23話 依頼
評価とブックマーク有難うございます。
とても嬉しいです。
この物語の世界を、大切に育てていけたらと思っております。
翌朝、さっそくギルドに行き、冒険者登録をした。
「おや。やっぱり来たね。カイルとは上手くいきそうで何よりだ」
ギルド長のバルトロメだ。
「冒険者登録を行いたいのですが」
「分かった。リゼット、よろしく頼むよ」
「畏まりました」
冒険者登録はリゼットさんがやってくれた。
登録に必要な事としては、出身と名前を伝えたくらいで、特別な事は特になく、あっさり終わってしまった。
登録完了後、ドッグタグの様な物を貰った。
ドックタグは身分証明と冒険者ランクが記載されている。
他に街の冒険者ギルドに行って、再度登録が必要になる等の、困ることの無い様にするためとの事だった。
ドックタグは、個人の特定のためと、複製が出来ないように、
魔法で特別な仕組みが施されているらしいが、細かいことは分からなかった。
機密事項でもあるのだろう。仕組みがバレ、悪用されると困るって言っていた。
「何か依頼を受けるのかしら」
「えっと、Fランクで、子供6人で出来そうな依頼があると良いのですが」
リゼットさんは、帳簿のような物をぱらぱらとめくっている。
「ビッグラビットの狩猟か、ワイルドコックの狩猟が良いと思うわ」
ワイルドコックとは、鶏と雉を足したような鳥らしい。
空は飛ばないらしいが、まるまるしていて大きく、子供だと、体当たりされた場合は子供だと吹き飛ばされる可能性があるらしい。
倒れている所を、鉤爪で攻撃してくるらしく、当たりどころが悪いと重傷を負うかもしれないと言っていた。
それって子供が受けて良いものなのだろうか。
よく分からない。
コイツの肉は美味しく、量も取れるため、それなりの値段で売れるらしく、駆け出しの冒険者が狙うにはちょど良い魔物だそうだ。
「どうしようか?」
「僕達が良く狩ってる魔物だから問題ないさ」
「いいんじゃないか? ビッグラビットの相手ばっかは飽きたしな」
カイル達も狩れるなら、そこまで強い相手では無いと思うのだが不安ではある。
しかし、兄の言う通りでもある。
村の周りでは、ビッグラビットしか狩っておらず、伸び悩んでいる気はしている。
そろそろ次のステップに移っても良いだろう。
◇
そんな感じで今に至る。といった具合だ。
カイル、アニーが二人で先頭を歩き、イオはその後ろにいる。
俺たち3人は、さらにその後ろに歩いている陣形になっている。
とりわけ話し合って決めた訳ではないのだが、自然とこうなったのだ。
「方向はこっちでいいの?」
「あぁ。僕等は狩りをする時はこっちに行くのさ。もう少ししたら川があるからそこで休憩するつもりだよ」
俺達はこの辺りをよく知らないから、カイル達に任せている。
話を聞いた感じ、地形に詳しいだろうし、問題ないだろう。
どうせ、俺達が先導しても意味ないだろうし。
(辺りの様子はどんな感じ?)
(点々と気配を感じますが、かなり離れた場所にいるので問題無いですよ)
(何かあったら、すばやく教えてくれよ)
(分かりました)
いざとなったら、ケット・シーに聞いて、それとなく皆を案内すれば良いだろう。
こんな奥地までやって来て、収穫なしでは流石に堪える。
最悪ビッグラビットを数匹狩って帰りたいものだ。
この辺りの森は草木で鬱蒼としている。
村の近くの森は、木々の間隔が空いているため、差し込む陽の光で比較的明るいのだが、この森は、木々が密集しており、草が覆い茂っているため、まだ午前中だと言うのに、うっすらと暗く感じられる。
それに、水気が多くじとっとしている。
そのためか、物陰から何かが飛び出して来るような危険な雰囲気がしていて、割と――というか、かなり恐怖心を抱かせてくれる。
危ない気配を感じたら、ケット・シーが教えてくれるので問題ないと思うのだが、それでも不安感は拭い去れるものではない。
しばらく歩いただろうか、なんとなく何時もより疲れている気がする。
人の通り道にあるような場所は山道の様になっているため、多少は歩きやすいのだが、それでも足場は悪い。
そんな道を、転んでしまわないように気をつけて歩いているからだろう。
兄さんとティアの表情も曇っており、疲れているようだ。
さらに歩くと、さらさらと水の流れる音がしてき。
川が近いのだろう。
俺達はそちらに向かって歩いている。
「やっと着いたさ。ここを拠点にして、ワイルドコックを探すとしよう。ここから少し登ると、奴らの生息地帯があるのさ」
沢だ。石がゴロゴロしている川岸がある、先程よりか明るい場所だ。
川は透き通っていて、底が見える。
流れも速くなく、あまり深く無いように見える。
差し込んでいる光が、とても心地良い。
川の中に、所々きらきらと光るものが見える。
