21話 神殿3
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「じゃあ、次はこれを使うわ」
鈍く、低く机を叩く音と共に、手のひらサイズの、何かの塊がテーブルに置かれた。
一見、鉱物の様に見える。
色は銀色のようだが、見る角度によっては黒光りしていたり、
青や緑、赤っぽくも見える。
ものすごく綺麗な物体だ。
「これは吸魔鉱。これを使えば、その人が持つ魔力の属性が分かるわ。そうね……百聞は一見にしかず。アスティアナ、良いって言うまで吸魔鉱を握ってて頂戴」
ティアは、おそるおそる吸魔鉱に指先を触れる。
どのくらい触っていただろうか。
2、3分ほど? 割と長い間触れているように感じられる。
見た目上、特別に変化が無いように感じられる。
ティアも不安になってきたのだろうか、俺や兄を交互にきょろきょろと見ている。
「ひゃっ!」
急にティアが声を上げるものだから、俺は驚いて膝で机を蹴り上げてしまった。
俺は恥ずかしさを誤魔化すように膝を擦りながら目線を落とした。
「どうしたんだ?」
「なんか、これ、すごく冷たくなって……」
兄さんは吸魔鉱を触れようと、指先を近づけてゆく。
恐る恐る。ほんの指先だけ吸魔鉱に触れた。
「なんだこれ! すごく冷たいぞ!」
またまたー。
冷たいって言ったって、鉱物ってだいたい冷たいものだろうよ。
これは、確認しない訳にはいかない。
吸魔鉱を、おそるおそる指先で触れてみる。
これはすごい。氷を触った時の触感と同じだ。
まごうことなく、分かりやすく吸魔鉱が冷えきっている。
「アスティアナは冷属性ね。結構強めの魔力みたい」
ティアは、不思議そうに自分の手のひらをじっと見ている。
「良かったね、ティアは属性があるんだよ」
「やった。わたし、ちゃんと魔法使えるのかな」
ティアはこちらを見て、にぱっと笑顔になった。
良かったね。
ティアはもっと強くなれるよ。
「次は俺だな」
兄も同じように、机に置かれている吸魔鉱を握りしめた。
ティアと同じく、しばらく怪訝な表情をしながらも、握りしめた吸魔鉱をじっと見つめている。
しかし、一向に変化が無いようだ。
「俺、属性が無いのか……」
「まだね、もうちょっと握ってなさい。さっきティアが使ってたから時間が掛かるのよ」
「そうか」
兄さんはとても不安そうな顔だ。
頼むぞ、兄さんも属性が付いてくれ。
仲間外れになるのは良くない。
それに、そんな事になったら俺も悲しい。
俺は変化を願うことしか出来なく、当事者では無いのにはらはらしてきた。
「なんか、熱い様な気がするぞ」
不思議そうな表情のまま、吸魔鉱を握り続けている。
「ねえねえ、わたしにも触らせてよ」
「リディエル、もう離して良いのか?」
「もう少しだけ握ってて」
リディエルは、難しい顔で兄さんが持っていいる吸魔鉱を見つめている。
「そろそろかしら」
「もう良いのか?」
兄さんは吸魔鉱をテーブルに置こうとした。
「あっづ」
兄さんが手放した吸魔鉱がテーブルに
兄さんは驚くあまり吸魔鉱を手放してしまった。
吸魔鉱をおそるおそる触れてみる。
確かに熱い、分かりやすく熱い。
さっき、ティアが冷やした吸魔鉱を触ったからだろうか。
触った時に兄さんは温度の差をかなり感じる。
「あなたは火属性だわ」
無事に、兄さんにも属性が付いて良かった。
という事は、火属性の魔力を持つ兄は、運動能力の高い剣術士に向いており。
冷属性の魔力を持つティアは、堅固な騎士に向いている事になるのだろう。
「よかったね、二人とも剣を使う職業に向いてるってさ」
二人とも、表情がとても明るくなった。
とても嬉しそうだ。
兄は「俺、もっと強くなるんだな」と息巻いており、
ティアは「やった、うれしいなー」と純粋に喜んでいる。
次は俺か、属性付くんだろうか。
今のところ使える魔法は、風、冷、雷属性の魔法だからな。
無属性は――あんまり関係無さそうだし、これは気にしなくて良いのだろうか。
正直、少し怖い。
これで何も反応しなかったら俺、才能ゼロって事になるのか。
幻神様なるものが、魔法使えるって言ってたしか。
ありえない事だとは思うのだけれど。
「最後はあなたよ」
