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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第三章 なんでこんなめんどくさい事に…
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女の子の手料理は、最高やな!

それからは何事もなく勉強会は進み、時刻は正午を回った。


「そろそろお昼にしましょうか」

「え?もうか?俺はまだまだいけるぜ」

「慢心は禁物よ灰田くん。自分が思っている以上に脳は疲弊している物よ。それに脳に栄養を入れるのも大事な事。疲れていたり栄養が足りないと、勉強に支障が出るわ」

「そうか。流石委員長、物知りだな」

「…このくらい、普通よ…」


と言いながら、鈴井は顔を逸らす。照れてるのかしら。鈴井も可愛いとこあるじゃん。いや鈴井は普通に可愛いか。


「で、どうするんだ?食いに行くのか?出前か?」


そういえば飯どうするか話し合ってなかったな。まあ俺の中では決まってるんだが。


「何処かに食べに行くのは?」

「この辺にお店ないよ。駅まで行かないと」

「となると、出前がいいわね」

「出前っていうと、ピザかな」

「少し高いけど、それがいいと思う」

「私もさんせー!久しぶりにピザ食べたい」


なんか皆さんで意見がまとまってしまってるみたいですね…。これ俺の意見通るかしら…


「男子三人もそれでいいかしら?」

「俺はいいぜ。たまにはピザなんて何年ぶりだ?」

「俺も大丈夫だ。他の案も無いしな」

「一応俺には他の案があるんだが…」

「何かいいアイディアでもあるのかしら?」


というか、この案が通ってもらわないと困る。


「一応、昼の事を考えて、昨日のうちに材料買ってきてな。何か作ろうかと」

「え?そうなの?」

「ああ、外食となると遠いし、出前だと高くつくだろ?作った方が安上がりだしな」

「で、でも、それだと晃にばっかりお金が…」

「俺が勝手にやった事だ。気にするな」


誰かに相談するくらいはすれば良かったんだが、きっかけがなかったんだよなぁ…。嘘…私のコミュ力、低すぎ…?


「つまり、晃がお昼を作るって事?」

「ああ、まあそういう事になるな」

「いいんじゃない?晃のご飯美味しいし!」

「俺もいいと思うぜ。晃の作る飯、食ってみたいしな」


仁美と健の賛同も得られたし、いける気がする!


「悪いけど、その案を呑むことは出来ないわ」

「あたしも。ちょっと納得いかない」

「え?なんで?晃くんの提案は悪くないと思うけど」


荒川の言う通りだ。自分自身で案を振り返っても、穴はないはず。


「いえほのかさん。この案だと晃くんの負担が大きくなってしまうわ」

「気にするなって。別に俺の自己満だからな」

「そう言われても、気にする物は気にするでしょ」


何故鈴井と成瀬はここまで反対する。


「じゃあ俺の案を却下したとして、他に案はあるのかよ」

「あるわよ。私が作るわ」

「……はい?」

「れい。一人でやろうとしないで。私も作る」

「そうね。二人で作りましょう」

「ちょっと待て。それじゃあ結局二人に負担が掛かるだろ」

「はぁ…。相変わらず、あなたは何も分かっていないのね…」


ああ?どういうことだってばよ?俺が作ったって同じだろ?味?んなもん知らん。


俺が何も分からず、考えていると、成瀬が話しだした。


「晃。あたし達にも少しはカッコつけさせて」

「だから分からんて、ちゃんと説明しろ」

「晃くんだけ色々とやって、私達はもてなされるだけなんて、あまりいい気分ではないわ」

「いや、でも客人に料理させるわけには…」

「またそうやって気を使う」


え?ダメなのか?


「あまり気を使われ過ぎるのも、少し距離を感じてあまり気分がいい物ではないわ」

「だから、少しくらいはあたし達を頼って。ね?」


そう言われると確かにそうかもな。少し気を使い過ぎてたかもしれん。


「うぅ…私は気が使えてない…」

「私も…何も考えてなかった…」


なんか仁美と荒川が唸っていた。声掛けるとなんかめんどそうだし、そっとしておこう。


「分かった。料理は任せる。冷蔵庫の、自由に使っていいから」

「ふふっ、初めから素直に私の料理を食べたいと言えばいいのに」

「安心しろ。それはない」

「とりあえず、あなたのにだけ睡眠薬を…」

「ちょっと待て。なんでそんな物が」

「あなたの部屋にあったのを持ってきたのよ」

「んなもんねーよ!」


ほんと、なんで鈴井さんは私の事を変態に仕立て上げようとするのですかね…。まあ今回は俺が天邪鬼なのが悪かったんですけど。


「まあ楽しみにしてなよ。私の料理で、皆をあっと言わせてあげるから」

「「あっ!!」」

「晃、灰田、死にたい?」

「「すいませんでした」」

「二人とも、示し合わせたみたいに息ピッタリ…」


まさか健も同じ事を考えるとは。まあ割と定番中のネタだし、被っても不思議じゃないか。


鈴井と成瀬は台所の方に向かった。さて、どんな料理が出てくるか楽しみだ。


――――――――――――――――――


数十分後、台所からいい匂いが漂ってきた。もう少しで出来るのかな?


