第101話 凡人の
[場所は大聖堂、視点はルティア]
彼女とタクトは今[楽園]に最も近い場所で、結界と解体とオリアーナの魔力を封じる為に手を打とうとしていた。
作戦としてはこうだった。
────────
[数日前…]
「お姉ちゃんの結界を解体すべく、タクトさん。あなたの手を借りたいと思っています」
「僕!?」
びっくら仰天!!とそう言いたげな彼にクスクスとルティアは笑いつつ、はいと答える。
理屈としてはこうだ。
「タクトさんはお姉ちゃんの魔力を最も近く当てられて正気を保ち、そしてその魔力を“モノ”にしていたあなただからこそ頼める事です」
魔力なんてなかったタクトが、ケイが救出しに来た時魔力を得ていたのはこの出来事があったからこそ。
魔法が使えるか、そもそも戦力になるのか。調べるには時間が足りない。
つまり、彼を戦力に数えるには心許ない。
しかしルティアは彼を活かす方法をちゃんと見出していた。
「頼めますか」
「………それが…僕の役割なら…やってやります!!」
元気よく答えたタクト。
初めて会った時の世間知らずな子供はどこにもいない。
オリアーナを倒す為、ケイを救う為に立ち向かえる少年に…彼は成った。
──────────
[時は現在]
「タクトさん、私の肩に!!」
「うっす!」
ルティアの肩に乗せ、タクトは深呼吸。
イメージするべきは『海』
広大なその自然が湖に繋がり、川に繋がるその“流れ”
体内の魔力関係を素人が意識するのは困難。
転移したてのケイはそれを完璧にするには数ヶ月を費やした。
「これでどう?ルティアさん!」
「………ばっちりです」
ただ…彼を凡人として侮るのは、そもそもの間違い。
天才には届かずとも、ある程度の感覚であればついていける。
が──
「ッ……!」
タクトの鼻から血が流れた。
人と神の魔力性質の違い。
血液の様に多種多様な型がある以上、A型にはA型のB型にはB型の合うものがある。
その“違い”が人体にダメージを与えるに至る。
「はぁ…クソ…なんだよこれ…!」
「タクトさん…!?」
「大丈夫!!続けて!!」
「……!!」
[楽園]の支配権を奪い、彼女の能力[封]でオリアーナにデバフをかける。
その為には出来るだけオリアーナと近い魔力性質が求められる。楽園の支配を出来る限り短縮する為には。
そして、タクトは特に鍛えられた訳でもない一般人。
合わない魔力を肉体に慣らす作業を無視してこの儀式に臨んでいる以上ダメージは避けられないのだ。
(魔力…こんなにもしんどいものなのか!!)
頭が割れそうと思うほどの頭痛と、地面が酷く歪んでいる様にも見える。
脳が焼き切れる前に、ルティアは完成させなければならない。
「……やって見せる」
冷静に広い視野で、楽園の支配権を奪う。
オリアーナはそこに目を向ける事はできないだろう、レノア達の猛攻により意識を結界へと移せない。
「ルティアさん……僕は全然大丈夫だから!!やっちゃって…下さい!!」
ルティアの肩を強く掴むと、彼女もそれに応えるかの如く支配を隅々まで行き届かせた。
「……いけた」
これにより[楽園]の支配権は、
ルティア・シェインが執り行う。
(タクトさん…ありがとう)
能力を発動する瞬間…
「早速支援を───え?」
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[場所は楽園、時は数分前]
ガイルとフレアの登場により、連携に拍車がかかった。
「………!!」
レノア達が正面から特攻し、防御とカウンターに集中した瞬間を…
「どこ見てんだ!?」
ガイルとフレアが急襲。そしてフレアは炎の翼を生やし空を飛んでいる以上魔法で追撃を行わなければならないが、
「[操作]」
リサが投げた小さな斧が操作による加速と投げた力との重ねがけで更に加速。
先程オリアーナがやった円形の風魔法の様な回転速度。
「……クッ…!!」
手刀で受け止めるが、その勢いに少し押される。
「俺もいるぜ…!!」
再びガイルが先攻。大剣がオリアーナの首に迫ると彼女は片手を彼に向け──
「[火魔法]」
「おっ!?」
火と呼ぶにはあまりにもビームに近い熱線がガイルに向かって飛ぶ。
なんとか防御に回った所でダメージはないがその威力に彼は遠くへ吹き飛ばされた。
異次元な魔力量による魔法はレイン戦で何度も見たが…まさか彼以上卓越した魔法使いに会う事は金輪際ないだろう。
(近距離全振りのガイルを遠ざけたな)
その厄介さは知っている。同じ五傑として彼の剣技は何度も見てきたから。
オリアーナはフレアを凝視。
彼女の能力を見抜いたところだろうか?
