33話 自己紹介
ブックマーク有難うございます。
頑張って続きを書いていきたいと思います。
この人、俺が魔力自体を操作しているこ事を、分かっているようだ。
これって、他人に分かる事なのだろうか?
それとなく、ケット・シーの方へ視線を向けた。
どうやら、ケット・シーも驚いているようで、目を白黒させている。
この人、普通の人じゃ無いのかもしれない。
いや、髪の色が変わるってだけで、普通の人では無いとは思うんけど。
一体何者なんだろう。
「どうしたの?魔力、くれないの?」
いや、そんな簡単にホイホイ渡してしまって大丈夫なんだろうか。
ケットシーの話だと、体に悪影響がある場合もあるって聞いたけどな。
「いや、あんまり渡しすぎると良くないって話も聞いたことあるし……」
「大丈夫。私の体の事は、私がよく知っているし」
「うぅん……」
でもなぁ。せっかく助けたというのに、また調子が悪くなったら困る。
魔力の渡しすぎて、過剰に魔力が体内にある場合ってどうなるのだろうかね?
……渡し過ぎたら、魔力を取り返す事って出来るんだろうか。
その場合、どうやって人の体から魔力抜き取るんだろう。
そもそも、出来るのかそんな事。
意見を聞こうと思い、さりげなくケット・シーの方を見た。
ケット・シー、びっくりするくらいの角度で首を傾げていた。
大丈夫か、この子。
(ケット・シー、魔力を渡しすぎた場合、
この人から魔力を返してもらう事って出来るの?)
(え? 出来るんですかね? やってみます?)
ん? えぇ?
この人を実験台にするっていうのだろうか。
流石に、それは不味いだろうよ。
この人には悪いが、この場は適当に誤魔化してやり過ごそう。
「ちょっと疲れちゃって、これ以上は渡せそうにないよ……」
「……そう。残念」
また機会があれば……ということで、許していただきたい。
「……間程度かしら」
「え?」
「何でも無い」
その人の言葉はとても小さく、何を言っているのか、上手く聞き取れなかった。
気になるけど……出会ったばかりだし、無理に詮索しない方が良いよな。
「もう、大丈夫なのか?」
兄の声にハッとし、声を掛けられた方を向くと、
抜き身の剣をぶら下げている兄さんがそこにいた。
ティアも同じく、剣と盾を構えている状態だった。
「あぁ、うん、ごめん。もう大丈夫……かな?」
そう言いつつ、例の人の方へ視線を戻した。
特に敵意は感じないし、問題ないと思う。
それに、会話は出来るようになったものの、
体はまだ上手く動かせないようで、一切動こうとしないし。
でも、動いてもらわないと困る。このままここに居るわけにはいかない。
「あの、大丈夫ですか? 歩けそうです?」
「えっと……そうね、まだかなりしんどいけど、
もうちょっと休憩すれば、少しくらいは歩ける思う」
その人は、自分の体を、少しばかり動かしてそう言った。
しかし、この人を背負って、村まで移動する事は出来るのか。
仮に俺が背負って運ぶのは……今の体だと無理だと思う。
だって、体格の差が割りかしある。
だいたい、ティアより少し小さいかな……という位で、俺と兄さんよりか大きい。
ティアに背負って貰っての移動? 1時間の道のりを?
いや、それは無理だろう。だって、荷物もあるのだ。
最悪、ティアがこの人を背負って貰って、
俺達がティアの荷物を持って移動するとして、
少しずつは進む事は出来るだろうけど、かなり難しいと思う。
もし戦闘になったらと考えると、とてもじゃないが無理はしたく無い。
もっと確実に事を進めたい。
(周りに、魔物の気配はする?)
