↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/58

27話 帰路

うっすらと、意識が戻ってきた。

俺は何をしていたんだっけ。

頭に靄がかかっているような感覚で、はっきりとしない。


「……あれ?」


微かに感じる土の匂い。

今、俺は外に居るのだろうか。

重たい瞼を、億劫ながらも少しだけ開ける。


目を開くと、俺の上から、みんなが心配そうに覗き込んでいる様子が見えた。


「目を覚ました! よかった……!」


ティアがいた。

目に涙を浮かべており、今にも泣き出しそうになっている。

あたりを見渡すと兄さんが居るのが分かった。

とても心配そうにこちらを見ており、俺が目を開けるのを確認すると、小さくため息をついた。

カイル、アニー、イオも、どこか安心したような表情をしていた。


とてつもなく気だるいが、首を動かし辺りを確認する。

視界の隅に、ワイルドコックが映る。


思い出した。

ワイルドコックの群れに襲われたんだった。


「ワイルドコックは?」

「セリニスが魔法でほとんど倒したんだ。倒しきれないのも何体かいたけど、死にかけだったからな。簡単に止めを刺すことが出来たさ」


ちゃんと仕留めることが出来たようだ。


良かった。本当に。

どこか、無理だと考えている自分がいて、その恐怖に必死に堪えていた。

もしかしたら、絶望に負け、挫けていたかもしれない。

そうなっていたら――


身体を起こそうとしが、激しい倦怠感で思うように身体が動かない。

身体をよじって、起き上がるために地面に着いた手に、全く力が入らない。


(主様、今は体内魔力がほぼ空になっています。周囲から魔力を集めれば動けるようになるはずですよ)


どうなっても構わないと、魔力を全力開放したから、魔力が無くなるのも当たり前か。

魔力がなくなると、身体が動かなくなってしまう。

今回は上手くいったから良いものの、

ワイルドコックを倒しきれなかった場合を考えるとぞっとする。

全滅もありえた。

たまたま上手く済んだ、それだけなんだろう。


再度目を閉た。

ケット・シーから言われた通り、魔力を体内へ集めるため、意識を集中させる。

魔力が体内へ徐々に吸収され、満たされる感覚。

疲れた身体へ魔力が駆け巡る。


しばらくの間魔力を集め続けると、なんとなくだが、倦怠感が取れてゆく気がした。

身体を起こそうを試みたところ、なんとか上体を起こす事は出来たが、まだ、全身に力がうまく入らない。


「まだ、立ち上がれなさそうだよ」

「いいって。もう少し休みなよ。わたし達はいくらでも待つから」

「ゆっくり休むといいさ。僕たちはセリニスに助けられたんだ。後は僕らに任せると良いさ」


その言葉に甘え、重たく、閉じようとする瞼に抵抗すること無く閉じた。

今にも寝てしまいそうだが、ここから離れなくては。

いつ魔物がやって来るか分からない。


俺はゆっくり、周囲から魔力を集める。

腹の上に乗っているケット・シーが協力してくれているみたいだ。

いつもより、魔力が集めやすい。

比較的濃い魔力が、俺も周りに集まっている。


「あんな規模の魔法、見たことないわよ」


となりで、膝を抱え込んでいるようにしゃがんでいたイオが、不思議そうな顔で訪ねてきた。


「無我夢中だったからかな。あんまり覚えていないと言うか、なんとなく出来たと言うか」

「なんとなくって、あんたね……」


俺が独自で考えた魔術だ。

この世界の事は良く分からないが、俺が変わっているのは、ここ最近の出来事で何となく理解している。

曖昧にして誤魔化すしか出来ないし、説明しろって言われても、俺もよく分かってないのだから説明できない。


「しかし、この数のワイルドコック。どうするさ」


この数のワイルドコックを俺達だけで運ぶのは無理だ。

放置するのは良くないだろうけど、持ち運べない。


「黒いヤツと、持てるだけ持って帰ればいいじゃない。他のヤツはどうしようもないじゃない」

「そうだな」


大きさから考えると、持って帰れるのは、

黒いワイルドコックと、普通のワイルドコックが1,2羽程度だろう。


「どちらにせよ、日が暮れる前には帰らないといけないわ」


なんとか立ち上がれる程度には回復した。

俺はどの程度気を失っていたのだろうか。

日はまだ高い位置にあるが、のんびりしている訳にもいかない。

軽く身体を動かして確認すた感じだと、歩く程度であれば問題無い気がする。


「大丈夫。なんとか動けると思う」

「良いのかい?」


持ち帰る事が出来たのは、黒いワイルドコックと、普通のワイルドコックが1匹だった。

兄とティアが、黒いワイルドコックを持ち、アニーとイオで普通のワイルドコックを持つ形になった。

俺とカイルは、何かあったときの保険で、両手を空けておくことにしたのだ。

といっても、さっきみたいな戦闘は出来ないだろうから、何も起こらない事を祈るしかないのだが。

魔物が近づいたら、ケット・シーが教えてくれる事になっているから、大丈夫たと思うけど。


帰り道は、俺とカイルが先導する形になり、あとのメンバーは後ろから着いて来ている。

みんな、疲労の色は濃いが、あと少しの辛抱だ。


「セリニスは魔術師だったんだな。あんな威力の魔法使えるなんて凄いさ」


魔術を使える事は、基本的に隠している。

おおっぴらにするべきではない、と言われているから。


「まぁ、ね」

「凄い事さ。俺たちみたいに人族の血が濃いと、上手く扱えないことが多くてね。だから羨ましくなっちゃうさ」

「え?」


人族とはなんだろう。

俺含め、見た目は同じだけれど。

俺は人族ではないのだろうか。


ティアはエルフだよな、たしかそんな事を言っていたような。

エルフと何かの混血だったけか。

兄さんは、前世で見た、欧米人に近い。

兄弟だし、俺も似たような感じだと思うのだけど。


「僕らって、何族なんだろうね」


兄とティアは、不思議そうな顔をしていた。


「知ってると思うけど、私はエルフと魔族のハーフだよ、お父さんがエルフ族で、お母さんは魔族」

「え、おばさんって魔族だったんだ」


ハーフとかどうとか聞いたような気もするけど、魔族のハーフとは聞いていなかったような。


「俺達は人族なんだろうけどなあ」

「魔族って、一部の魔族以外は、見た目は普通の人族と変わらない事も多いからね。ヘリオスとセリニスは、もしかしたら魔族かもしれないさ」


今度聞いてみるか。

魔法が使えるってことは、人族でない可能性は十分あるし。


「ちなみに、僕とアニーは両親とも人族だけど、少しばかり魔族の血が混ざっているらしいさ。イオは――まあイオの話はま良いさ」


アニーとイオの方を、ちらっと見た。

アニーはどこ吹く風と聞き流しているように見える。

イオには目をそらされた。

しかも、少しばかり機嫌が悪そうに見える。

詮索しない方が良さそうだ。含みのある言い方だったし。

カイル達は一般的な生い立ちでは無いだろうし、変に聞いて冷やかしになってしまうのは良くない。


「ようやく街が見えてきたよ。報告済ませて帰るとするさ」


道中は問題が起こることもなく、無事に街にた辿り着けて良かった。

早く孤児院に帰りたいが、まだ報告が残っている。

もうひと踏ん張りだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。