう。


「それなら大丈夫か。いや大丈夫なのか?」

「大丈夫かと」

「冒険者ギルドに話が通ってるんだったら、問題ねぇか」


おっちゃんは俺の説得に観念したようで、不満であるようだが納得したようだ。


あーあ、嘘ついてしまった。

バレたら信用なくすんだろうな。

上手く裏から手を回すしか無いだろう。


「あんま危ないことすんじゃねぇぞ。お前らの両親に怒られるのは勘弁してぇからよ」

「はい、善処します……」


なんとか説得できた俺達は、家に帰り着いて肩を落とした。


その後は、かなり苦労しながらワイルドコックを鎖に繋いだ。

アイリス以外の人間相手には心を許さないようで、多少ひっかき傷を作りながらも、なんとか終わらせた。


「大丈夫かなぁ? 不安だよー」

「俺もだ」


そりゃそうだろう、相手は魔物だ。

俺も不安である。


「ははっ、僕もだよ」


二人に、信じられないような物を見るような目で見られた。

しょうが無いじゃないか、アイリスがどうしても許してくれないのだから。

もし、無理やり処分したら、一生恨まれる。


そう思い、俺はどこか投げやりになってしまった。

今日は早く寝たい。とても、疲れた。


その日から、俺達にの家に家族(非常食)が増えた。


疲れた俺は、夜、ベットでうとうとしながらも、ケット・シーと今日起こった事について相談する事にした。


(なんでアイリスに懐いたんだろうな?)

(恐らく、この前渡したエルダーコックの魂の魔力の影響だと思われます、実際はどうなのか分かりませんね)

(だろうなぁ)


アイリスの体内の何かしらに混ざった、エルダーコックの魂が影響しているんだろうが、はっきりとした原因は分からない。


(しばらく様子を見るか)

(そうですね、私も彼女らの魔力を調べておきますよ)