「はぁ!?島を買うだと!?ふざけんな!」

「はっ。運がないな、灰田」

「何言ってんだよ黒井。最終的にはてめーが最下位になってるぜ」


リビングに残された俺達五人は、休憩がてら人生ゲームをやっている。うん。なんというか、完全にやるゲーム間違えたよな。


さっきから健と勝樹がめっちゃバチバチやってて気が気でない。幸い、仁美と荒川は二人の様子に気づいちゃいないみたいだが、俺が全く楽しめない以上、完全に失敗したと言えるだろう。


「お待たせ。出来たから、かたしてもらえるかしら?」


勝負は終盤に差し掛かったところで、料理が運ばれてきた。ナイスタイミング。


「命拾いしたな」

「ほざけ。負けてたのはてめーの方だ」


あの、二人とも。飯食うんで少しは仲良くしてもらえませんかね?飯が不味くなる。


鈴井と成瀬は、料理を運んではダイニングに並べる。パエリア、唐揚げ、ポテトサラダ、いなり寿司、マカロニグラタン…統一性が無いな…。バラエティ豊かでいいんだが。


「これってパエリアだよね?すごーい!お店みたい!どっちが作ったの?」

「えっと…あたし…」


成瀬が小さく手を上げた。え?お前なの?


「いなり寿司に唐揚げ…漬ける時間あったか?」

「油揚げにタレを素早く漬ける裏技は知ってたから。唐揚げに関しては既に漬けてあったわ」


今日の朝、ちょっと早起きして漬けておいたんだよな。ちゃんと味沁みるてるかしら。


「しかし炭水化物が多いな。俺としては大歓迎だが」

「あたしがパエリアを作り始めたところで、お米が炊いてある事に気づいて…。完全にあたしのせい」

「なるほど。その米を消化する為のいなり寿司か」

「ええ。簡単に作れて手軽に食べられるから、ちょうどいいと思ったの」


鈴井すげーな。状況判断力と対応力が尋常じゃない。


「それよりも、早く食べましょう。折角出来たてなのに、冷めてしまっては勿体無いわ」

「そうだな。早く食おうぜ!」


それぞれ席に座り、各々が食べたい物を取り分ける。俺は最初はパエリアからだ。


美味い。母さんが作ってくれたのと同じくらい美味い。料理好きな母さんと同レベルの腕前とは…。やるな、成瀬。


「このパエリアおいしー!」

「え?あ、ありがとう…」


荒川の言葉に、成瀬は少し顔を赤らめて目を逸らす。うん、飯が更に美味くなった気がする。


「でも確かパエリアは専用鍋とサフランが必要だったはずだろ?よくあったな」

「あ、それ?なんか揃ってたから、作ってみた」

「何故か一般的な調理器具から珍しい物まで揃ってたのよね」

「母さんが料理好きでな。色んな物を買ってきては作ってくれるんだよ」

「おばさんの作る料理は美味しいよね!」


幾つか料理本を出すくらいだからな。我ながらいい母親だと思う。


「しかしどれも美味いな!二人とも、いいお嫁さんになるぜ!」

「ありがとう灰田くん。喜んでもらえて嬉しいわ」

「灰田は素直でいいのに、それにひきかえ…」

「おい、なんで俺の方を見る」

「はぁ…。何でもない…」


晃くんは割と素直な方だと思いますよ?言うと鈴井に、欲望に忠実とか言われそうだけど。


まあそれでも、今は欲望に忠実に目の前にある美味い物を食べよう。健とかに取られかねないしな。


――――――――――――――――――


「じゃあな皆。また来てくれよ」


時刻は午後五時、勉強会を終え、解散となった。今俺は、皆を玄関で見送っている。


「晃くん。折角私が教えてあげたんだから、せめて一つくらい順位をあげてもらわないと困るわ」

「大丈夫だ。それより、三馬鹿の心配をしたらどうだ?」

「「「だから三馬鹿って言うな!」」」


あれだけ勉強したのに元気だな。流石運動部組だ。体力だけはある。


「まああれだけ勉強したんだし、大丈夫でしょ」

「まあ確かにな」

「それと、あんたも、教えてくれてありがと」

「こっちこそ、教えてもらえて助かった」


俺と成瀬は、成績こそ近いが得意科目が全然違う為、お互いに教えあう事が多かった。おかげで大分勉強が捗った。


「あと、パエリア、美味かった」

「そ…」


そう言って、成瀬は顔を逸らす。全然照れ隠し出来てませんよ。この照れ屋さんめ。


「じゃあそろそろ帰ろうぜ。玄関先にずっといても迷惑だろうしな」

「そうね。行きましょうか」


勝樹の声を皮切りに、皆続々と出て行く。


「晃」


最後に残った勝樹が、俺の名前を呼んだ。


