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幼馴染に好かれる、なんてのは幻想です  作者: 卯佐美 佳
第三章 なんでこんなめんどくさい事に…
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彼の隠し事

サブタイトルは彼女目線でつけました。

「それではさっき教えた事を使って、この問題を解いてみて」

「しゃあ任せろ!あっという間に解いてやるぜ!」

「はぁ…。不安しかないわ…」


そう言って、鈴井は席を立つ。


「おい。何処行く気だ?」

「レディーに聞くなんて、デリカシーがないのね。相手を敬う気持ちが足りていないんじゃないかしら。まずは犬に敬語を使う所から始めたら?」

「俺は犬未満の価値しかないのか…」


最早人間として扱われてなかった。まあ確かにさっきはデリカシーない発言だったと思いますけど。


鈴井はそのままリビングを出て行った。場所分かるかな?まあ分かるか。




「……遅い」


鈴井が出て行ってから十分が経ったが、未だに帰ってこない。どうしたんだろう。


「ちょっとあたし見てくる」

「お、おう。頼んだ」


様子を見に行こうと思ったが、成瀬に先を越されてしまった。まあ成瀬なら大丈夫だろう。




「……遅い」


成瀬が出て行ってから十分が経ったが、未だに二人は戻ってこない。


「大丈夫かな…なんかあったとか…」

「なんかに襲われてたりとかしてな」

「俺んちにそんな危険なもんいるわけねーだろ…」


しかし、ここまで遅いと流石に心配になってくるな。もしかしたら倒れてたりとかするのかもしれない。


「ちょっと二人を探してくる。お前ら三馬鹿はちゃんと勉強してろよ」

「「「三馬鹿って言うな!!!」」」


叫ぶ三馬鹿を無視して、リビングを出る。さて、二人は何処にいるのやら…



…何処にもいねえ…。

トイレ、洗面所、風呂場、何処を探しても二人はいなかった。外へ出て行ったという線も考えたが、玄関には二人の靴もあったので、外には行っていないだろう。


一階には何処にもいない。となると…、嫌な予感しかしねえ…


階段を上り、二階へ行く。そして、俺の部屋に向かう。扉は開いていた。恐る恐る中を覗いてみると…


「恵さん。他に心当たりのあるものは?」

「あいつの誕生日…はあいつの事だからそんな単純じゃないし、あいつの好きなキャラの誕生日とか?」

「それいいわね。彼の好きなキャラでありそうな物は?」

「死神が出てくるアニメの糸目のあれでしょ?ガールズバンドアニメのギターでしょ?あとは…」


何故か二人は俺のノートパソコンの前にいた。そして鈴井の手には、俺の愛猫である猫丸ぬいぐるみがいる。何やってんだよ…。というか成瀬俺の事詳しすぎない?