俺は他人の体内魔力を感知することは出来ない。

それが、ケット・シーなら出来るはずだ。

アイリスの事は、ケット・シーに任せるとしよう。


しかし、ビッグラビット切り裂き犯はワイルドコックだったんだな。

魔物同士の争いがあるんだと今回理解した、


確かに、俺達もビッグラビットの肉を食べているし、草食系の魔物を獲物にしている肉食系魔物がいてもおかしくないんだろう。

けれど、死体を放置しているのが理解できない。

なぜ、死んだまま森のなかに放置されているのだろうか。


こちらの世界は、前世に居たような動物は魔物に置き換わっているのだろうか。

森では小動物も見かけたし、鳥類も確認した。

なぜ魔物という生物がこの世界に存在するのだろうか。

考えても仕方が無いことではあるんだろうが、機会があったら調べてみたい。


そんな事を考えていたら、眠気に勝てずいつの間にか寝てしまっていた。



狩りに行く度にワイルドコックを連れて行っているため、村に人は大分慣れてきた様だ。

ほとんどの村人に、何も言われなくなった。

それでも一定数、魔物を忌避しているけど、遠巻きに見ているだけで、特に文句はいってこない。


アイリスはワイルドコックをかなり気に入ったようで、しっかりと毎日ワイルドコックの世話を焼いている。

面倒を見るのはアイリスに任せている。

我が家の生き物係だ。


基本、物事に興味を持たないアイリスだが、ワイルドコックの世話はまめに行っているようで、毎日の食事、散歩、掃除、それらをしっかり行っている。

少し彼女のことを見直した。

散歩は必要なのか疑問ではあるのだが、本人たちは楽しそうだからそれで良いのだろう。


「アイリス今日もワイルドコックの所にいるんだね」

「変わってるよな、魔物を操れるやつなんてアイリスしかいないだろ」

「そうだろうね」


朝食を作る俺達よりも早く起きて様子を見に行っているようだった。

アイリスの何がそうさせるのかとても不思議だ。


何日かして、ワイルドコックを飼う利点に気づいた。

どうやらこのワイルドコックは雌らしく、ほぼ毎日卵を生むのだ。

大きさは、鶏の卵と、ダチョウの卵の中間くらいの大きさで、料理のかさ増しに一役買っている。

魔物でも人の役に立つものなんだなと関心した。


ワイルドコックの卵はコクが強く、どの料理にもよく合う。

かなり美味しいのだ。


そんなワイルドコックの卵。

一度隣の農場夫婦におすそ分けしたら、余程気に入られたようで、は餌となる飼料を持ってくるついでにワイルドコックの様子を見ては物欲しそうな目で見ていた。


「魔物って、慣れたらこんなに大人しいのね」

「いや、そんな事はないと思いますよ……」


アイリスが特別なだけなんだと思ったが、それは俺の胸の中にしまっておこう。

余計な事を言って、問題は起こしたくない。


ぼそっと、「うちで飼えないかしら」と言っていた奥様にぎょっとした。

きっとワイルドコックが産む卵を有効利用したいんだと思う。

しかし、魔物を飼うなんてアイリスでなければ無理だ。


変に怪我なんてしたら困るので、俺が必死に説得をした。

半分冗談だったので、その場はすんなりと収まったが、奥さんのワイルドコックを見る目が本気だったようにも見えた。

半分は本気なんだろう。

無茶をしない事を祈るばかりだ。


でも、ワイルドコックの卵を上手く増やす事ができれば、村の特産品になるかもしれない。

”エストルスの村特産、ワイルドコックの卵”

物珍しくてきっと評判にはなると思う。

面倒を見るのは、恐ろし大変だろうけど。


けれど、ワイルドコックの卵はアイリスが優先的に食べている。

俺達の取り分はほんの少しばかりだ。

この前勝手に卵を取ろうとしたら、ものすごい剣幕で怒られた。

それ以来、ワイルドコックの卵を採取するのはアイリスの仕事だ。


ふと思ったのだが、アイリスが一生懸命面倒を見ているのは卵を食べたいからでは。

いや、そんなはずは……


確かに、ワイルドコックの卵はとても美味しいから気持ちは分かる。

食に対する情熱は一倍大きいのだろうか……


農家の人から珍しく、チュイロ(トマト)の実をもらった。

チュイロ(トマト)栽培するのは割と難しいそうだ。


青菜系はほっといてもある程度育つらしいのだが、チュイロは気温や湿度が合わないとすぐ駄目になるらしく、チュイロを好んで食べる虫がいるから面倒を見る時間を他の野菜よりか作らないといけないとの事。

育てるのが大変だそうだ。


その珍しいおすそ分けを、ただサラダにするのは芸が無いと考えたので、ビーフシチューならぬ、ラビットシチューを作った。


ビックラビットの肉を使うのは飽きていたので、庭にいるワイルドコックを見ながらどうしようかと考えていたらアイリスに睨まれた。

怖かったから、即刻その場から退散したのだが、例のごとく魔力供給の時に、無言の圧を食らったことは言わずもがな。


ラビットシチュー作り方はホワイトソースのシチューと大して変わらないのだが、今回はブラウンソースで作った。

ホワイトシチューと違って香ばしさがあって、これはこれでとても美味しい。

ブラウンソースから作ると、雑味がなくて食が進む。


「うまいな」

「うん! この料理もすっごく美味しいね! セリニス凄いね、お店開けるよ!」


アイリスは相変わらず無言でもくもくと食べていた。

付け合せに添えられたワイルドコックの卵は、アイリスの手元にしか無い。


皆の評判はとても良く、また作ってくれとせがまれた。


ケット・シーが食べさせろとうるさいので、こっそりと味見をさせたのだが、余程気に入ったのか、「今後、食事を作った際には、わたしを通さず食卓に出すのはいけません、そのような事、断固拒否させていただきます!」と、謎の制約ができた。

面倒だが、味見をしてもらえるので助かる。

自分ひとりだと味の好みが偏るから、工夫の幅が狭まるのだ。

ケット・シーもとても美味しそうに食べているから良しとしよう。


そして、肉屋のおっちゃんにいつもの通り朝の挨拶をした時に、またお願い事をされることになった。


「なんかよぉ。また切り裂かれたようなワイルドコックが見つかったみてぇだ」

「え、この間ワイルドコックを捕まえたから解決したんじゃ」

「それがよ、昨日、また見つかってよ」


ビッグラビット切り裂き事件は、解決していなかったようだ。


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