「何だよ勝樹」

「……いや、なんでもない。じゃあな」

「ああ、じゃあな」


勝樹はそう告げて、出て行った。

勝樹はなんと言いかけたのだろうか。まあどうでもいい事か。


…初めてだ。誰かの家に、こうやって集まってワイワイするのは。今まで、こんな事はなかったから、より一層新鮮に感じた。


中学の時の方が、仲間とより長く、より深く関わっていた筈なのに、一度もこんな事をやらなかった。


今は、半分以上はたった一ヶ月そこらの付き合いなのに、こうやって、一つ屋根の下で一緒に食事をして、勉強会をした。


どちらが自然なのかは分からない。どちらも自然じゃないのかもしれない。


いや、俺の中では答えは出ている。間違っていたのは中学の時だ。人との距離を的確に測れず、俺はそれに気づかず、そして、最悪な結果を招いた。それを間違いと呼ばずして何が間違いと言える。


だから今度は間違えない。今を守る為に。誰も、傷つけない為に。


いつまでも、このままの関係でいられるように。


――――――――――――――――――


「じゃあね勝樹!試験、頑張ろうね!」

「おお。頑張ろうな。じゃあな」


晃の家から大した距離はないが、俺は仁美を家まで送った。特に深い理由はない。


さて、今日俺がこの勉強会に参加した、本当の目的を果たすとするか。


仁美の家を後にし、奴が向かった方へ俺も向かう。今からなら少し急げば追いつくだろう。


俺の予測は思わぬ形で外れた。


「待ち伏せとは、卑怯な事をするな。灰田」

「別に、待ち伏せしたつもりはねーよ。黒井」


とある交差点の角に、奴は佇んでいた。その姿はなかなか様になっていて、男の俺でもカッコいいと思わされてしまうほどだ。


「で、何の用だ」

「何言ってんだよ。俺はお前の為に待ってやったんだぜ。何の用だは無いだろ」


どうやら、奴には俺の考えはお見通しらしい。つくづくムカつく奴だ。


「そうだな。お前に聞きたい事がある」

「んなこったろうと思ったぜ」


理解しているのなら話は早い。早速本題に入るか。


「灰田、お前は何を企んでいる」

「……どう言う事だ?」

「晃を部活に誘ったのはお前だ。文化祭についても、何か目論見があるんだろ?今日の勉強会だってお前が提案した物だ。それに、それ以前の事もな」

「へー、それで?」

「お前が晃に近づく理由なんてない筈だ。あるとすれば、晃を利用して何かをしようとしている以外考えられない」


灰田の企みは阻止しなければならない。晃の為にも。そして、俺の為にも。


「もう一度聞くぜ。お前は、何を企んでいる」


灰田の事だ。そう簡単にはボロは出さないだろう。外堀から埋めるのは不可能に近い。ならば単刀直入に聞くのが一番手っ取り早い。


「……お前が聞きたい事って、それか?」

「ああ、聞かせろ」


返答によっては、これ以上こいつを晃に近づかせる訳にはいかなくなる。


俺は一度晃を見捨てた。今度は、なんとしてもあいつを助けなきゃいけない。


「…くく…ふはは……はっはっはっはっはっ!!!」

「……何がおかしい」

「ははは!!お前は何も分かっちゃいない。お前には、何も見えてないんだな」

「……どういう事だ?」

「はっ!そんな事も分かんねーのかよ。つくづくお前はダメだな」

「何を言ってんだ。俺はてめーが…」

「お前は全く分かってねえ。そのままじゃ、また繰り返すぜ」

「…………」


なんなんだよこいつは。俺の、何が分かるってんだ…


「それと、俺からも一つ言わせてもらうぜ」

「何だ?」

「晃には近づくな」

「……何故だ?」

「お前が、邪魔なんだよ」


…やはり、灰田は何かを企んでいる。放っておく訳にはいかない。


「その言葉、そっくりそのまま返すぜ」

「いらねーよ。てめーでしまっとけ」

「お互い、これ以上話し合う余地はなさそうだな」

「そうだな。話は終わりだ。帰らせてもらうぜ」


そう言い残し、奴は帰って行った。


奴は危険だ。俺にとっても、晃にとっても。常に監視しておく必要がありそうだ。


安心しろ晃。今度は、絶対に裏切らない。俺は、お前の味方だ。


だから灰田、てめーの好きにさせねえ。晃は、俺が守る。



男だと健が一番好きです。俺の友人にもこういうイケメソがいれば良かったのに。

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