魚だろうか。
(この川の上流に、複数の気配を感じますね)
どうやらこの川上にワイルドコックがいるようだ。
近くには居ないとは言え、警戒はするべきだろう。
「おなか空いちゃったなー」
「そうだな」
「お昼にするのさ! 腹が減ってはなんとやらなのさ!」
お腹が減っていたら力が沸かないしね。
みんな、各々昼の準備を始めた。
川の近くで火を起こすようだ、アニーが必死に、木の棒を木に擦り付けている。
サバイバルをする時にやるアレだ。
火種を作っているようだが上手く出来ないようだ。
「……ふぁ×く」
「手伝うよ。少し離れてて」
そう言って、俺は集めてきた草木を並べた石の間の置き、雷魔法を発動させ、火をおこす。
「え」
アニーは目見開き、とても驚いている。
しまった。
そうだった、無詠唱で魔術が使えるなんて、普通はありえないんだったか。
気が抜けいた事もあるけど、いつもやっていた事だから自然と行ってしまった。
迂闊だった。
「あんた、魔法が使えるんだ」
「えっと……一応ね」
「ふーん……」
アニーは胡乱げな目でこちらを見ていた。
俺は目線を右上にずらし、人差し指で頬を掻く。
「そ、そうだ! 火も起きたし簡単なスープを作るよ」
俺はそう言って、持ち物の中から鍋を取り出し川の水を掬う。
鍋を火にかけ煮立つまで待つ。
水が煮立ったら、乾燥キノコと干し肉を入れ、塩で味を整える。
乾燥キノコと塩は、この前調理ギルドに行った際に見つけたのだ。
乾燥キノコは安かったから、つい買ってしまった。
レイモスの街に来る途中で作っていたスープは、
どうも味気がなく、どうにか味を良くしたいと考えていた。
そんな所、持ち運びに良さそうな食材を見つけたのだ。
塩は旅の必需品なんだろが、家に忘れてしまった。
サバイバル慣れしていない自分に少しがっかりしたものだ。
これで、多少はマシになるだろう。
そんな俺の様子を、アニーがじっと見つめていた。
「あんた、うちのチビ共と同じくらいなのに、手際が良いわね」
「え、そうかな……?」
褒められているのだろうか。
まぁ、身体と精神年齢は一致していないしな。
こう見えても君達よりもお兄さんなんだぞ。
「終わった?」
イオがやってきた。
「美味しそうじゃない。味見させてよ」
そういって有無を言わず、おたまでスープを掬い、味見をするイオ。
なにか考えるようにして、口をもごもごさせているようだ。
「美味しい。アニーが作るものより、かなり良いわね」
「そ、そんなことないわ! 私にも味見させなさいよ!」
イオからおたまをぶん取り、スープを掬う。
味見でスープが無くなるのは困るんのだけれど。
アニーはスープを口に含んで、少しばかり目を見開いた。
「美味しいわね」
悔しそうではあるが、味は認めているようだ。
口は悪いが素直なのだろう。
「昼飯にするさー!」
カイルに呼ばれ、俺達は出来上がったスープを持っていき昼食にする。
今日はビッグラビットの肉と少しばかりの野菜を挟んだサンドイッチだ。
ティアが作ってくれた。
「んー。スープおいしー」
「キノコのスープってこんな味なんだな」
「いい味で出てるよ。俺の嫁にならなるといいさ!」
俺はそんな戯言を無視し、スープを啜る。
それなりだな。味気が足りない気がする。
日本酒があればなあ。こっちの世界には無さそうだし、代わりになるものがあれば良いな。
調理ギルドで米のようなものは見かたのだけれど。
あと醤油とかあれば良さそうだけど。
もっと時間掛けて回れば、見つけられるかもしれない。
「まだ納得して無いのか?」
「そうなのかい? 十分いうまいさ!」
そう言われても、気になるんだよな。
日本の飯の記憶があると、どうしても物足りない。
海外を放浪している時も、日本食を再現するのには苦労したものだ。
似たような食材はあるのだが、やっぱりどうしても同じようにはならない。
こうやって工夫するのは嫌いではないから良いんだけどさ。
色々、試してみよう。
ティアが用意してくれたサンドイッチを手にとった。
「サンドイッチ美味しいよ」
「んふふ。良かったー」
用意された食事に、皆も満足しているようだ。
始めての森での探索で、気疲れしてしまったが、食事のおかげで、英気を養えた。
「ワイルドコック狩り、頑張ろうさ!」
カイルはそう言い拳を突き出してきた。
俺は戸惑いながらも、拳を突き出す、それと同時に兄も拳を突き出してきた。
そんな感じで男3人で拳をぶつけ合う。
ティアは笑顔で食事をしており、さっさと食事を終えたアニーは弓の具合を確かめいる。
イオは欠伸をしながら遠くを眺めていた。
皆で後片付けをし、装備品のチェックを行って、再び森に足を踏み入れる準備をする。
「準備は出来たかい?」
ここからが本番だ、気を引き締めて取り掛かろう。
油断は禁物だ。