(レノア達が積極的に攻める今、私が狙うべきは…心臓!)
空中に漂うフレアを捉えるのは至難。
魔法を使おうとすれば隙を狩られる恐れがある為に、ガイルの時の様に慎重になる必要がある。
「今だ!!」
フレアの掛け声に三人は一斉に動くと、
「[水魔法・壁]」
レノア達の攻撃を完璧に防御。水がクッションの様に刃物を受け止めた。
背後のフレアに専念。
上空から勢いを付けた彼女の斬撃を受け止めながら互いに手と剣の攻防が続く。
「その片翼。邪魔でしょ」
フレアの剣を切断し、すかさず素手での反撃を片手で防御する。
残った手でフレアの翼を突き刺した。
「…!!?」
彼女の温かい炎の翼は魔法による“維持と作成”ではなく、能力による翼の“再現”
フレアは魔法使いではないのだ。
(だが強度はない!このまま反撃──)
そんなオリアーナの首元に一つの刃が迫る。
急いで振り向くとその目には“殺気”に満ちたレノアの表情。
ガイルの殺意とはまた違う、溢れ出る様なそのプレッシャーはララさえも震えさせた。
「…………仕方ない」
レノアの剣が彼女に当たらず、すかった。
空気を斬った音が響いた後、オリアーナはレノアの背後に立つ。
そして一言──呟く。
彼女が最強たる所以、それは……
「[時空]」
そう呟くと、全員は異変を覚えた。
体が動かない。
頭からつまさきに至るまで、一切動かないのだ。
変えられるのは表情のみ。
レノアが歯を食いしばり力を入れているのは分かるが何も出来ない。
「[火魔法・爆]」
オリアーナを中心とした、火魔法の応用[爆]。
最大火力でこの場にいる四人を襲った。
能力発動から爆発までの時間は約五秒。
地面が大きく崩れる中、レノアは自分が動ける事を確認。顔についた土などを払い立ち上がる。
(確実にダメージは受けた……けど、まだ戦える。みんなも同じ──ッ!?)
砂煙が消える中、その中から現れたのはリサの首を掴み、今にも殺そうとしているオリアーナの姿。
(クソ…!爆発のダメージはフェイントで僕達をリサから引き離す為か!!)
ザルツもフレアも動けずに膠着。魔法を受けても腕や顔が軽く火傷する程度に済んだのはこういう事だった。
「動くな、回復・攻撃のそぶりを見せたらこの子を殺す」
嘘だ。誰もがそう思ったが。
「やっぱりあなた、ルティアじゃない。似てるけど」
彼女は茶髪と赤い目。リサは黒髪でどこか青い目をしているが…どこで判断したのかは不明。
そんな事よりも、完全に動けなくなってしまったこの状況が一番不味い。
「あなた達がおとなしく帰ってくれるなら、この子を逃す。帰らない様ならここで殺す」
低くそう告げた彼女。
この状況こそが、最初ルティアが見た光景。
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[場所は大聖堂、時は現在]
「リサさんが……どうすれば……」
楽園の所有権を得たルティアだが、物理的にどうこうはできない。
かといってこのまま放っておく訳には……まだリサは動ける元気はありそうだが、怪しい動きをすれば一瞬で殺されるだろう。
(落ち着け私……リサさんをどうやって……!)
そんな中、倒れていたはずの男がルティアの手を……掴む。
「タクトさん…!?」
「……リサ…さんが危ないなら…僕が行く!!」
目と鼻から血を流しながらそう宣言した漢の目には硬い決意と覚悟が垣間見れた。
「五秒下さい!!ルティアさん!!」
次回:咆哮。
水曜投稿!!!です!!!
(毎日投稿に戻す予定ではあるのでその時になったら告知しマス!!)




