第100話 オリアーナ・シェイン
各々の思惑が動く中、オリアーナはまた一段落深く集中へと至る。
それは彼女が元来持つ力であり才能。
(先程からオリアーナがあまり動かない…風魔法を使ってから魔法を使わない?何故?)
ザルツに疑問が浮かぶ。
魔法を使わずに迎撃を続けるオリアーナ。
その真意とは?
(考えても仕方がない…今は攻める!!)
間違いなく今は有利!…ではないにしろ時間は稼げている。
「[風魔法・切]」
彼女がレノア達が一瞬まとまった所に手を差し伸べるポーズを見せた。
「!!?」
刹那、細かい風の斬撃がレノア達を襲う。
全員武器でなんとか返した事により軽症だが……
「速い…」
リサの呟きにレノアも頷く。彼女がいつ本気を出し出力を上げられたら……
あの斬撃の威力は更に上がるだろう。
「…僕達さ、勝ちに来たんだよね?」
「そうだけど、それがどうしたの?ザルツ先輩」
当たり前だろ。と言いだけな表情のリサにザルツは答える。
「〜だろう。〜されたらまずい。もしこうなったら。そんなのはその時になったら考えれば良い事なのに、僕達は少し…縮こまり過ぎなんじゃないかなって」
「……!!」
少しだけ目を見開いたレノア。それは彼女も考えていた事だった。
勝つ──つまりオリアーナを殺すという事。
まるで全力vs全力を行い粘り勝ち…なんて構図を思い描いていたが、そんな事をする必要などない。
勝てば……それで良いのだ。
それが全て!!
「“ギア”上げようか」
ザルツの呼びかけに二人の集中も一段落ギアを上げる。
三人のスピードが先程と比べて増した。
リサが攻撃をすればレノアが、レノアが攻撃すればザルツが…と畳み掛ける様に連撃を叩き込む。
(速い。私の対応速度を微かに超え追従を許さない)
全てを[神手]……手刀による防御とカウンターでレノア達を追うがあまりにも無駄のない連携に少しずつ押されていた。
「[風魔法・円]」
オリアーナの指を中心に円形の風が回り始めリサへと飛ばす。
その回転量は異様。
「なッ…!!」
リサは鎌に全ての魔力を移し防御するが、スピードと重さで少し遠くへ吹き飛ばされた。
(先程からリサちゃんにはあまり攻撃しない!妹だと本気で思っているから!?)
風の斬撃も恐らくはリサに致命傷を与えたくなかったから!
オリアーナは割り切れていないのだ。
「ザルツ先輩!!」
「分かってる!!」
二人は同時にリサの下へと駆け寄り、彼女の無事を確認し、もう一度一斉に攻め始める。
リサも理解しているのだ、自分が良い囮になる事を。
「まだまだ勝負よ!オリアーナ!!」
「……………」
オリアーナの苦悶の表情。葛藤が含まれるその中にはリサをどう対応するか、という悩みが今。
彼女の動きを少しずつ鈍らせていた。
リサ+ザルツとオリアーナの剣戟は互いに一歩も引かずに太刀音を響き続ける。
「[燃焼・斬!]」
左後ろにはレノアが臨戦態勢。ララ戦同様、剣と飛ばした斬撃による二重攻撃。
弾くには───
「……チッ」
(かかった!!)
リサの大鎌とザルツの剣がオリアーナの胸と肩を斬った。
血飛沫が舞う中、彼女はレノアの[斬]を的確に防ぎ高く跳躍しレノア達から離れる。
「[治癒魔法]」
ドクドクと流れる血を治療させた。
その速度はレノア、並びに僧侶一家マフォード家から見てもありえない回復速度。
ジリ貧…でも確実に魔力は潰せているしそれのない魔法使いは一般人そのもの。
「もう分かったでしょ?あなた達じゃ──」
「何もわかんねぇぞ!!」
背後に気配!
すぐさま背中に魔力を集中させ防御をする彼女。
気配の正体…それは。
「よう、ザルツ。お前と共闘できて嬉しいぜ?俺は…よっ!!」
「ガイルさん!!」
『殺意』のガイルだった。
大剣を背中に振り下ろすとガギン!!と不快な金属音が響き渡り、ガイルはオリアーナの真上を跳躍。
レノア達の所へと戻った。
「硬ぇな」
魔力による身体強化くらいなら突破できると思っていた…が。
武器も防具もない、ただの服と素肌だけで耐えられたのだ。
(?レノア達の傷が治って…?)