恐る恐る吸魔鉱に手を差し伸べる。
中指の先から少し触れ、薬指、人差し指と順に触れる面積を大きくする。
どきどきする。
俺だけ仲間はずれは嫌だ。
何だろうか、くじ引きを引く前の気分だ。
吸魔鉱を持ち上げた。
兄さんが触っていたからだろう、まだ少し暖かい。
心臓が胸を叩いているのが分かる。緊張するな。
暫く立った頃だろうか、握っている吸魔鉱が手の中で大きくなった気がする。
結晶になっている部分がピキピキ音を立て始めている気がする。
「おかしい。魔鉱の様子がいつもと違うわ」
リディエルは吸魔鉱を注意深くまじまじと見つめている。
「あなたは地属性なのかしら? 地属性って、結晶の表面に小さなカサブタみたいな物が出来て、剥がれ落ちるのが普通なんだけどね。
吸魔鉱自体が大きくなるってことは、その現象に近いし、地属性って事で良いと思うけれど――」
ふーん。
って事は、何か作る職業に向いているって事か。
物づくりは嫌いじゃないし、意外と向いてると思うな。
あれ? 騎士、魔術師としても適性ありって言ってたような気がする。
当たりの属性を引いたのかも。
「あ、それ以上は不味いわね。許容量を超えて危険――」
パシャッ
「うわっ」
「嘘っ」
なんと吸魔鉱が、水が弾けたような音と共に、液状になってしまた。
弾けた、吸魔鉱にだった液体が机の上に散乱している。
見た目はまるで水銀のようだ。
「信じられない、これ、エーテル油?」
「エーテル油?」
「多分だけど……吸魔鉱も珍しいけど、エーテル油はもっと珍しいのよ」
リディエルは、液状になった物を、指先でツンツンとつついている。
「って、吸魔鉱よ! どうしてくれるの、わたし怒られちゃうじゃない!」
「え、でも、わざとやった訳じゃなくて……」
握れって言われたから、握っただけだし。
こんな事になるなんて、普通思わないだろうよ。
「べ、弁償ですか? お金持ってないですよ……」
リディエルはどうするか考えているようだ。
自分の髪をつまみ、撫でるように触りながら、黙っている。
「しょうがないわ。エーテル油はある訳だし、上手くやっとくわ」
「なんか、すいません……」
「しょうがないわ、わざとでは無いのは分かってるし」
リディエルは少し拗ねている様に見える。
とても申し訳ないが、俺にはどうすることも出来ない。
上手い事やってくれるのを願おう。
「本当、あんた何者なの?」
リディエルは深い溜め息をついている。
ほんとすいません。
「そうよ、エーテル油の事もそうだけど、さっきの銀色がかった目の事。絶対に言いふらしてはいけないわ。どっちも、目を付けられると面倒なことになるわよ。一生、研究所暮らししたいって言うなら話は別だけど」
研究所って響き、とても良くない。
絶対、人体実験されるだろ。
監禁状態でどこにも行けなくなるとか、絶対に嫌だ。
「しかし、あなた達、みんな属性持ちなんて珍しいわよ。最近じゃほとんど見ないわ」
そう言えば、誰にでも属性が付くとは限らないって言ってたような。
得したな。街へお使いに来てよかった。
「精霊の加護の儀式はこれで終わり。今日は疲れたわね、帰って寝ようかしら」
それで良いのか。
この巫女様、うっすら分かっていたけど、自由奔放な性格なのだろう。
周囲の気苦労が知れる。
「なんかすいません……僕たちは帰りますね」
「いいのよ。困ったことがあったらまた来ると良いわ。特にあなた、世間知らずだしね。ラルエスト家の者として守ってあげるわ」
俺はビシっと指を指された。
確かにこの世界の事は良く分からない。
困った事があったら聞きに来るとしよう。
「ありがとうございます」
そう皆でお礼をし、神殿を後にするのだった。
兄の属性は火。
ティアの属性は冷。
そして俺の属性は地。
でいいのだろうか?
属性と得意な事がはっきりすると、一つの指針にになって良いな。
けれど、魔力の扱い方の訓練、どうすれば二人に教えられるのだろうか。
しかも、属性によって特性も違うってことは、
同じ事をすれば、良いって訳でもないだろうし。
その当たりの技術を教えてくれる、先生とかいないだろうか。
情報を集めるしか無いよな。
もう少し街に滞在するべきだろうか。
そんな事を考えながら宿へ帰った。




