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30話 帰省の道で

俺達は、村を出た時と同じ格好で、バックパックに戦闘用の装備といった装いだ。

だが、調理ギルドで買ったお土産や、食材が増えているため、

来たときより重量を感じ、足への負担が大きく感じられる。


調理ギルドの活気につられ、気持が昂ぶっていた事と、

冒険者ギルドでこなした依頼の報酬で、懐が潤っていたという事もあり、

気づいたら、結構な量の買い物をしていた。

兄とティアにも、運ぶのを手伝ってしまう結果になってしまい心苦しい。


街に向かうときにも感じたが、街道は視界が開けているため、

ワイルドコックの狩場である、森の道を通っている時に感じた、

本能から来るような身の危険は、殆ど感じない。

といっても何が起こるか分からないから、

念話で、ケット・シーに索敵をして貰うようにお願いした。

ケット・シーは俺のバックパックの上に、寝転がるように乗っており、

一見、毛皮のマフラーの様になっている。

俺の念話で気付いたであろうケット・シーは、

尻尾で、俺の顔を撫でるような動作で、了承した旨を伝えてきた。

俺は、いつしか当たり前になっている、どこか適当にも感じる反応で、

ケット・シーが理解している事を、なんとなく理解した。


「んー。気持ちがいいねっ」

「そうだなぁ」

「街には、また来たいね!」


弾むように、元気に歩いているティアと、

ティアの横に並んで、空を見上げながら歩いてる兄さんの会話を聞き、

この街で過ごした事を思い返しながら、俺も二人の後をついて行く。


思えば色々とあったな。

今回の目的は、お使いだけの予定だったのに、

Fランクの冒険者なって、ワイルドコックを討伐する事になり、

命の危険さえ感じる事態に陥ってしまった。

個人なりに危機感持って臨んだつもりだったが、

まだ考えが浅かったんだろう。

結果的だけ見ると、運が良かったから、たまたま上手く行っただけなんだろうって思う。

もっと気を引き締めないと、いつか足元を掬われてしまうだろう。


神殿に行き、個人の得意とする属性も判明したな。

確か、兄は火属性、ティアは冷属性、俺は地属性だったよな。

属性が分かったからと言っても、今の所、何に使うのかさっぱりだけどね。

だけど、それぞれの属性には、変わった特性があるってほどだから、

特別な扱い方があってもおかしくはないと思う。


調理ギルドでは、食材の豊富さと活気の良さに、

お祭りのような感覚を味わい。

村で、なんとなく暮らしているだけでは、味わえないような刺激を受けた。

レシピの提供でお金も稼げるって話だし、前世の知識を使えば、

上手く資金も稼げるだろう。

お金はあって困るものじゃないしね。

調理ランクもあるという話だ。

料理が好きな自分としては、ちょっと興味がある。

機会があったら、ランクを上げてみたかったりする。


孤児院の皆や、街の人達と仲良くなれたのが一番で大きいかな。

みんな親切で良い人で、面白い人達ばかりだ。

打算抜きで、助け合い、冗談も言い合えるような、

良い関係を深めていけたらと良いなと思う。


そんな話を二人としながら、村までの道のりを楽しみながら歩く。

行きと同様、疲れたら休憩したり、景色の良い場所で食事にしたり、

すれ違う大人と軽く雑談したり。

マッサージイベントがあり、ティアのお御足をマッサージし、

疲れを取っていただいたり。

これは、念入りに行なった。

決して、己の欲に負けてしまったから、必要以上に長い間行ったりなんかしていない。

途中から、ケット・シーが頭をパシパシ叩いていたが、構う訳にはいかない。

マッサージ師としての意地って物がある。

プロとして、妥協を許すわけにはいかないのだ。


とまぁそんなこんなで、村まであと1時間ほど歩けば着くかな?