「何やってんだ」

「「!!?」」


声を掛けると、二人はビクッと反応し、恐る恐るといった感じでこちらを振り向く。


「あ、あら晃くん、奇遇ね。どうしたのかしら?」

「お前らが二階の俺の部屋で俺のノートをいじっているこの状況で、よく偶然と言えたもんだな」

「五月蝿いわね。私が奇遇と思ったのなら奇遇なのよ。あなたの主観なんて犬にでも食べさせておきなさい」

「もはやスターリンの独裁すらも可愛く見えるほどの唯我独尊っぷりだな」


鈴井の開き直りには、流石の俺もドン引きだ。


一方成瀬は、俺と鈴井が話している間もずっと、俺のパソコンのパスワードを突破しようとしていた。すげえ集中力だな…


「で、お前らは俺の部屋で一体何をしているんだ」

「えーっと…それはその…」


俺の言葉に、鈴井は目を逸らし、成瀬は無視してパソコンと向き合っている。成瀬、せめて俺の言葉に反応してくれ…


二人は答えてくれなさそうなので、部屋の状況から二人の行動を推測しよう。


俺が朝起きた時より整っているベットの布団、微妙に配置が変わってる本棚の本、少し膨らんでいるカーペット…。まさかこいつら…


「お前ら…まさか薄い本とか探してたんじゃないだろうな…」

「「!!?」」


二人はまたビクッと反応する。意外と分かりやすいなこいつら。


しかし何故女子って男子の薄い本を探したがるんだろう。見てもいい事ないと思うんだけど。


「くだらねえことやってないで、さっさと戻るぞ」


俺が声を掛けると、二人は向き合ってこそこそ会話を始めた。


「……する?…の……じゃ目…果たせ……けど…」

「………がな……ね…。本当………たく……ったけど、最終……を……ましょう」


何を話しているかよく聞こえなかったが、二人の中ではまとまったようだ。さて、どうするのかしら。


「晃くん」

「なんだよ」

「私達にこのパソコンのパスワードを教えなさい。さもないと…」

「さもないと?」

「この子がどうなっても知らないわよ」


そう言って、鈴井は俺の愛猫の猫丸ぬいぐるみを強く抱く。一言、何やってるの?


「どうなってもって、例えばどうなるんだよ」

「返さないわ」


子供か!まあ確かに物を人質にとるというのは有効な手段ではあるが、よりによってなぜそれを選んだ。鈴井ってちょっと抜けてるとこある?


「ちょ、れい?そんなんで晃に効くとは思えないんだけど」

「大丈夫よ。晃くんは猫好きという事は既に把握済みだし、きっと今必死になってるに違いないわ」


何処でその情報仕入れたんだよ…。健と仁美にくらいにしか言った事ないぞ…。


なんか必死になってる鈴井には悪いが、ここは少々大人の対応をさせてもらおう。


「別にそんくらいやるよ。また獲ればいいしな」

「……え?」


別にゲーセンでいくらでも獲れるし、なんならお前にも獲ってやるし、正直猫丸ぬいぐるみにそこまで愛着ないし。


「……いいの?」

「別に構わん。それよりパソコンの方が億倍大事だ」


パソコンには人に見られたらまずいデータとか履歴とかあるから、絶対に見られる訳にはいかん。


「返さないわよ…」

「いいよ別に。それより早く戻るぞ」


俺の声で二人は立ち上がる。なんとか危機は回避出来たな。


「ちょ、れい。あんただけずるい」

「ふふっ。恵さん、作戦勝ちよ」


二人の会話の意味は理解出来ないが、なんとなく失敗した気がするのは何故だろうか。


――――――――――――――――――


見てしまった。彼が隠していた過去を。あたしが、どうしても知りたかった事を。


見つけたのは偶然だ。れいを探している時、たまたま入った部屋にそれがあった。


その部屋には、多くの写真立て、アルバム、賞状、メダル。いろんな物があった。そして、それは全て彼に関連した物だった。


写真に写る彼は、笑っていた。彼が時折見せる、不敵な笑みや、薄笑いなんかではなく、無邪気な満面の笑みだ。あたしが一度も見た事のない、屈託のない笑顔。


一目見た時、あたしは見惚れてしまった。今の彼からは想像も出来ないような、楽しそうな顔。今、彼にこの顔をされたら、一発で落ちちゃいそう。


そんな彼を見て、あたしは二つの事を察してしまった。


一つ目は、今の彼が本当の彼でない事。彼は、当時の自分を隠し、偽り、他人を騙して生活しているのだろう。誰にも打ち明ける事なく、一人で抱え込んで。本当に、強い人だ。


そして二つ目は、彼が変わってしまった何かがあった事。きっとそれこそが彼が隠したい事の本質なのだろう。あたしには、それが何かは全く分からない。きっと、彼が話さない限り、知る機会はずっと無いだろう。


彼は言った。人が隠し事をするのは、人に嫌われたく無いからだと。彼が過去を隠すという事は、きっとそういう事だろう。


なんでだろう。隠し事をされたのに、少し嬉しい自分がいる。あたしは、彼に、大切に思われてるのかな。


忘れよう。今日見た事全部。あり得ないと分かってるけど、彼を嫌いにならない為に。彼の思いを裏切らない為に。


そして、いつの日か、彼が話してくれた時、彼の力になってあげよう。その時は、来ないかもしれないけど。それでも、あたしは彼に変えられたから。彼に、助けられたから。


だから彼を助けよう。彼がまた、あの写真の様に笑えるように。


大好きな人の、最高の笑顔の為に。


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