(遠い場所には、数体居ますね。
この魔力の感じだとビッグラビットでしょう)
よし。魔物が襲ってきてもビッグラビット程度であれば、
数体襲ってきても、俺であれば簡単に対処出来るだろう。
幸い、まだ日は高い。
少しは歩ける様になるまで、休んで貰ったほうが良いと思う。
村までは、もう少しだ。
(分かった。異変があったらすぐ教えて)
ケット・シーは了解したようで、こちらを向いて頷いている。
「兄さん、ティア。この人を家に連れて行こうと思うんだけど良いかな?」
「俺は良いぞ。置いていく訳にはいかないしな」
「うん! そうしようよ! 放っておけないよ!」
よし、二人の了承を得た。
物分りの良い子たちで助かる。
「とても有り難いんだけど、良いの?」
「うん。二人もこう言ってるし、問題ないよ」
そう言って俺は立ち上がる。
さて、魔力の供給は済んで、気力は回復しただろうけど、
体を動かすための栄養は不足しているだろう。
軽く飯でも作るとするか。
「まだ動けないみたいだし、ご飯でも作るよ。
大したものは作れないけど」
「セリニスの料理は美味しいよから、すぐ元気になるよ!」
「あぁ。飯食べたら、早く家に帰ろうぜ」
俺が急にそんな事を言ったからなのか、
その人は、驚いたような、嬉しいような表情をして、
戸惑いながらも、お礼を言ってくれた。
作るものは、いつもの野外飯メニューである、パンと干し肉のスープ。
凝ったものは家に帰ってからかな。
こんなとこで魔物に襲われたりしたら、大変なことになるしね。
先程の人がいる場所のすぐ近くで、食事が出来そうだったから、
その近くで、小さく焚き火を起こした。
手頃な石が無かったため、鍋を置くが作れず、
スープを作るのに苦労はしたが、なんとか作り上げて皆に配った。
その人は、渡されたスープが注がれたコップを両手で包むように持ち、
じっと見つめている。
「どうぞ、気にせず食べて下さい」
「……うん、ありがとう」
ちらっと兄さんとティアの方を見たら、既に食べ始めているところだった。
笑いながら何か話しているが、会話の途中から耳を傾けたため、内容は分からない。
ケット・シーは俺の隣で座っており、小さく欠伸をしていた。
「そういえば、どうしてこんな所に居たんですか?」
「……強い魔力が溜まっている場所を探してたら迷ったの」
魔力を探すって、そんな事も出来るのか。
ケット・シーみたいだな。
「その魔力が溜まっていたような場所は見つけたんだけど、
その場所に着いた頃には、ほとんど薄まっていた」
「はぁ、大変でしたね」
「多分……あなたが原因」
「僕……?」
俺が原因? どういう事なんだろうか。
「何処か行ってたの? この前、魔力の気配が移動したと思ったら、
この辺りの魔力が、どんどん薄まっていったのよ」
「あぁ……ちょっと隣街まで。」
「……そうだったの。運が悪かったのね」
いろいろと出来事が重なってしまい、運悪く今の状況を作り上げてしまったんだろう。
この日、この時間帯に、俺達がこの道を通って、
ケット・シーが気づかなければ、この人の所まで来ることはなかったと思う。
そう考えると、運は良かったんだと思う。
だって、結果的に間に合ったんだから。
俺は、その人が両手で持っているコップを眺めながら、そんな事を考えた。
木々が風でざわめく音がする。
たまに、聞こえる鳥のさえずり。
兄さんたちの笑い声。
そんな中、俺はぼーっと森の奥を見つめている。
俺とその人の間では、特に会話がない。沈黙がとても気まずい。
何を話せばよいのか分からない。
それを誤魔化すように、コップを口元へと運んでいるだけだ。
いつもよりスープを啜る回数が多くなっている。
まぁ、いいか。この人、体力を回復するために休まないといけないだろうし。
変に話しかけて気苦労掛けてしまっては、申し訳ないし。
うん。どこも可笑しくはないよね。
そう考え、再度、コップを口元へ運ぶ。が、コップの中にスープが無い。
なんて事だ。このままでは、空のコップを口に運ぶ頭のおかしいヤツだと思われてしまう。
はは、お手上げだ。もう俺には為す術はない。
沈黙が罪だと言い、それがゆえに断罪するというのであれば、
その罪、俺は甘んじて受けよう。まな板の上のなんとやら。
「あっそうだ! 名前!」
ティアが、思い出すように、急に声を上げたからびっくりした。
「私はアスティアナ、ティアでいいよっ」
「そうだったな。俺はヘリオスだ」
ティアと兄が自己紹介をしていた。
俺はその状況が理解できず、一瞬呆けてしまっていた。
そうだった、自己紹介をしていない。
その人の名前も聞いていないし。
「僕はセリニスです」
皆の自己紹介を聞いた後、その人は少し考え込むような顔をしていた。
すぐ言葉を返してくれることはなく、俯いてしまった。
どうしたのだろうか、名前を言うことを躊躇っているようにも見える。
「……アイリス」
うん。名前から察するに、やっぱり女の子だと思う。
その娘は、両手に持っているコップを俺に渡してきた。
その後、自分の両手を見て、両手をにぎにぎしている。
何をしているのだろう。整った容姿で行うその動作は、
より一層、アイリスの可愛らしさを強調させる。
「大丈夫そう。ある程度だったら歩けると思うわ」
なるほど、体の調子をみていたんだね。
思ったより早く体調が回復したようで、安心した。
日の傾き加減をみるに、暗くなる前には家に着きそうだ。
「ここからだと、1時間位で街につくと思いますよ」
「そう。その位であれば問題ないと思うわ」
そう決まったのなら、早く帰ろう。
食事の匂いで、魔物も近づいてきているようだ。
さきほどケット・シーがそう伝えてきた。
それからというもの、ケット・シーが何かそわそわしている。
ケット・シーの精神衛生のためにも、さっさと、ここから離れてあげるとしよう。