不思議に思うオリアーナ。たった一瞬でレノアが回復させた訳ではない。
「フレアさん!良かった…無事だったんですね」
ほっと胸を撫で下ろしたレノアの額に、デコピンをしたフレア。
五対一…
これで役者は揃ったのだった。
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[場所は[楽園]、視点はケイ]
「理由?」
ケイの怪訝な一言にオリアーナ(仮)は話を続ける。
「そ、私にとってもあなたは想定外。こうなるとは一ミリたりとも想定してなかった」
あの時会ったオリアーナとは比べ物にならない程…軽い口調で、どこか明るい。
「別の私が今戦ってる最中。多分君の仲間かな?」
「!!レノアさん達が…!」
「ま、ここには来させないけどね」
「は?」
続けて口を開きかけたケイの口に指を当て黙らせた。
彼女が何をしたいのか全く想像つかず、どこか気味が悪いのだ。
「これからの為に、私の正体を話しておこうか」
突如話した彼女の言葉にケイは警戒した様なそぶりを見せる。
「私は…オリアーナ・シェインの、『本心』であり『過去』でもある」
「過去……」
「この[楽園]で私は過去に閉じ込められている。私とあなた達は未来と過去の為に戦っているんだ。分かった?」
笑みを浮かべながら答える彼女に、ケイはどう反応すれば良いか分からなくなっていた。
過去?オリアーナの目的、このオリアーナは戦える?もしかしてルティアに嵌められた?
様々な思念が湧くが取り敢えず置いておく。
今考えるべきは………
「オリアーナの目的…それはなんなんだ?」
何故永劫を?何故楽園を?そう言いたげなケイに落ち着けと手振りで示した彼女。
もしかしたら、納得できる理由があっての事なのかもしれない。
「目的…ね」
ジロッとこちらを見るオリアーナにケイは少しだけ身構える。その身構えを見抜いたのか一瞬で彼女は背後に回り───
「フ〜」
「なっ!?」
右耳に息を吹きかけられ反射で距離を離す。驚いた様に耳に手を置いてオリアーナを見る。
「良い反応!そこ、弱いでしょ?」
ニヤニヤしながらこちらを見てくるオリアーナを、精一杯睨みつけるケイ。
彼女がこんな手を使ってくる事が一切想像つかなかった事と、彼女に睨みつけられ体が固まってしまった。
「私の目的はたった一つ…この世界の時を戻す事。
[楽園]は世界から人を消す為の鳥籠」
目を見開いたケイをクスクスと笑う彼女。
あまりにも壮大な話にケイの頭がついていけていない。
「何故そうするかは……ゆっくり話そうか。ここと『違う私』がいる楽園とじゃ時間の流れが違う。私達がダラダラと喋っている時、あっちでは一分経ったか経ってないか」
「…………………」
一刻も早く、レノア達の下へと向かい助太刀に入るのが正解のはずだ。
それなのに、強く訴えかけてくるのは…
“オリアーナの話を最後まで聞け”という呪いじみた言葉。
この対話に価値があるのかは分からない。
今の所オリアーナに翻弄されっぱなしで少し苛立っている訳だが……
「どうする?」
「………………」
今こうして、彼女と話す事がこちらとしても得に繋がらなくても…話すべきなのだ。きっと。そう信じて。
「………分かった。話そう」
“話”を受け入れたケイ。それを救おうとするハウ。
現在進行でオリアーナと戦うレノア達。
様々な思考が入り乱れ複雑になる中、ケイが選んだのはよりシンプルな対話。
これから知るのは彼女とケイのお話。
「交渉成立♪」
この話で、ケイは絶望と希望を知る事を………
まだ知らない。
〜そこそこ重要なお知らせ〜
頑張って毎日投稿していましたが、今回の話をだいたい書き終わった際、あまりにも作文チックなものを書いてしまい書き直しになりました。
モチベーションを上手く保てず、ケツに火がつかないと動かない私の怠慢です。
クオリティを上げる為に、“週二投稿”に変更します。
水曜日と土曜日の夜七時二十分です。
毎日投稿しない代わりにもっと面白い作品になるよう頑張ります!よろしくお願いします…!!
(明日は投稿して、月曜からそっちに切り替えます)