という所まで歩いてきた。

比較的見慣れた、少しばかり鬱蒼とした森を歩いていると、

どこか懐かしい気分になった。


森の道と言っても、わりかし人が往来しているため、

歩く道は開けており、平坦なため、とても歩きやすい。

わりと、陽の光が差し込んでいるためなのか、

ワイルドコックがいた山に比べて、湿気でジメジメしている訳ではない。

そう考えると、あの森は魔物が住みやすいのかもしれない。

人がなかなか踏み入れるのを躊躇する雰囲気を感じたし、

実際、用事がなければ入る事も無いだろう。


しかし、そんな場所に用がある人間もいる。冒険者だ。

だけど、冒険者がわざわざそんな場所に行く理由もあったりする。

冒険者個人としては、お金が稼げるからっていうのが、

大きな理由ではあるんだろうが、

組織全体の本質としては、治安維持が目的だったりする。

魔物というのは割と賢く、放置していると、人里まで降りてきて、

食料を漁ったり、人を襲ったりするから、それを未然に防ぐのが冒険者の役割らしい。

しかも、成長速度が早く、繁殖力も高いらしく、

能力が高い魔物が産まれた場合は、そいつが群れを作り、

群れを統率し、事を成そうとするから、油断ができないそうだ。

今回出会ったエルダーコックが、その最たる例なんだろう。

そういった事を未然に防ぐ活動をしているのが、冒険者という人達であり、冒険者ギルドという訳だ。


ゲーム感覚でいると痛い目を見るだろう。

と言うか、実際に痛い目にあったし。

あんな事はもうゴメンだ。

不思議世界ですこし浮かれていたが、前世に比べたら、命の危険を感じる事が多い。

人里離れた場所に居る場合、油断したら一瞬でお陀仏だろう。

ケット・シーが居るから比較的安全な旅が出来ているけど、

普通の人が、もし、危険な場面に出会ってしまったら、

最悪、命を落とすなんて、想像に難くない。

もっと、気を引き締めて生活した方が良いだろう。


(む、主様。なんかおかしな気配を感じます)


お、さっそくケット・シーレーダー引っ掛かった、

お間抜けな魔物がいるらしいぞ。

この辺りなら、ビッグラビットの一匹や二匹、いてもおかしく無いだろう。


(ただ……今まで感じた事のない気配ですね。

人間だと思うのですが、どうも反応が弱々しく、

瀕死の時の……そんな感じに似ています)

(人間なのか……?)


もし人間だっら……放置する事は出来きそうにない。

仮に悪意を持つ人間だとしても、一度確認したほうが良いよな……

このまま無視をして進んだとしても、後味が悪すぎる。

遠目でいいから、一度確認はしておきたい。


(はっきりとは分かりませんね。

場所は、森の少し奥へ行った所でしょうか)


そう言ってケット・シーは、俺が背負ってるバックパックから、

少しジャンプをして飛び降り、俺の少し前に進んで、

道を外れである森の奥の方を、腕を挙げて指し示してくれた。


(数は分かる?)

(気配は1つです。辺りに、その気配以外は感じられません)


こっちは3人だし、戦闘能力も無いわけではない。

危なそうな相手だったら、逃げに徹すれば良いだろう。

瀕死相手であれば、近寄りさえしなければ問題ないはずだ。

怖いけど、もし人間だったりしたら、見捨てるなんてしたくはない。


「兄さん、ティア。変な気配がする。

もしかしたら……人が倒れているかもしれない」

「気配か? またおかしな事を言うな」

「人が倒れてるの!? 助けてあげなくちゃ!」


兄は不思議そうに感じているだろう表情で、

ティアは素直な反応で返してくれた。

二人の反応を見ていたら、無理に連れて行くのも良くない気がしてきた。

俺一人で確認しに行った方が良いかもしれない。

二人を危険な目に合わせたくは無いしな。


「僕だけでも、ちょっと見てくるよ」

「一人だけで? 危ないよ?」

「そうだな。俺達も着いていくぞ」


二人共、着いて来てくれるのか。

とても有り難いが、一人の方が逆に良いかもしれない。

最悪、魔法をフル活用すればなんとかなるだろうし。

どうしたものか……


「一人で行って、また倒れたりしたら危ないよ」

「そうだぞ。もう、あんな心配はしたくない」


確かにそうだ。

エルダーコックとの戦闘の時は、魔法を無理に使って倒れてしまったのだ。

その間、看てくれて、守ってくれた人がいたからこそ、

無事に帰ってこれたと言うものだ。

ここは素直に、二人の好意を受け入れた方が良い気がする。


「じゃあ一緒に来て欲しいな……」

「おう」「わかった!」


そう言って、俺はケット・シーの後をついて進み、

俺の後ろに、二人がついてくる形で、森の奥へ足を踏み入れていく。


しかし、道の外れると急に歩き辛くなる。

地面はぼこぼこしているし、踏み固められていないため、

柔らかい箇所に足を取られそうになる。

木と木の間に張っている、蜘蛛の巣が顔に絡まったりすると、

とても憂鬱な気分になったりする。


道をしばらく進んだ所で、

ケット・シーが立ち止まり、こちらを振り返った。

俺はその様子を確認し、顔を上げ、前方を確認した。

何かを隠すように成長した、密集した木々が生えている場所、

そこに、森の中には馴染みきれない違和感を感じ取り、

俺は皆に泊まるよう合図をし、身を低くるよう促した。


(主様。あの木の根元です。気をつけて下さい)


確かに、そこに何かがいた。

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