22話 子供たち
なぜだろう、俺達は今、とある森の奥に来ている。
「さぁこっちさ! サクッと済ませて帰るよ!」
短髪で、金髪のやんちゃそうな男の子が、俺たちを引率している。
腰にショートソードをぶら下げており、剣術を扱うらしい。
カイルと言う名前だそうだ。
「うるさい。死んでいいよ」
辛辣な言葉を吐いているのはアニー。
肩くらいまでの赤いセミロングの髪がよく似合う。
背中に短弓を背負い、腰にナイフを装備している。
「なんで私が……」
この子はイオ。
両手で挟むように杖を持っている。
おさげの茶色の髪がキュートな、気が強そうに見える女の子だ。
なぜ、このようになったのか。
少しばかり時間を遡る。
◇
俺達は神殿で精霊の加護を受けた後、時間に余裕があったので、情報収集を目的に、冒険者ギルドによることにした。
冒険者ギルドの依頼はどんな物があって、どのくらい稼げるか知りたかったのだ。
ギルドの依頼は、カウンター横の掲示板にランクごと依頼が張り出されている。
ランクは、上から順にS~Gとなっているようだ。
といっても、この街ではCランクまでしか無いようで、SやAといった、高難易度の依頼は別な街に行かないと無いらしい。
依頼の中には、ビッグラビットの狩猟の依頼もあった。
ビッグラビットは農作物を荒らすため、害獣扱いだった。
ランクはFで、報酬は大銅貨3枚だ。
他の依頼も見てみたが、ランクはFの依頼はどれも似たり寄ったりだった。
ただ、聞いた事のない魔物ばかりで、手を出すのが躊躇われる。
狩猟したビッグラビットは、1羽あたり大銅貨1枚で引き取って貰えるらしい。
ちなみに、狩猟したビッグラビットは調理ギルドへ直接持ち込むと、少しばかり高めで売れるらしい。
依頼報酬と、魔物は別と考えられているのだろう。
依頼も常にある訳でもないと思うから、こまめに確認する必要があるだろう。
1人でこの依頼を完了させれるのであれば、依頼料とビッグラビット2羽で、羊の歌声亭に泊まれる事になるが、俺達は3人いる。
人数分のビッグラビットをコンスタントに狩ることは難しいだろうし、そんなに、ビッグラビットがいるのかって話だ。
そう考えると、羊の歌声亭にずっと泊まり続ける事は現実的ではない。
日々赤字になってしまう。
他にも宿はあって、安い所で1泊大銅貨1枚らしい。
ただ、寝るためだけの空間と考えるのが正しいらしく、1つの部屋に知らない人達と一緒の雑魚寝部屋らしく、広めの馬小屋のような建物らしい。
俺たち兄弟だけならまだしも、そんな場所にティアを泊まらせる訳にはいかない。
こんな可愛い子がそんな場所にいたら、何が起こるか分からない。
俺たちも守りきれるか分からないし避けて通りたい道だ。
今回の宿泊分であれば、肉屋のおっちゃんから貰った金があるし、初日分浮いたからあと2,3泊は泊まれるんだが、今後はそうもいかないだろう。
E、Dといったランクであれば、ものによって、依頼料は銀貨数枚は貰えるのだが、
いかんせん俺たちはまだGランクレベルの実力だ。
受ける事が出来て、1つ上のランクと言う話だから、俺達は挑戦することが出来ない。
そんな事を考えていた時だった。
「僕だよ!!」
うざっ。
冒険者ギルドのドアをバンッっと勢い良く開けた音とともに、
そんな大きな声がした。
誰だよ、と心のなかでツッコミながら振り返るとそこには男の子がいた。
その男の子がカイルがだった。
カイルはきょろきょろとあたりを見渡している。
その様子を見ていたら、声を掛けられたのだ。
「君も戦災孤児の冒険者なのかな?」
戦災孤児の冒険者?
君もって言っていると言う事は、カイルは戦災孤児の冒険者なんだろうか。
「いえ。一応、両親は居ますよ。今は国から呼ばれて家にはいませんけど」
「ふーん。でも、国から呼ばれたってことは戦争でしょ。似たようなものさ!」
まぁ確かにそうなのかもな。いや、そうなのか?
戦争で両親は家におらず、俺達は子供だけで暮している。
似たようなものなのかな。
「君たち、この街の子じゃないよね? 住む場所はあるのかい?」
「エストルスの村から来たんです。今はギルド長に良くしてもらってなんとか宿は確保できてますけど、今後はどうしようかなって」
「それじゃあ、僕達の家に来ると良いさ! 小屋に泊まるよりはマシだからね!」
それは助かるが……どうしよう。
知らない人の家に泊まるのって、あまり好まれる事ではないだろうし。
二人の意見も聞いてみたい。
兄とティアの方を振り返った。
二人ともそんな嫌そうな顔はしていない気がする。
「一度行ってみようよ、宿探さないといけないかもって、さっき言ってたよねー?」
言われる通りだ。
一度行ってみて考えよう。
道すがら訊いた、カイルの話によると、どうやら、カイルは戦災孤児らしき子供を探しては家に誘っているとの事だった。
この街は治安がいいのか、数はそんなに居ないらしいけど、稀に他の土地からやって来る場合もあるから、見つけては声を掛けているようだ。
案内された家は、子供が13人いた。
俺と同年代か、年下に見える子供が10人。
12歳のカイル、10歳のアニー、11歳のイオの3人で計13名だ。
確かに一軒家で大きい家だが、この数だと少し窮屈な気がする。
家賃はどうしているのか聞いたとこと、
街の住民から支援して貰っていて、家はカイル達の物って事になっているって話だ。
街の住人が支援している。
とても素晴らしいことだと思う。
ここ数日で感じてはいたが、この街の人はみな親切で、出来た人が多い気がする。
だが、食費、雑費など、生活に必要なものが、全て賄い切れる訳でもないから、冒険者ギルドの依頼を受けて小銭を稼いでいるらしい。
戦闘が出来るような稼ぎ手が、カイル、アニー、イオしかいないため困っていたらしい。
そんな中、ギルド長から俺達の話を聞いて声を掛けたというのが流れらしい。
要は、宿は提供するから、働いて稼いで欲しいということなのだ。
俺達はずっと街にいる訳じゃないと伝えたら、この街にいる時だけ、稼ぐのを手伝うだけで良いと言われた。
慈善活動と考えてくれとの話で、強要しないって言っていた。
少しでもお金が増えるのは嬉しいそうだ。
俺達は宿の問題があるから、願ったり叶ったりだった。
案内された部屋は2階で、4人部屋だった。
この部屋を3人で使ってくれと言われた。
一人分空いているから、空間に余裕がある。
2階建てのベットが2つ、椅子が人数分と、机、クローゼットといった、簡素な部屋だったが、雑魚寝よりかはマシだ。
そんなこんなで、運良くこの街の活動拠点が出来た。
そして、早速冒険者登録を行い、ギルドの依頼を受ける事になったのだ。




